knight2:剣となり盾となり

ep2-1

 清々しい朝。リィルは屋敷の庭で花を愛でるエレナのそばにいた。


 あの誘拐から既に1ヶ月。腫れた頬や体の痣も綺麗に治っていた。目つきの悪さは元からなのでちっとも治らないが、それは今更である。


「ねぇリィル。私思ったのよ」


「何をですか?お嬢様」


「シリウスはいつリィルに会いにくるのかしら」


「は?」


 仕える主人に対して間抜けな返答をリィルはした。え?なんで?なんでシリウスの名前が??と頭は混乱し、元々の目つきの悪い顔を更に歪ませて苦笑いをする。


「お嬢様?それはまた何の冗談を?」


「冗談?リィルこそ何を言ってるの?あんなにみんなの前で騎士の宣誓を受けていたじゃない」


 エレナが少し興奮気味に言うのは1ヶ月前に屋敷でシリウスがリィルに跪いた件。その際に騎士として守らせて欲しいなどと言われたが、リィルとしてはあれはあくまで社交辞令、言い方が悪ければその場のノリ程度に考えていた。


「いやぁ、あれはナイでしょうよ。そもそも王都限定の騎士って話でしたし?」


「なら、王都に行くしかないわね」


 エレナはニヤリと笑うとリィルに向かって命令を下した。


「王都で私の好きな焼き菓子を買ってくるのよリィル!」



***



 そんなこんなでリィルはおよそ1ヶ月ぶりに王都にきたわけである。


「まったく、決めたらこうって譲らないからなエレナお嬢様は」


 はぁっと大きなため息を吐いてリィルは目的地であるケーキ屋へ向かった。


 ーーげっ、あの銀髪。シリウス・バイオレット!


 ケーキ屋への道のりでリィルは遠目にシリウスを見かけた。彼の銀髪はよく目立つ。リィルは思わず咄嗟に物陰に隠れた。なんだか気まずいからである。

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