男の聖女はダメですか?

茉小夜

男聖女爆誕

第1話 誘拐

皆さん、神話で女性が神様に誘拐される話が往々にしてある事をご存知だろうか?


例えば、エウロペという女性。彼女はヨーロッパや木星の衛生の語源にもなったと言われる神話の女性である。ゼウスが一目惚れをして、彼女を誘惑するために自身を白い牡牛に変え近付き誘拐したとされる。


それでは沢山ある例の中から彼女を挙げたかとす言うとーー


「私と結婚してもらいます」


野良猫のミーゴに誘拐されて、気付いた時には謎の部屋とイケメン。ミーゴがいない。正面のイケメンは自分がミーゴだと名乗り、その正体は神だと自称する。そんな彼が結婚を迫ってきた。


スゥ〜〜……ハァ〜〜……


吸って吐いて深呼吸。少し冷静になったので色々ふりかってみよう。


自分の名前は上城雅(カミシロミヤビ)。

社会人3年目になる立派な大人だ。但し身長148cm。

容姿は兄弟姉妹のメンテもあって綺麗な白肌に長い髪、童顔女顔。自画自賛ながら可愛いと思わなくもない。但し男性。

好きなタイプは当然女性だ。女性。お胸が大っきいと尚良。断じて男は範疇になし。


「僕は、男だぞ。価値観はそれぞれだけど、僕にその気無いよ」


「へっ?」


「というか、本当にミーゴ?いつから人化を覚えたんだ?確かに巨大化してたから出来なくもない気はするけど……」


思い返すは誘拐された時のこと。

クソ同僚に仕事を押し付けられて泣く泣く残業した僕。最近飼い始めた野良猫ミーゴによるアニマルセラピーを求めて我が居城であるマンションへ帰宅。しかし、待っていたのはミーゴではなく、部屋を壊さんばかりにデカい猫?虎?


"パクッ"


驚きのあまり硬直していると俺を口に咥えて開いていた窓から夜の街へと飛び出した。

ビルの上をぴょんぴょんぴょん。暴れて落ちたら死ぬのが目に見えて動くに動けない。


あっ、花火……じゃなくて魔法陣?


僕たちが魔法陣に飛び込むと意識があっさりブラックアウト。目を覚ますとイケメン野郎に求婚されてたって訳っ!!どうなってるの?!


「いやいや、雅さん。こんなに可愛い子が男な訳が無いじゃないですか」


「男だ」


「「………」」


「お帰りはあちらです」


よし、殴らせろ!少しは説明しろや!!


何事も無かった様に扉へと案内し始めた彼に仕方なく付いて行く。歩きながら振り返ったタイミングで殴ってやろうかと考えていると。


「それじゃあ、今から元の世界に繋げーー」


"バン!"


「「「「どういうことか説明しろ!クソ親父/父様!!」」」ーーゴハッ!?」


突然扉が開いて綺麗なお姉さんたちが飛び込んできました。当然扉の前にいた彼は吹き飛ばされましたわ。やったね。


「〜〜〜〜っ!?」


「へっ? あれ?」


「おん? クソ親父は?」


「クソ父様いないね〜。あっ、君が誘拐された人? 災難だったね。もう大丈夫だよ。安心してね」


彼は後頭と脇を抑えて転げ回っいる。

ドアノブもクリティカルヒットしたんですね、ご愁傷さまww

こっちは清楚で優しそうなお姉さんの大きな胸に包まれて幸せです。


「って、いた。どういう事か説明して下さい!いきなり『新しいお母さんが出来るよ!』って連絡は何ですか!? それと同時に異世界の神から誘拐されたと苦情がきましたがっ!ここはお父様が休暇に行った世界だった筈。 ちゃんと説明してくれますよね? ね?」


メガネ美人のお姉さんが転げ回る彼を冷めた目で見下ろしている。


「おい、クソ親父。今度はなにやらかした? オレのハンマーが火を吹く前に正直に答えな?」


褐色美人なお姉さんも彼に近付き、何処にそんな力があるのか、大きなハンマーを握りながらもう片手で彼の胸倉を掴み吊り上げた。


「いたた。少し痛みが引いて……えっ、ブリギッテ? ちょっ、止め……ぐるじぃ。ソフィア止めて……」


「はぁ〜っ、机出すからそこの真ん中にでも下ろして」


"パンパン"


「ほらよっと」


ソフィアさんが手を叩くと何も無かったはずの部屋にC型のテーブルと椅子が現れた。テーブル中央にブリギッテが彼を投げ入れる。


パワーが凄いな。逆らわない様にしよう。


「ぐへっ、もうちょっと君は優しく出来ないのかい!?僕はこれでも父親だよ!?」


「父親なら問題起こして娘に迷惑かけるな。だから、離婚されるんや」


「皆、席に着いて。今からお父様とその子から話を聞きます」


手を引かれながらテーブルに移動すると自分の座ろうとした椅子が突然消えた。


「えっ?」


まさか、俺もテーブルの真ん中に立たされるのか? 何もしてないのに?


そんな風に困惑していると


「君はこっちね。こっち。さぁ、どうぞ」


手を引いてくれたお姉さんが椅子に座って、さぁ来いと手を広げている。どう考えても、膝の上に座らせる気だ。


「いや、その……」


流石に小さいことを自覚してるが年齢的に膝の上に座るのはちょっと躊躇する。


「ほらほら、遠慮しないの!」


「あっ、……くっ、殺っ!」


戸惑う僕の手を引っ張り強引に彼女は膝へと座らせた。


なんだ、この幸せ空間!柔らかい感触、良い匂い、理性で抵抗しようとするも誘惑に抗えない。女騎士の様に堕ちてしまう。


大人おしてこれで良いのか?

欲望に忠実なれよ?


くっ、天使と悪魔の囁きが聞こえてくる!?


「いい子いい子」


なでなでオプションが付きました。

俺はどうなってしまうのやら……。


「ニュンフェ。話が進まないから止めてあげなさい。彼が嬉しいけど恥ずかしいみたいで百面相しているわよ」


「あら、ごめんなさい」


「寧ろ、こっちがごめんなさい。でも、最高でした!ありがとうございますっ!!」


「それでは揃ったことだし、話し合いを始めましょう」


こうして、僕の異世界を巡る物語は始まった。

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