ep1-4

「どこか怪我はされていますか?」


「いや、たぶん平気……っ!?」


 シリウスに返事をした際にリィルは急に右足に痛みを感じた。逃げている途中で捻ったのかもしれない。リィルの反応にシリウスはすぐさま心配そうにする。


「どうしましたか?」


「あー、たぶん捻ったかも」


「……ちょっと見せてもらってもいいですか?」


「あ、はい」


 シリウスに言われリィルは素直に右足を出す。足首を触ると確かに腫れていて、少し熱を持っていた。これでは歩くのも辛そうだ。


「……失礼」


「へっ?ーーなっ!?」


 シリウスはリィルを歩けないと判断して、お姫様抱っこのようにして抱える。突然のことにリィルは驚き口からは文句が飛び出した。


「おい!おろせ!自分で歩ける!」


「無理をしてはいけない。男性がこのような運び方をされるなど、恥ずかしいかもしれないが、そこは耐えてほしい」


 シリウスは至極当然のように行動して、真面目に言葉を告げた。それを聞きリィルは眉根を寄せる。あ、男だと勘違いされていると。まあそれはいつものことだから別に気にはしないのだが、この運ばれ方は恥ずかしくてたまらない。


「いや、無理だから!顔から火が出るから!誰かに見られたらいい笑いもんだから!」


「そんな者たちは気にしなくていい。大通りに行けば馬車に乗れる。そこまでの辛抱だ」


 たとえ相手が男だろうと、シリウスは騎士として真摯に対応していた。まあ実際にはリィルは女性なのだが。そんな勘違い中のシリウスは、余計にリィルの訴えなど聞く耳を持たない。


「嫌です!今すぐ私を下ろせって言ってるんですよ!」


「そんなに暴れないで、大人しくしていてくれ」

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