第5話 帰り道
1学期も2週間もたつと、クラスカーストもほぼ決まり女子の1軍は南小1かわいいと言われていた清水亜季を中心とするメンバーで固められていた。あたしは相変わらずの2軍の普通の立ち位置だった。男子も大体メンバーが決まってきて女子と話す男子も決まってきた。だけどひなちゃんと西野君は相変わらずクラスでの立ち位置がはっきりせずカーストとは関係ない感じだった。ひなちゃんは男子に人気で西野君は女子に人気って感じだけど、中2にもなるとさすがに異性を気にする年ごろなので中1の頃と比べたら男女で話すって1軍くらいしかなくなってきた気がする。そんな中でもあたしはひなちゃんとよくしゃべっていたし、西野君ともたまにしゃべっていた。基本的に西野君は女の子と話さないので、ちょっと女子のやっかみとかが嫌だなと思っていた。
学校が終わり今日はダイエーに買い物に行かないといけないなと思いながら1人校門を出ると前に体操着のひなちゃんが学校指定のリックを背負って一人で歩いていた。ひなちゃんと声をかけるとひなちゃんは立ち止まって後ろを確認してちょっと微笑んだ。あたしは嬉しくなり速足で近づいていく。
「ひなちゃん、今帰りなの?」
「まあ、部活してないからな。学校いてもやることないし」
「私も幽霊部員やから今から帰るとこ」
校門の横にある鳳西こども園のすぐ先の分岐道で大抵南小と鳳小の出身者は道が分かれる。「じゃね」と言ってあたしは東方面に向かう道を歩こうとするとひなちゃんが「俺もそっちやねん」とあたしを引き留めた。
「ひなちゃんって中町や北町やなかったん?」
「うんん、俺東町や。西区役所の裏」
「うちのおかあちゃん、西支所の横の旭精工で働いてるわ」
「そうなん。鹿渡のうちから近いん?」
「うん、まあまあ近いかな。あたし東町と南町の境目の南町側。ひなちゃん意外と近くに住んでいるんやね、あたしは踏切をずっとまっすぐ行ったところ」
「30号線のローソン越えるん?」
「うん、その先のセブンイレブンを越えたあたり」
「それなら、モーラーサロンの前って通るよな」
「あの美容室? もちろん通るよ」
「俺あそこ使っているねん」
「そうなんだー。あたしなんて家のすぐ近くのバーバーマツモトって床屋さん」
だからひなちゃんの髪がきれいなんだとあたしは納得する。
「中学生で美容室って結構大人びているよね、清水さんなんて小学生の時から使っていたけど。だから南小一かわいいって言われていたのかな? かわいい子は子どものころから行くところが違うなぁって。あたしはまだ床屋さんで十分かな」
「そんなもんなんか? 俺は母さんが昔から使っていてな。あそこ託児所もあるから、俺もいつの間にかモーラーで切るようになってん」
人一人分の盛り土をコンクリートで固めた校庭の桜並木沿いを歩きながらそんな話をする。ひなちゃんと二人で下校できるなんて幸せだなと胸いっぱいに感じながら。そして裏道を出ると西町と東町南町を分ける大きな踏切に出る。
「あたし、この踏切、朝は混むから嫌いやねん」と言うとひなちゃんはあたしの顔を見上げ「鹿渡は駅の横の踏切知らんからそんな余裕言えるんやぞ。あそこの朝は地獄や。まず踏切が開かん。開いても数十秒や。しかも人や自転車や車でごった返しているのにめっちゃ狭い」
「あそこの踏切は祭りのときに大鳥大社に行くときしか使ったことないなぁ」
「俺なんてあそこ使わんな小学校行けなかったから毎朝大変やったで」
そんな会話をしているうちに踏切を越えて加藤クリニックも越えて大きな十字路に着いた。右に行けばすぐ南小、左に行けば鳳駅からおおとりウイングス。ひたすらまっすぐ行ってちょっと右に曲がればあたしのうち。
「俺、こっちやから」とひなちゃんは左を指さした。
「あたしまっすぐ。それじゃここでバイバイ」とひなちゃんに笑顔で手を振る。ひなちゃんもちょっと恥ずかしそうに手を振り返した。そしてあたしたちは分かれた。またひなちゃんと一緒に帰れたらいいなと思いながら、あたしは今夜のご飯のメニューを考える。
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