第6話 総レースの下着を着用してお願いしてみた
俺は取り敢えず、やはり陛下にあの薬を返してもらう事にした。
「陛下に会うにはどうしたらいいのですか?」
「後宮の官吏が、陛下にお伺いを立てるのです。具合の悪い方は除き、この者なら本日可能ですと。しかし今は後宮にアルノー様しかいらっしゃいませんからねえ?」
メアリーはまた遠い目をした。
「で、ではその官吏に確認をお願いします。」
メアリーは無駄だと思いますよ?と言ったが、意外にも夜、来ていただけるとの返答だった。
その返事の後、メアリーはまた昨日と同じように俺を浴室に放り投げた。もう嫌だー!!しかし争っても敵わないので渋々閨の準備をした。そして浴室を出て、絶句…。
「メアリーなんだよこれはー?!」
「奥手な陛下がその気になるように作成いたしました!あー手が痛かった!」
メアリーお手製の夜着を手に取って驚いた。それは夜着と言うのも憚られる代物…下着である。その下着は薄い繊細な総レースでできたシュミーズで、肌が透ける上に丈がとんでもなく短い。しかも最悪なことに、下履きがもっとひどい。
「ちっさ!何これ紐!?」
「大丈夫です!アルノー様ならこれで間に合います!」
後ろは紐、前はかろうじて布があるがとんでもなく面積が小さい。確かに俺なら…!って、失礼な!!メアリーに馬鹿にされて俺は頭に血が上った。メアリーをとっ捕まえてやろうとおもったが、相手は俺より上手。メアリーは俺の服を一つ残らず隠し、さっさと部屋から消えてしまった。
俺、今日生きていられる自信がない…!!
他に着るものがないから仕方なくこの夜着を着るしかなかった。似合わなすぎて笑って貰えるだろうか…。それなら良いんだけど、本気で怒らないで欲しい。俺は祈るような気持ちだった。
「なんと言う格好をしているんだ!!」
俺の格好を見た陛下は本気で怒ってしまった。
「お見苦しいものをお見せして大変申し訳ありません!今夜はこれしか着る物がなく…申し訳ありません!」
俺は真剣に謝罪したが陛下が出て行こうとするのでおれは必死に止めて…もうやだ泣きそう!いや、花粉が酷くてすでに泣いていた。
「おい泣くな!男のくせに!」
「違うんです!これは複雑な事情が絡み合った涙でして!」
「わかった、要件だけ聞く…。」
陛下はようやく俺の応接室のソファーに腰を下ろした。顔は俺から目を逸らすように、そっぽを向いている。
「朝食の席でもお話ししたのですが、薬を返していただけませんか?やはり花粉に反応しているような気がするのです。それか、城の中にあの花を生けないでいただきたい。」
「フォルトゥナの花でそのような症状が出るとは聞いたことがない。黄色い花は太陽、豊穣を表すのだ。生けないと言うのは難しいな。薬は…今朝星詠みに調査を依頼したからもうここにはない。」
「星詠みに?!」
昨日、医者はいないと言っていたのは、医者の代わりに星詠み...占星術師を雇っていると言う事?王族と言うのは、神代から続くと言うから、伝統か何かなの?!それにしても医者がいないって、そんなバカな。
陛下はむすっとしたまま、答える気がない様だ。仕方ない。俺は別の提案をすることにした。
「では明日外出させていただいても宜しいですか?」
「どこへ行くのだ?」
「お医者様のところへ行きたいのです。城には医師がいないとのことでしたので。」
「お前はそれは、呪いではないというのか?」
「ええ、状況から考えて。」
「医師に言われたからか?」
先程までそっぽを向いていた陛下は俺をじっと見つめた。俺は”呪い”のことが不思議だったし、少し憤っていた。何故そんなに、呪いだと思うのだろうか?妃たちだって、本当に呪いなのか?
「それもありますが、実際薬は効きました。それに、王妃様のことは存じ上げませんが、何故呪いだと決めつけるのですか?証拠はあるのですか?」
ただの迷信ではないか?俺は目に見えない呪いより、即効性のある薬を飲ませて欲しい。それをさせて貰えない苛立ちもあいまって、ついそんなことを言ってしまったのだ。
俺の言葉を聞いた陛下は目を見開き、反対側に座っていた俺のところに一瞬でやって来ると、腕を掴みソファーに押し倒した。
「つい昨日やって来たお前に何がわかる?」
「も、申し訳ありません...。」
陛下が乱暴に俺のレースでできたシュミーズを捲り上げたので、俺は思わず陛下の腕を掴んで抵抗した。
「や、やめてっ!」
陛下は俺の抵抗をものともせず、俺の胸に触れた。
「湿疹が広がっている…。」
「え…?」
あ、湿疹を見ようとしただけ?俺は自分の勘違いに気が付いて顔が赤らんだ。陛下はさらに俺の顔を覗き込むと額に手を当てる。
「熱いな。」
陛下は自分の額を俺の額にぴたりとつけて熱を確認している。俺は陛下の美しい顔が近づき、吐息が鼻頭をかすめどきりとした。ああ、美形って恐ろしい。
「そういえばお医者様が、酷くなると熱が出ることもあるとおっしゃっていました。」
「…。」
陛下は無言で俺を抱き上げると、寝室へ行き寝台の上にそっと俺を置いて布団を掛けた。
「何者かがここに医師を呼んだとするなら…前宮廷医であったクラテス伯爵家の者かもしれん。二日待て。呼んでやる。」
そして陛下はもう一度俺の額の熱を自身の額をつけて測った。目を閉じて何か考えているようでもあった陛下に、俺は声を掛けられなかった。「おやすみ」と存外優しい声を掛けられて、遠ざかる姿を金縛りにあったように見送った。
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