第十七話 結成・聯合艦隊

と、というか、この状況結構ヤバいんじゃないか!?!?

俺は、一通り逃げるすべを考えた後、精神も落ち着いてきて、この現在の状況のヤバさに焦っていたのである。

なんせ、二人きりで、しかも超美女と添い寝しているのだ。

よくよく考えれば結構ヤバい。


これ……寝れん!! 

緊張しすぎて眠れない!!




小鳥のさえずりが聞こえてくる。

朝日が窓を通って、布団にいる俺達を照らす。


「ふぁ〜……貴方様、おはようございます」


コユキが目をこすりながらそう言う。


「あ、あぁ……」


「ッ!?あ、貴方様どうされましたの、その……目!」


俺の目の下には、クマがあった。

そして、目が赤い。


昨日……眠れは眠れたが、結局1、2時間しか寝れなかった……。

すっげー疲れた……。


コユキが俺のそばに近寄る。


「だ、大丈夫だ……水で顔を洗えばなんとかなる。軍人はそこまでやわじゃない」


「そ、そうですか?無理だけはしないでくださいまし……」


「あぁ、大丈夫だ。洗面所はあるか?」


「はい、あちらを左に曲がっていただいて、そのまた真っ直ぐ進むと直ぐです」


「分かった。ありがとう」


「いえ、とんでもございません。あ、昨日の場所で朝食が置いてありますので、お済みになりましたら参ってください」


「わかった」


俺は、指を刺された場所を左に曲がる。

そして、襖の間にある廊下を言われた通り進む。

すると、蛇口と鏡、そして木製洗面器があった。

俺は顔を洗い流す。


よし……それじゃあ行くか!


鏡に映る自分を見ながら、脱出の覚悟を決めた。 

俺は、昨日考えた作戦をもう一度思い返す。


1 難破した大和から内火艇を出してもらう。


2 大和のある通信機を直して、俺の大和に通信を試みる、ダメだった場合は、大和に閉じこもり、助けに来てくれることを待つ。彼奴等の事だ。きっと……きっと来てくれるだろう。


3 通じた場合、内火艇で脱出する。


よし!完璧だ!



俺は、昨日コユキと晩食を食べた場所に向かった。

襖を開けると、朝食らしく、重すぎず軽すぎずの食事が机に乗せてあった。


「あ、貴方様!やっと来られましたね。もー!遅いですよ!」


「あぁ、すまない。ちょっと道に迷ってしまって……」


俺は座布団に座る。

……?カスミ達は来ないのか?家族なら普通一緒に食事をするものだが……。


「コユキ、カスミ達は来ないのか?」


「はい。カスミとソヨカが住んでいる所はここの別館ですし、今は貴方様と二人きりになりたいので、使用人達にも、別館に移動してもらっているのです」


「そうなのか。あ、そうだ。聞きそびれていたんだが、何故カスミの前になったりすると、姿を変えるんだ?それに、生娘っと言っていたが、何か、闇でも……」


「…………」

コユキは黙り込んでしまった。


「あ、すまない。別にそこまで探る必要はなかったな。礼儀のない事をしてしま……」


コユキが、すこし暗い表情と声で、俺の言葉を遮った。

「内戦の時、カスミとソヨカの両親は死んでしまったんです」


「……え……」


俺は、内戦ということについて衝撃を覚えた。

確かに、この国も昔は、昔の日本のように、朝廷と幕府のような関係で分かれていたのかもしれない。

しかし、異世界でも内戦というものは起きるのだと、すこし驚いた。


「この月灯は、一時、二つの国で分かれていました。国名は、その国を統べる家の名前が使われ、「狐雪コユキ」と「羽柄ハガラ」という国でした。カスミとソヨカは元々、「羽柄家」の姫君として、幼くして高位な地位に居ました。それに加え、羽柄家は「狐雪家」の分家のような立ち位置にありましたから、私もまだ年が15000歳、人にすると15歳の頃までは、正月に一緒に遊んであげたりしていました」


まぁ、キツネってイヌ科だしな。

っというか、獣人って長生きし過ぎなんじゃ……。

俺は、心の中で獣人の生命力に圧倒されていた。


「しかし、およそ10000年前、その悲劇は起きました。月灯を長きにわたって統治していた、私の祖父「鋼月ハガネヅキ」様がおなくなりになられたのです。それにより、狐雪が統治するか、羽柄が統治するか、言い争いになり、最終的に国となり2つに分裂しました。しかし、羽柄が狐雪の分家になったのは、今はなき羽柄の当主、カスミとソヨカの真の父親「羽柄蘭賀ランガ」は鋼月様と、幼き頃から一緒に居た「使用人」の間から生まれた子であり、狐雪の代々許嫁を務めていた「空狐クウコ家」であった私の母の子ではなく、先祖代々、古くからの神秘の血を受け継いで居なかったため、国民は狐雪家の方に多く流れてきました。しかし山賊など、いわゆる左翼の者共は羽柄の方に行きましたが、結果として戦力は此方が優勢。あっという間に羽柄は壊滅しました。その中で、私は見てしまったんです。「助けて……お願い……この子たちだけは……この子たちだけは……」っと、涙を流しながら許しと慈悲を願うカスミとソヨカの母を。しかし、これは戦争、情などありませぬゆえ、その兵士は……カスミとソヨカの母を、その刀で貫きました」


「…………」


「いくら敵とは言え、血は繋がっている親族。目の前で従姉妹を殺されるのを、じっと見つめておくことはできませんでした。正月になると、皆ワイワイと騒いで笑い合っていて、いつも明るい笑顔を出していたカスミとソヨカの母おばさんが、あんなに醜い姿で……なので、私は近衛兵を突き飛ばし、まだ赤子のカスミとソヨカを殺そうとしていたその兵士に、やめろと命令を下しました。私の母も、父も、内戦の時の奇襲で戦死してしまった故、あの時も今も、最高権力は私でしたので、どうにかカスミとソヨカを守ることが出来たのです。かといって、カスミとソヨカはまだ赤子でした。当時の記憶など覚えても居ない。なので私は、彼女等を娘として、育てることにしたのです……」


「…………」


俺は心も、身体も、何も考えず、その話を、じっと聞いていた。


「……あ!すいません。長くなりました。食事前にこのような話、しないほうがよかったですよね……お詫びを申し上げます」


「いや、俺から聞いた話だ。別に謝らなくていい」


俺とコユキは、その後朝食を共に食べた。

しかし、もう一つ、気がかりがあったことを、翔は先の話で忘れていたのである。


そう、結婚式である。


今日、結婚式をすることを楽しみにしているコユキとは裏腹に、翔は逃げ出すことばかり考えているのである。

しかし、現在、月灯国からおよそもう200海里まで、大和艦隊は進出していたのであった。



成斗達は会議(状況整理)を終え、全体警備に集中していた。

空には何もいない。

海上にも艦影は無し。

何も異常はなかったが、大和の電探がソレを受け取った。


「副長、通信班の報告。六時半方向南南東にて大多数の信号、大艦隊の反応アリ!!」


「「「ッ……!?」」」


「数を精密に数え報告しろ!……いや、まさかな……」


成斗は、一つ、可能性が頭によぎる。

山本五十六長官もそれは同じであった。


「……全艦180度回転、機関停止せよ」


山本五十六長官は、そう命令をした。

成斗にも、それは言葉として受け答えせずとも、意思疎通によって理解が出来ていた。


「……分かりました。とーりか〜じ!」


『とーりか〜じ』


大和を含めた全艦艇は、万が一、月灯の艦艇だった場合に備え、「丁ノ字」の陣形でその刻を待つ。

警備を最大限にする。

すると……。


「しょ、所属不明艦発見!旭日旗を確認!艦影は……!な、長門です!先頭艦影は長門です!」


その報告を受けて、第一艦橋に居た全員ホッと胸を撫で下ろした。

やはり、我々と同じく、迷い込んでしまったようである。

大和は長門に発光信号、電文、無線など、様々な方法で通信を試み、長門に通じる。


そして、大艦隊と合流した。

艦隊を代表し、二人の人影が見える。

山本五十六長官が敬礼した後、二人も敬礼する。

山本五十六長官が降す。しかし、二人はそのまま名を名乗った。

一人はチャラそうな眼鏡をかけた者、一人は顔立ちがよい者だった。


「第三艦隊旗艦、戦艦長門艦長稲田拓哉です」


「第一航空戦隊及び大日本帝国海軍機動部隊航空戦指揮官、空母赤城艦長、菅野 敏郎かんの としろうです」


「私は連合艦隊司令長官山本五十六だ。さぁ、少し話をしようか」


そうして、彼等の話を聞くこととなった。



気がつけば、見知らぬ海に漂っていた。

長門、陸奥、扶桑、山城、伊勢、日向、金剛、霧島、第七師団輸送船団、陸戦隊輸送艦隊は、お互いに状況を整理していたのであった。

第七師団長厚賀 東秀あつが とうしゅうは、翔達とは違う世界だが海軍との交友関係を大事にしていた人物であったため、特に仲間割れなどと言うことは起きなかった。

第七師団含む陸戦隊は、空母艦隊とはぐれた後、紅い霧に囲まれ航空機に沈められたらしい。

陸軍を代表し東秀、海軍を代表し拓哉が作戦室で話し合いをしていた。


「我々陸軍は、どのようにしたほうがよろしいでありましょうか。我々全師団員の意見としては、特に食料を急かすつもりはありませんのですが、少しだけでも良いので恵んでくださると嬉しい所存であります」


第七師団全員と言っても、北海道の警戒を解くわけにはいかず、陸戦隊もいるので、約9000人中一部派遣として4000人程度しか派遣されていなかった。


「いえ、それはもってのほかですヨ。流石に対立してきるとはいえど、人を飢え殺しするほど海軍も落ちぶれちゃいないのでね〜。安心してください」


食料についてなど、物資について話し合いをしていた所に、とある報が入った。


「北北西方向に、50以上の反応を感知!総員第一種警戒態勢!」


警戒態勢に移行するラッパ音が鳴る。

拓哉は急いで艦橋に戻り、東秀は急いで長門に引っ掛けていた輸送船に繋がる紐を伝い移動する。


「アレは……空母?しかも、赤城じゃん?どしたのー、もしかして助けに来てくれたのか?」


肉眼で見えるほど接近してきた大艦隊は、主に空母が中心であることが分かった。


「艦長、アレは加賀です。左が赤城です」


「え?あ、あぁ!そ、そうだねー。あははは……た、確かに言われてみれば艦橋の場所違うね……」


そんな事をしているうちに、空母赤城から内火艇が降り、許可をもらったため長門に乗艦する。

一人のイケメンが敬礼する。


「第一航空戦隊及び大日本帝国海軍機動部隊航空戦指揮官、空母赤城艦長菅野敏郎です」


菅野敏郎……艦長変わったか?

拓哉は一つ、違和感を持った。

赤城艦長は菅野敏郎などではなかったのだ。


「第三艦隊旗艦戦艦長門艦長稲田拓哉です。助けに来てくださり感謝しますよ」


「……?す、すいません。助けに来たと言うか……っというか、第三艦隊?貴方方が助けに来て下さったのではないのですか?」


「え?」


「ん?」


そこから、コチラとアチラの状況を聞き話すべく、会議が行われた。

聞くところ、拓哉達が知っていた一航戦などの編成とは違う一航戦、二航戦、五航戦と多数の水雷戦隊と潜水隊、巡洋艦は訓練中、その訓練の少し離れた場所にて軍楽隊をと物資を載せた、輸送中の巡洋艦隊と給油艦、給糧艦、給兵艦、工作艦、潜水母艦を合わせた特務艦艇隊は、紅い霧に飲み込まれ、一度沈没した夢を見たという。

しかし、気づけば見知らぬ海域にて漂流していたということであった。

そこで、二人は理解した。


別々の世界から、我々は繋がったのだと。


その事が分かったことによって、状況把握には時間はかからなかった。

とにかく、勘で日本の方向に突き進むということとなり、航行していると、前方に、巨大な反応が多数現れたのだった。



「なるほど……別の世界、ですか」


「はい。自分もびっくりしました。ってか、戦艦大和、くぅー!いい響きですね!しかもカッコいいしデカい!四十六インチ砲なんて初めて見ましたよー!まぁそれはそうなんですか……ウチの世界、空母めっちゃ作ってて、こんなの作れませんでしたのでね〜……」


「戦艦かぁー。いいなぁ、一度は艦長として乗ってみたいですよ。私なんて、巡洋艦の副長した後、赤城の艦長を長い事やらされて、もうコレで何年でしょうか。ってか、空母信濃……でしたっけ?流石は同型艦、デカいですね〜。武蔵も同様に」


「ハッハッハ。そこまで褒められるとなんだか愉快になりますな。まぁしかし、駆逐艦に巡洋艦、潜水艦がコレほどまで集結しているのを見るのなんて久しぶりだな。大体はフタマル艦隊計画に吸収され、随分と駆逐艦巡洋艦が減ったのでね。その分、国家予算を上回った金額で大和型を建造したのを覚えている」


「駆逐艦、空母、戦艦、巡洋艦、特務艦、そして輸送艦隊。おまけに揚陸艦神州丸もいますね。特務艦艇と空母などは私達の世界のですが、神州丸はどちらの……?」


「アレはうちの第七師団の物資輸送で使われてるね。しかし、こうも揃うと絶景だな……」


「そうだな。久しぶりに、大艦隊が見れた。所で、君達は元の世界に戻りたいと思うか?」


「まぁそれは、妻と3人の娘が居るので……」


「俺も一人の息子と嫁ちゃんがね〜……」


二人とも、少し暗い顔をする。

愛する家族と離れ離れとなり、もう会えないかもしれないのだ。


「……では、我々と共に協力し、それぞれの元の世界に戻ろうじゃないか」


「「ッ……!!」」


「世界は違えど、同じ日本人。そして天皇陛下と国にその身を捧げる人間なのは変わりない。我々皆、力を合わせ祖国へ帰ろう」


「……はい!」


「……勿論!」


今この時、拓哉、敏郎、五十六長官によって、時空連合が締結されたのだ。


「もう少し話したいのだが、今は少し急いでいてね。大和の艦長が攫われたので、取り返しに行く」


「な、なんと!」


「攫われたぁ〜?!ね、燃料はどうすれば……」


「燃料関係は問題ない。そのことについても後で話そう。とにかく、今から急いで出動する。この艦隊の総指揮は私が舵をとる。そして……この瞬間この時刻をもって……『聯合艦隊・・・・』を結成する!」



※翔の結婚式まであと8時間※

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