第24話 女子更衣室と心の乙女
<ララ>
驚いた。女体化男子だけでなく男体化女子までうちのクラスに居たなんて。魔法ニュースでのみ登場する存在が一気に身近な存在へと変貌したのだ。
それはそうと、次の時限は部活動体験。運動部や文化部の紹介があり、入学生たちも少し体を動かすのでジャージに着替える。着替えか。待てよ?
「いってーな! 何すんだよ!」
「男は女子ゾーン入ってくんな!」
シャープくんが女子更衣室から、閉め出しを食らっている。だよねー。しばらく入ろうと抵抗していたが、らちが開かないと諦めたようだ。
「私と一緒にバリアフリートイレで着替えましょう」
その声の主は、私のルームメイトだった。
「フォルテちゃんは優しすぎる! そんなやつ、絶対に調子に乗らせちゃダメだよ」
周囲の静止を振り切ってフォルテはシャープを連れてその場から去っていった。
そのまま、更衣室に入ると、大声で悪口大会がはじまった。
「最悪」とか「ありえないでしょ」とか口々に悪態を突く。
そんな中、「あのさ。聞いて」とポニーテールの女の子が口を開く。
「ラルゴって男の子が、男体化女子かもしれないって話しもあったじゃん」
「今はそっちの話はしてない」
話の腰を折られそうになりつつもポニーテールの子は続ける。
「あの後、盗聴魔法使って、保健室の会話聞いたんだけど、ラルゴくんって男女入れ替わり魔法受けてるみたいでさ。入れ替わり相手もこのクラスみたい」
ざわめきたち「誰?」とひそひそ声が聞こえる。私も初耳だ。誰なんだろう。
「それが、フォルテさんなんだって!」
「えー」「うそー」「やだー」などが、あたりに響き渡る。私のルームメイトじゃないか。心底、驚いている。
「じゃあ、いい子ぶってだけど、あいつも男なの? マッチポンプじゃん」
扉の方向に軽蔑した視線が集まる。
「待って!」と赤毛の女の子が大声で静止をかける。
「あの子はいい人だよ。だって、私が引っ越しで困っているところ助けてくれたし」
「でもねえ……」
「フォルテちゃんは本当に性格いいと思うよ。うちの弟を迷子センターに連れてってくれたんだ」
金髪ボブの女の子が追加で口を挟む。私も勇気を出して言ってみることにした。
「魔族のハーフだって差別された私の心を守ってくれた大切なお友達なの。ひどいこと言わないで」
泣くつもりはなかったが、涙が自然に頬を伝う。「ひくっ!」と嗚咽してしまう。
少し空気が変わったところでポニーテールの女の子は疑問を挟んだ。
「プリンセス指数いくつだっけ。65は超えてた?」
「80超えるか超えないかぐらいだったと思う」
ポニテはその言葉にため息をつく。
「じゃあ、ほとんど女の子の仲間じゃん」
自分が、悪者になりそうな空気を察して翻る。
「でもさー。たとえ、心が女の子だとしても、男として16年生きてきたわけでしょ。やっぱり、抵抗あるなあ。私は」
別方向から声が上がり、何人かうなづく。
「私的には女子の仲間として受け入れてあげてもいいし、ここで着替えてもいいけど」
今まで沈黙を貫いていたボス気質の子が、腕を組み壁にもたれながら、途中まで喋って言い淀むが、しばしの沈黙の後、続ける。
「みんなで気づいてないふりしてあげよう。だって、バレたら恥ずかしさで憤死しそうな顔してるじゃない? ここに呼んでも、きっと罪悪感でいっぱいになる性格に見えるよ。あのまま、ほっといてしばらく、様子を見守ってあげようよ。実際問題、本人が善意でトイレ行ってるわけだし、いつかみんなが、あの子を認められて、あの子が自分を受け入れる日が来たら、ここに呼んであげよう」
「とりあえずはそれでいいんじゃない?」
ということで、場は収まった。人間にもいろんなタイプの人いるなあ。さて、私はどうしようかな。
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