人生の選択にはいつも小さなオジサンが…

秋風 爽籟

第1話 小さなオジサン

私の名前は雫しずく…


私が人生の選択に迷った時…


いつも小さなオジサンが現れる…




最初に小さなオジサンが現れたのは…


5歳の時…


お母さんから、誕生日のプレゼントに


キッチンのおもちゃと、クマのぬいぐるみ


どっちがいいかと聞かれて…


迷っていると…


お母さんが「もう少し考えてもいいよ」


と言った。




それから、どうしようかと考えていると…


雫の前に小さなオジサンが出てきた。




小さなオジサンは…


500mlのペットボトルくらいの大きさで、黒い服を着て少し小太りで、髭をはやしていた…


オジサンは


「雫ちゃん、初めまして。私の名前は、テツだよ。よろしくね」


「プレゼント、どっちか迷ってるんだね」


「オジサンが見せてあげよう」


と映像を見せてくれた。




1つ目の映像は、キッチンのおもちゃを貰った後の映像…


そこには、押し入れに埋もれたキッチンセットが…




もう1つの映像は、クマのぬいぐるみと一緒に寝ている雫の映像…


雫はこれを見て、すぐクマのぬいぐるみがいいと思った。




「オジサンありがとう」


と言ったけど…


オジサンの姿は、もう消えていた…




お母さんが


「雫、一人で何を喋ってるの?」


と話しかけて来た…


どうやら、お母さんには小さなオジサンは見えないらしい。




雫は、すぐお母さんに


「雫、誕生日プレゼントはクマのぬいぐるみがいい」


と言った。




それから…


次にオジサンに会ったのは…クリスマスプレゼントの時だ…


雫は、サンタさんにお願いするプレゼントを、おもちゃとカバンで迷っていた。


すると…オジサンが現れた。


オジサンは…、おもちゃが壊れた映像を見せた。


次にカバンは、雫が使っている映像だった。


「よし!サンタさんには、可愛いカバンを頼むことにした」




そんな感じで…


毎年プレゼントで悩むと小さなオジサンは出てきた。




他の子の所にも、小さなオジサンが出るのかと思って


聞いてみたけど…


「そんなの出て来ないよー、雫ちゃん何言ってるのー」


と言われてしまった。




一度、小さなオジサンに会えないかと思って


「テツさん、出て来てー」


と何度も叫んでみたけど…


オジサンは現れなかった。




やっぱり、何かに迷った時しか


オジサンは出て来ないのか…




それから、次にオジサンが現れたのは…


雫が、卒園式の服に迷っていた時だった。




「オジサン、卒園式の服なんだけど、ワンピースとパンツで迷ってるんだ」


オジサンは、映像を見せてくれた。


ワンピースは、みんなの反応が薄かった…


でも、パンツのファッションは、みんなが


「雫ちゃん、カッコいい」と言っている映像だった。


雫は迷わず、パンツの服を選ぶことにした。


卒園式当日…


みんなの反応は、映像通りだった。


雫は、嬉しくて…パンツを選んで良かったと思った。




迷っても…


オジサンの見せてくれる映像の通りにしていれば


怖いもんなんてない。




雫は、そう思っていた。

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