第79話

亜里亜アリアからのフレンド申請が届く。


【亜里亜さんが、アナタにフレンドを申し込んできています。】


と、頭の中に声が聞こえて。目の前に【yes】と【no】の、ウィンドウが映し出される。


*フレンド申請は、相手の【名前】が分かってさえいれば申請を送れる。*


俺は迷わず【yes】を押す。


《やっほぉ~イクル。そっちはどう?》


亜里亜からWISウィスパーが送られてきた。


WISウィスパーチャット*

*自分と、話相手にしか聞こえない会話モード。


《今のところは、順調だ。そっちはどうだ?》



『何とか、記録巻き物マーク・スクロールは作れるようになったよ。』


《さすがに、早いな。》


《えへっ。でも、所持金がスッカラカンになっちゃって。》


《分かってる。》


亜里亜と会話しながら、デスパの町に戻ると。


チラホラと他のプレイヤーの姿が見える。


そろそろ、他のプレイヤーも。多少なりともスキルが上がってきた証拠だ。


恐らく、後1時間もすれば、デスパは人混みに溢れかえるだろう。


そうなると、ドレイクの取り合いだ。


いくら、ドレイクが群れてPOPすると言っても。百人近いプレイヤーの狩る速度には追いつかなくなる。


出来れば、後30分は来て欲しくなかったが。予定を変更して、ドレイクの生皮を掲示板に出品する。


*掲示板*

*USOワールドに置いてのネットワーク。

*掲示板に出品できる品物は、1人に付き10品。

*スタックアイテムの数の上限は無し。

*掲示板には、出品物の数と値段しか表示されない。


*スタックアイテム*

*1個の所持品扱いで複数持てるアイテムの事。

*ゴールドや、ドレイクの生皮や、生肉等が良い例。



俺は取り合えず、掲示板に【ドレイクの生皮】を200個出品する。


単価は630。


売れないのは分かっている。要はダミーだ。


《デスパに他のプレイヤーが流れてきている。


多分、ゲートが開いたんだろう。 亜里亜。 来るか?》


《行く!どっちから出ればいい?》


俺はステータスウィンドウを開いて、USO内の時間を見る。



《多分、南か西のゲートだ。 USO内時間で8時間で消えるから。》


《了解! 待っててね!》


亜里亜が返事をした、その時だった。


【貴方の荷物を覗いている人が居ます。 ご注意ください。】


と、警告メッセージが流れる。


どうやら、銀行預り所の前で、立っている俺のストレージを【覗き見】のスキルを使って、見ている輩が居るようだ。


★覗き見★

*対象の腰袋の中身(アイテムストレージ)を見る事ができる。

*覗いて見ているだけでは、犯罪者フラグは建たない。

*スキル値が高くなると、覗き見する相手に気付かれにくくなる。


銀行預り所の側に、覗き魔が居るから気をつけろよ。』


一応、亜里亜にも知らせておく。


《了解。》


まぁ、覗いているだけなら被害はない。


厄介なのは【窃盗】スキルだ。


★窃盗★

*覗き見で覗いている相手のストレージから好きな物を選んで奪う事ができる。

*ただし、犯罪者フラグが立ち、灰色の名前になる。

*犯罪者フラグ(灰色名前)の立ったプレイヤーを殺してもPKプレイヤーキラーにはならない。

*街中で、衛兵を呼ぶと。灰色と赤色のプレイヤーは衛兵に倒される。


覗き見でストレージを覗いて。窃盗のスキルでアイテムをかすめ取る。


勿論、掠め取った時点で犯罪者フラグが建ち。衛兵を呼べば、犯罪者を瞬殺してくれるが。


これを、銀行預り所の傍でヤられると厄介だ。


なにせ、掠め取ったアイテムを、即座に銀行預り所に入れて預ければ。


たとえ、死亡しても。死体の中に、かすめ取ったアイテムは残らない。


NPCに話しかけた状態で、獲物のストレージを覗き。


取った瞬間に【yes】を押せば良いのだから。


CBクローズベータ時代に何度か、狩りで手にしたレアアイテムを掠め取られたのは良い経験だった。


あれ以来、USOでは、街の中でも油断してはいけないと思い知らされた。


亜里亜が来るまでに、雑貨屋に寄り。魔法書とルーンブックを購入する。



10分ぐらい(リアル時間で)経ち、亜里亜が銀行預り所の所に居る俺の側に来る。


亜里亜にパーティー申請を飛ばし、亜里亜とPTチャットで会話する。


★パーティーチャット★

*パーティーメンバーだけに話すことができる会話方法。

*パーティーメンバー以外には会話内容は聞こえない。





「ゴールドから渡すから。 素早く銀行預り所に入れろよ。」


「うん。」


亜里亜にトレード申請を飛ばして、銀行預り所から2K取り出し。亜里亜に渡す。


亜里亜がNPCに話しかけて、銀行預り所に入れる。


「OK。」


「次、行くぞ。」


次に、ドレイクの生皮を全部渡す。


「OK。結構集めたね。」


「予定よりは少ないけどな。」


「早速、掲示板で売りに出すね。いくら位が妥当かな?」


「ん~、一応ダミーで630で出してるけど。開始7日間くらいなら、400前後で売れると思うが。」


「んじゃ、380と400で売りに出しとくね。」


「あぁ、頼む。」


ステータスウィンドウを操作して、掲示板で売りに出す亜里亜。


「ちょっと待っててね。今から記録マークするから。」


そう言って、亜里亜がルーン石に記録マークを使う。


1回目、失敗。


2回目、失敗。


3回目、失敗。


4回目、失敗。


5回目、やっと成功。


記録マーク

*記録されていないルーン石に帰還リコールしたい場所を刻み込む魔法。

*記録出来る場所は、記録マーク)を発動した場所が記録される。


 

「魔法書とルーンブックは?」


「買ってきた。」


「なら、ルーン石と帰還リコール巻き物スクロールを渡すね。」


亜里亜から、ルーン石と帰還リコールの巻物を受け取る。


「サンキュー。」


亜里亜と話していると、俺たちの横から、1人の男性プレイヤーが話しかけてきた。




「すいません。 マークして貰ってもいいですか!? 1K出しますので!」


「OKよ。ルーン石は持参してね。」


「俺も!」


「私も!!」


そこら中から、亜里亜に記録マークしてくれとプレイヤー達が殺到する。



最初の頃は、記録マーク出来ない人が多いから、記録マーク出来るプレイヤーは貴重な存在。


お金を出してでも、記録マークして貰った方が、移動が楽になる。

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