ep3-7
「リィル!あそこのケーキも美味しそうね」
「そうですねエレナお嬢様。お取りしましょうか?お待ちください」
「ありがとう。リィルの分もとってくるのよ、一緒に食べましょうね」
「さすがにこの場では使用人食べられないですから、お気持ちだけ」
「ええーそうなの?残念」
少し不満そうにしつつもニコニコするエレナは菓子に囲まれてご機嫌だ。まだまだ10歳の彼女は異性との出会いやダンスよりもこちらの方が胸がときめくのだろうなとリィルは思い、エレナの好きそうな菓子を皿にとり、戻る。すると、エレナが同じような年齢の女子とお喋りをしている姿が目に入った。
「エレナお嬢様、お待たせしました」
「ありがとうリィル。ちょうどお友達に会ったのよ」
「そうですか。それでは私は隅の方にいますので、何かありましたらお声がけください」
エレナとその友達という幼い令嬢達にお辞儀をし、リィルは壁の方へ歩く。その途中、音楽が流れて会場の真ん中で男女がワルツを踊り出した。メインイベントが始まったなぁと横目で見ながら、リィルはこの場の雰囲気にいたたまれなくなった。
同じ年頃の者が綺麗に着飾り、反対に自分は執事服をきて男のような格好をして……いや、仕事なのだからと頭では理解しているが、このように目の前で見てしまうと気持ちの整理は難しい。
ーーちょっと、外の空気を吸いにいこう。
リィルは賑やかな舞踏会のホールから外に出た。
本日は城の庭も開放されており、自由に出入りでき、リィルはそこで少し休もうと向かった。花壇の花々が月明かりに照らされて神秘的な空間が広がっているそこは、今は誰1人いない。
綺麗だなぁと花を眺めつつ、リィルはぼんやりとしていた。すると後ろからカツカツという靴音が聞こえたのでリィルは慌てて振り返る。
「ああ、やはり君だったか」
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