存在と罪
紀伊かえで
第1話
夢を見る。夢の中であの人は僕に何かを伝えようとしている。しかし、僕にはその『声』が聴こえない。僕にはあの人の『声』が必要だ。分かっている。だけど僕にはその大切な『声』が届かない。そして僕はいつも浅い眠りから覚める。
碁盤の目のようにきれいに区画整理された住宅街の一角にその規則性を崩す一区画がある。まるで昔から変わらない昭和のようなその区画の中心に小さな神社がある。かなりの昔からあるその神社の正確な建立時期はわかっていない。巨木に囲まれた鬱蒼としたその神社こそが僕の家だ。狭い境内にある古い木造平屋建ての社務所が僕の実家、つまり生活スペースである。その狭い社務所兼実家に僕は祖父と祖母、そして父と母の五人で生活している。祖父は宮司を、父は公立高校で社会科の教師を、祖母と母は専業主婦をしている。家業が普通の人とは違うけど、傍から見るとどこにでもありそうな家族なのだが、実は人から見えないところでは僕の家は異常な家族関係であった。そんな異常な関係で育った僕は人とは違う闇を抱えて生きていた。
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