インターバル:平野は蠢き、静寂は動き出す
大平原のその奥。その中心地。
そこに位置したのは、とある部族の集落だった。
そこを一匹の赤いサイレント・オークが通る。
藁や木などでできた簡易的で文明の発展もない家々を通り過ぎ、その中に住まう、緑色や青色の同種に手を振り、挨拶を交わす。
穏やかな日差しがあたりを照らす中、彼の赤きオークはただただ緊張という病を患っていた。
そして再度、真剣な面持ちで集落の奥の洞窟らしき場所へと足を踏み入れ、その暗く、狭い場所を一人寂しく歩いて行く。
松明を照らし、灯りを確保し、自らの足音響く暗がりを少々怯えながら通る。
そしてその最奥へと辿り着いた彼は、突如広がった部屋の奥に座る自らの同種へと近づき、その頭を下げた。
「王よ。参りました」
深く、深く頭を下げ、その者の機嫌を損ねないよう自らの口調を整える。
上で座する彼の王の姿は非常に不満気であり、今にも逆鱗に触れそうなほど怒りを露わにしていた。
「...して、貴様の持ってきた報告はなんだ」
威圧を放ち、まさに絶対的支配者たる威厳を持って、跪く同種ーーいや、下位互換へとことの説明を義務付ける。
すると、頭を下げていた彼は、滝汗を流しながら瞳孔を大きく広げ、慌ただしく震えた声で説明し始めた。
「お、王の耳にも入っていることかと存じ上げますが、我々の今回の人類国家滅亡作戦は....し...」
「し...?」
「し、失敗に終わりました...」
そしてその決定的言葉を聞いた瞬間、彼の王は激怒し、怒髪天を衝く勢いで立ち上がった。
座っていた玉座の取っ手部分はその握力で握り潰され、そして強すぎる覇気に伝令の者は正気を失いかけていた。
「やはり奴ら、敗戦したか...たかがニンゲン如きに...!」
王は激怒の末、石の地面を力強く殴りつけ、そしてその地を半壊させた。
怒りが一気に部屋中に広がる。
殺意が込められ、自らの死を直感する。
恐怖に満ちた配下は、その場でただ冷や汗を流すことしかできず、ただその怒りが自分に向かないことを祈ることしかできなかった。
そして、その配下の願いを聞き届けたのか、王は怒りを鎮め、そして再度、自らの玉座に鎮座した。
「まあ、良い。次は潰す。我が忠実なる配下であったモルディスを倒すなどという偶然的侮辱をした奴らには、厳しい制裁を与えるとしよう」
そして王は突如気分を変え、にっこりと笑いながら炎を生み出し、部屋中の松明に火を灯した。
そして灯された灯りの中、数100匹にも及ぶ、サイレント・オークの軍勢を前に王は勝利の笑みを確信する。
「震えるが良いニンゲン共。貴様らの命日は、すぐそこだ」
膝をつく赤いサイレント・オークの周りには、黒曜と白銀の同種ーー否、上位種が軍隊を成して立っていた。
王の宣言により、爆発的な盛り上がりを見せる軍団。
その上に鎮座するは、金色の王。
我ら赤き存在がいくら声を上げようとも逆らえない、絶対的支配者の色。
その金色の肌が照らす道は果たして希望か、絶望か。
その答えはいずれ、すぐにわかるだろう。
「サイレント・オーク・ロードーー王の導きが在らんことを...」
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