第2話 聖女として魔族を倒しました!
「さすがです、ガーネット様! 敵が何か言いかけても容赦なく攻撃をしかける、その非道っぷり! 痺れる!」
私はガーネット様に向けて、ビシッと親指を立ててみせる。。
「任せな! まずは先制攻撃が大切だよ!」
ガーネット様も私に向かって親指を立て、お気に入りの曲を口ずさみながら二発目の光球を作り出し、ギュンギュンと大きくしていく。
「ちょ……っ、ちょっ、まっ! お前達聖女だろ?! 初対面の人の話ぐらいちゃんと聞いたらどうだ!」
黒い人は全身から煙を上げながら、焦って怒鳴る。
「うるさい! 大切な儀式を邪魔……すんなっ!」
ガーネット様は「すんな」のタイミングで二発目の光球を飛ばした。
「だーっ! 待てっつってんだろ!」
黒い人が一際大きな声で言ったかと思うと、彼の背中にある六枚の羽が体を守り、ガーネット様の攻撃を霧散させる。
「チッ」
ガーネット様は舌打ちをし、今度は広範囲の術を使うため両手でロッドを構えた。
大聖堂の中では貴族たちが悲鳴を上げて避難し始め、お父様たちは騎士に守られながらこちらを見守っている。
「魔術部隊、用意!」
魔術師官がよく通る声で言い、部下達が手元で得意な術を溜め、一気に放つ準備をした。
……というか、いつもなら結界に阻まれて魔物は出現できないはずだけれど……。
「それだけ力の強い魔物ということかしら」
私は顎に手をやり、呟く。
有翼の魔族は多いけれど、通常なら一対のはずなのに三対もの翼を持っているとなると、かなり上位の魔族だろう。
高位魔族は人間に近い姿を持ち、知性も高い。
加えて角や翼、尻尾などには高い魔力を溜めると言われている。
――と、ガーネット様の声がした。
「あいつの狙いはあんただよ。危ないから下がってな」
そう言うけれど、今日から正式な聖女となるのに、はいそうですかと引き下がって守ってもらう訳にいかない。
「私も戦います!」
襲撃に驚いてボーッとしていたけれど、私も黒い人を迎撃すべく、両手を祈りの形に組む。
見たところ聖属性の魔術に弱いみたいだから、私にとって有利な戦いになる。
「話を聞けって言っただろうが!」
戦る気まんまんの聖女たちに業を煮やしたのか、魔族は私目がけて急降下してきた。
――このままだと、周りの人にも被害が及ぶかもしれない!
「消えなさい!」
カッと両目を見開いた私は、祈りの力を一気に高めて思いきり放出した。
「ぐえっ」
世界が光に包まれると思うほどの凄まじい光量の中、魔族は潰れたカエルのような声を残して灰と化した。
「勝った……」
額に浮かんだ汗を拭った私はうっすらと笑う。
そして儀式前の緊張と、襲撃を受けての初陣とで頭の中が真っ白になってしまい、その場に倒れてしまった。
**
「ん……」
目覚めると、自分の寝室の天井が見えた。
「私……」
呟いてから起き上がると、部屋の中は暗い。いつの間にか夜になっていたようだ。
頭が重たくてズキズキと痛み、私は眉間に皺を寄せる。
「一体何が……」
ガーネット様のように二日酔いになった訳じゃあるまいし……と思っていた時、次第に何があったのかを思いだしてきた。
「そうよ。儀式の途中で魔族の襲撃を受けて……。でも倒せたわ。良かった。聖女として皆を守れたわ」
「良かったな」
「ええ!」
ねぎらう男性の声が聞こえ、私は元気よく頷き――、目を見開いた。
(ん?)
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