knight4:私の手を握って
ep4-1
シリウスに胸を見られた直後。軽く身なりを整えたリィルはシリウスと目を合わせる。2人は向かい合わせにソファに座り、気まずい空気が流れる。
リィルは終わったという思いでいっぱいだった。騙していたのかと罵られるかもしれない。嘘をついていた者をもう護衛はしないと言われるかもしれない。……もう、シリウスのあの笑顔は向けられないのかもしれない。そう思うとリィルは辛くなった。たった数回だが、シリウスといる時間は夢のようだったのだ。たとえ女として見られていなくとも、彼にまた会いたいと……そう思っていたのに。
「あの、本当にすみませんでした」
もうそれしか言えないリィルだったが、シリウスは首を横に振る。
「いや、君は悪くないよ。悪いのは全て私だ。私が君の性別を確認もせずにいたから……」
「それは私が初めから訂正しなかったからでもありますし……」
「リィル、改めて確認させてほしい。君は……女性だったんだね?」
シリウスの真剣な目にリィルは頷いた。もう、言い逃れはできない。
「はい……そうです」
リィルの言葉にシリウスは「そうか……」と静かに呟く。そして何かを考えた後に、立ち上がってリィルのそばにより跪いた。
「なっ、何を……」
リィルが驚いていると、シリウスは真剣な目でリィルを見上げながら口を開く。
「私は騎士だ。君が男だろうが女性だろうが君自身と交わした誓いを違えるつもりはない」
「……え?」
「女性だとわかった今……今まで君にした数々の非礼を詫びよう。知らなかったとはいえ、本当にすまなかった」
シリウスが頭を下げる。それを見てリィルが一番疑問に思ったことは非礼だった。シリウスに助けてもらったことはあれど、失礼なことをされた覚えはない。まあ顔がイケメンすぎて隣にいると周りの注目を浴びたという点では迷惑だったが、その程度だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます