それでも彼は幸せという
雪咲 彩
第1話 家族と娘
幸せか、幸せではないのか、それは誰が決めることだろうか。「自分自身」なのか、もしくは「他者」が決めることなのか。
それは、誰にもわからないと私は思っている。
その幸せは、この物語を通して、どのように思うか、考えさせられることだろう。
中野 華昏は、「裕福な家庭」で生まれたわけでもなければ、「貧相な家庭」で生まれたわけでもない。母親の親族により、愛情を注がれて育ってきた。私が、母親の親族からみれば、初めての孫娘で可愛がられてきた。
私が生まれた日は、奇跡的にも修一さんと同じ誕生日なため、誕生日の日には、修一さんと私の二人の誕生日祝いが行われた。幼い記憶は一切ないが、親族からの話では、幼いころの話をたくさん聞いて、記憶として残している。
修一さんは私が幼いころ、もしくは生前は、辛い思いをしてきたと、大人になった私に、親族は私に話をしてきた。
菊沢 修一さんは、旧姓、富本 サヤ子さんと結婚。
修一さんは、サヤ子さんに一目惚れ。ふくよかな彼女が好きだった。
サヤ子さんはというと、修一さんにプロポーズされ続け、愛情表現に魅了されたという。家事については完璧だった。サヤ子さんの兄妹は、サヤ子さんを除いて皆、男という環境だったため、その影響か男と思い込んでいたくらいの、面白いエピソードもある。
修一さんは、サヤ子さんが作った料理は好き嫌いもなく、おいしい料理を毎日食べていた。ただ、修一さんは煮つけだけは苦手のようだった。それ以外は、特に問題もなく平凡な日々が続くだろうと。
修一さんが少し変わり続けるのはまだ先の話だが、少しずつ変わり始めてくることになるだろう。
その後は、修一さんとサヤ子さんは、三人の娘たちを授かり、子宝に恵まれた。長女、きみ子さん。次女の優子さん。優子さんは私の母親でもある。
きみ子さんは体が丈夫で、何事もなく、すくすくと育ってきた。性格は個性的な人であることぐらいだろうか。
一方で、私の母親である優子さんは、生まれてから体が弱く、体調を崩すことが多い。それもあって、サヤ子さんは優子さんに付きっきりで看病することが多かった。
優子さんが幼稚園になったころ、姉の、きみ子さんは小学校三年生、九歳になっていた。そして、妹は幼稚園を入園している歳でもある。優子が幼稚園に通い始めた頃、生まれもった体の弱さがでてしまい、幼稚園に通うことはあまりなかった。その結果、サヤ子は、優子の看病で精一杯な状態になった。
修一さんも、その事態に気づいていたが、サヤ子さんが看病するということで、優子さんを任せていたという。
サヤ子さんは優子さんの看病をしても一向に容体は良くならなかった。行きつけの病院に行ったが原因がわからなかった。病院を探しては良くならず、時だけが過ぎていくことになった。
ある日、サヤ子さんの知り合いから、
「小さい個人の病院なんだけど、先生は怖いとみんな言っているけど、でも、先生としては優秀な方だから、一回だけでも診てもらったらどう?」
知り合いからの些細な話だった。些細な希望だったとしても、一人の娘が良くなるならと半信半疑ではあったものの、知り合いから紹介された病院へと、サヤ子は優子を連れて病院へ向かうことになった。
病院へ行ってみると、どこにでもある小さな個人病院だった。現在の私たちの場合、個人病院は昭和のような古い感じではなく、明るく綺麗な病院が浮かぶだろう。当時は今のような雰囲気ではなく、三角のナース帽を着ていそうな、そんな病院といえばわかりやすい表現だろう。
病院へ行ってみると、どこにでもある小さな個人病院だった。現在の私たちの場合、個人病院は昭和のような古い感じではなく、明るく綺麗な病院が浮かぶだろう。当時は今のような雰囲気ではなく、三角のナース帽を着ていそうな、そんな病院といえばわかりやすい表現だろう。
サヤ子は、少しの希望がある中、心のどこかでは
「(ここも同じ結果になるに違いない)」
そう思いながら自分の番を待ち続けた。
そして、サヤ子の名前がナースに呼ばれて、先生に診てもらうことになった。 すると、先生から衝撃の第一声が飛んできた。
『なぜ、この状態までにした!』
サヤ子は、先生の衝撃の一言に驚きを隠せなかった。
続けて先生は話した。
『この状態にし続ければ、この子は死んでしまったところだったんだぞ!』
サヤ子は、まさか優子が、そんな状態までになっていたなんて思いもしなかった。まして、命の危機になっていたことに。
『少しでも遅れていれば、この子は死んでいた。本当に瀬戸際だったのだ。だから、私が紹介文を書いてあげるから、今すぐにこの子を、その病院に連れて行きなさい。』
先生がサヤ子に、優子について詳しい話を聞いた。
その後、サヤ子は優子を連れて紹介文があった病院へと向かい、優子は入院することになったと同時に、サヤ子は付きっきりで看病することになった。
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