第8話



秋の終わり、夕暮れ時。

僕は、久しぶりに生まれ故郷の街を歩いていた。高校生の時まで何回も通った川沿いの道、でも何故か今日は少し違う気がした。


そして、あの橋のことが、どうしても気になった。


その橋は、子供の頃から何度も渡っていた。けれど、高校を卒業して社会人になってからはほとんど通らなくなっていた。


その理由はただひとつ、橋を渡った直ぐ側の家に、高校の時の同級生が住んでいたからだ。


「もう会うこともないだろう」


と思っていた。

あの日から、もう数年が経つ。


しかし、その橋の手前で足が止まった。

ふと見上げると、橋の向こうに、思いがけず彼女が立っているのが見えた。

彼女も気づいたのだろうか、こちらに目を向け、少し驚いた顔をした。


「こんなところで…」


僕はそう声をかける。

僕のその声は、少し震えていたと思う。


彼女は少し照れくさそうに微笑みながら、橋を渡ってきた。


「久しぶりね。」


「本当に久しぶりだね。」


僕達の言葉は途切れて、ただ川の流れの音だけが静かに響いていた。


「ここ、変わらないね。」


彼女がぽつりとつぶやく。

僕は静かにうなずいた。橋の上から見える景色、そして二人の思い出の風景も、時間が経っても変わらないように見える。


「でも、私たちは変わったよね。」


彼女の言葉が少し胸に響いた。

そうだ。何年も前に、たった一度のすれ違いから、もう会うことはないと思っていた。

でも、今こうして、再び橋の上で再会したことが、まるで運命みたいに感じられる。


「それでも、やっぱり…会えてよかった。」


僕がそう呟いたとき、彼女は静かにうなずいて、微笑んだ。


僕たち二人は、そのまましばらく何も言わず、並んで橋の上に立ち続けた。

川の流れと共に、過ぎていった時間が少しずつ、また二人を繋げていくような気がした。


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