裏の顔がヤバいイケメン君が狙う美少女を助けてから、気づけば彼のハーレムごとブチ壊して美少女全員オトしていました

本町かまくら

第1話 美少女四天王


 俺の通う高校には、アニメの主人公みたいなイケメンがいる。


「ねぇあれ見て! 須藤くんだよ!」

「めちゃくちゃカッコいい! オーラが違うね!」

「朝から須藤くんを生で見れるなんてツイてるなぁ~!」


 桜並木の道脇に立ち止まり、キラキラと目を輝かせてイケメンを見る女子三人組。

 イケメンは彼女たちに気が付くと、白い歯をニカっと輝かせて爽やかに笑いかけた。


「あははっ、おはよう」



「「「きゃ~~~~~~っ!!!!」」」



 ファンサービスも完璧。

 新学期早々大人気な彼こそが学園一のイケメン、須藤北斗すどうほくとである。


 大人気アイドルに見劣りしない抜群の容姿に恵まれた体格。

 おまけにスポーツも万能で、二年生にしてバスケ部のエースを務めており、中学時代は全国区の選手だったらしい。


 おまけに成績も優秀で定期テストは毎回十位以内。

 それだけでなく父親は不動産会社の社長で、爽やかで人望も厚くまさに非の打ち所がないイケメンだ。


 その人気を裏付けるかのように、須藤には言い寄られている三人の美少女がいて……。



「おはよー! 須藤くんっ!」


 

 気さくに須藤の横に並び、肩をぽんぽんと叩く彼女は花野井彩花はなのいあやか

 

 青色の髪が特徴的で、髪型はポニーテール。

 中学時代はバレーボール部だったらしく、太ももの肉つきはかなりいい。

 さらに目を引くのはその大きな胸。歩くたびにぷるんと揺れる胸は、今も多くの男子生徒の視線を引き付けていた。


 そんな花野井は容姿だけでなく性格も素晴らしく、優等生でクラスの委員長を務めている。

 そして何より――この学園に通う者ならだれもが知っている“美少女四天王”のうちの一人だ。


「おはよう彩花! 今日も朝から元気がいいね」


「朝だから元気じゃないとダメでしょ? これから一日頑張るんだし!」


「あははっ、そういう彩花のポジティブなところはほんとに素敵だね」


「っ!!! そ、そうかなぁ……えへへ」


 頬を真っ赤に染め上げる花野井。

 


「なーにイチャイチャしてんの?」



 二人の間に入るようにやってきたのは瀬那宮子せなみやこ


 金髪の髪を腰くらいにまでさらりと伸ばしており、中が見えてしまいそうなくらい短いスカートからは健康的な白い足がすらりと伸びている。

 大胆に開かれた胸元にはネックレス、耳にはピアスと派手な見た目で、いわゆるギャルというやつだ。


 制服の着崩し方や大人びた顔立ちからセクシーな雰囲気が漂っており、数多の男子を虜にしてきている。

 そんな彼女もまた美少女四天王のうちの一人だ。


「い、イチャイチャなんてしてないし? ただ私は須藤くんに挨拶しただけで……」


「彩花は嘘ばっかり。どうせ北斗に色仕掛けしようって魂胆なんでしょ? 見え見えだから」


「ち、違うよー!」


 怒る花野井をよそに瀬那が須藤の腕に抱き着く。

 むにゅっと音を立てて瀬那の胸が押しつぶされた。


「ねぇ北斗? 今日の放課後あたしの家来ない?」


「宮子の家?」


「うん。うちの親、夜遅くまで帰ってこないからさ……?」


「っ! 不純異性交遊っ! 絶対ダメ!!!」


「えぇ? あたしは一言もえっちなことするなんて言ってないけど?」


「えっ……ふ、風紀! 風紀がなんか、その……よくない!」


「二人とも落ち着いて、ね?」


 からかうように笑みを浮かべる瀬那とぷりぷりと怒る花野井。

 その間で須藤は困ったように笑っていた。



「あ~! 北斗くんだ~!」



 とてとてと走ってきたのは、葉月弥生はづきやよい

 

 猫毛でくしゃっとした桜色の髪が特徴的で、むちむちとした体を惜しげもなく晒している、いわゆるわがままボディ。

 サイズ的にはおそらく花野井と同等かそれ以上で、隙のありそうな言動が多くの男子生徒の心を射抜いていた。

 

 性格は無邪気で子供っぽく、そして何といっても天然。

 それゆえいい意味でのトラブルメーカーだ。


 そんな葉月もまた、美少女四天王のうちの一人だ。


「って二人もいる⁉ びっくりした!」


「今まで私たちのこと気が付いてなかったんだ……」


「盲目がすぎるよ……」


「えへへ~! おはよ~、北斗くん!」


「おはよう、弥生」


 この三人が須藤に好意を抱いている美少女たちだ。

 全員美少女四天王と呼ばれる校内屈指の美少女。

 巷ではハーレムなんて呼ばれ方をしている。


 しかしもう一人、須藤を語るうえで必要な美少女がいて……。



「あ、雫!」



 声を上げる須藤。

 その視線の先には、明らかに他とは違ったオーラを放つ美少女が一人で歩いていた。


 彼女の名前は一ノ瀬雫いちのせしずく


 宝石のようにきらりと輝く銀髪をたなびかせ、顔は人形のように整っている正真正銘の美少女。

 切れ長の目が特徴的で、一ノ瀬こそ美少女四天王、最後の一人なのだが……。


「おはよう雫! 今日も天気がいいね!」


「…………そうね」


 須藤に目もくれず、靴を鳴らしてすたすたと歩き去っていく。

 一ノ瀬は誰も寄せ付けない、そして誰にも寄り付かない孤高の美少女。


 高校に入学してからの一年間、告白された回数は四天王の中で一番多いものの、すべてを全く相手にせず。

 あの須藤すらも落とせない、難攻不落の美少女なのだ。


「なにあいつ。せっかく北斗が話しかけてあげてるのに」


「あははっ、何かしちゃったかな」


「一ノ瀬さんは誰にでもあんな感じだからね。須藤くんが気にすることじゃないよ」


「あはは……」


 苦笑する須藤。

 しばらく一ノ瀬の背中を目で追いかけてから、四人で歩き始めた。


 騒がしい並木通り。


「……ん?」


 唐突におぞましい気配がして、周りを見渡す。

 しかしその正体は結局わからず、俺も彼らを追うように足を進めた。










 


 放課後。


 繁華街を進んでいき、一本の路地に足を踏み入れる。

 ひっそりとそびえたつビルの前まで来ると、鉄の扉を開けて中に入った。


 階段を上がり、二階へ。

 ここが俺の住む家。

 この下はスナックになっていて、こずえが経営している。ちなみにこずえは俺の母さんだ。


「んぅ……むにゃむにゃ。テキーラ、ジン、ウォッカ。うぉうぉウォッカ……」


 こずえが部屋で爆睡しているのを確認すると、すぐに制服に着替えて髪をセットする。

 さすがに学校と同じボサボサでは人前に出れない。


 実は中学までは軽く手伝う程度だったが、部活を辞めてからは店で働いていた。

 少しでも働き手が多い方がいい。


「今日はこれか」


 買い出し表を確認すると、財布を持って外に出る。

 今日もジメジメとした路地裏独特の匂いが漂っている。

 しかし、ずっとここで暮らしてきた俺にとってはただの日常だった。



「ねぇ、ついてくるのやめてくれない?」



 ふと、敵意むき出しの声が聞こえてくる。

 声の方を見てみると、そこにいたのはオドオドした肥満体型の男子生徒。そして――


「私に何か用?」


 須藤でも落とせない学園屈指の美少女、一ノ瀬雫だった。


「気づいてないと思った? ここ数日、私のことつけてるでしょ」


 思えば今朝感じた気配の正体はこいつだったのかもしれない。

 

「何とか言いなさいよ」


「……ぼ、僕はそんなことしてない」


「言い逃れできないから。第一、人気のない路地裏についてきてるのが証拠よ」


「っ! そ、それは……」


「私の要求は一つだけ。もう二度とついてこないで。これ以上ストーカーを続けるようなら学校に相談するわ」


 怯む男子生徒。

 額に尋常じゃない量の汗が滲んでいる。


「私だって大事にするのは面倒なの。いいわね?」


「っ……」


「……はぁ、何も言えないの? 情けないわね。ここまで譲歩してあげてるのよ? なら喜んで頷いて、今すぐ立ち去りなさいよ」


 一ノ瀬の言葉にピクリと反応する男子生徒。


「……ふざけるな」


「え?」


「ふ、ふざけるな! 偉そうに言いやがって……! お前みたいな奴、どうせイケメンにはすぐに股開くんだろ! す、須藤みたいな! なのにぼ、僕の告白を断って……ふざけるなァッ!!!」


 わかりやすい逆ギレ。

 汗が飛び散り、アスファルトに滲む。


「色々誤解しているようだけど、少なくともあなたに靡くことはないわ。だからその意味の分からない勘違いはやめてもらえる?」


「っ! ちょ、調子に乗るなよ! この淫乱クソビッチが! イケメンとヤリたい放題のくせに!!!」


「好き放題言えばいいわ。でもあなたの言葉程度で傷つきはしないから」


「こ、この……!」


 明らかに男子生徒の神経を逆撫でしている。

 この場合、行動として間違っている。


「これ以上あなたと話すことはないわ。もう一度言うけど、今すぐ立ち去って……」



「うるさいッ!!!」



 男子生徒の声が響き渡る。

 そして一歩ずつ、その大きな体を持って一ノ瀬に近づいていく。


 ……やはりこうなったか。


「な、なに? 近づかないでくれる?」


「お、お前が悪いんだ。僕の告白を断って、イケメンばかりに色目を使うから……」


「ちょ、ちょっと!」


 男子生徒が一ノ瀬の肩を掴む。

 そしてそのまま壁に押し付けた。


「い、一発くらいヤラせてくれてもいいよね? だって須藤とヤリまくりなんでしょ? ねぇ、いいよね?」


「っ!!! い、いやっ!」


 一ノ瀬の顔が恐怖で滲む。

 しかし、それは男子生徒を興奮させるだけだった。


「グフフフフ……め、めちゃくちゃにしてやる。全身を舐め回して、ぐっちゃぐちゃに犯してやる! それで、それで……僕の子を孕むんだァッ!!!」


「っ!!!」


 ……さて、もういいよな。

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