第36話 恋とは違う関係になる罠?

「……あのさ、今日の放課後時間ある?」

「ん~? なんかすっげー久しぶりじゃない? 通路挟んですぐ隣に座ってるのに全然シカトしてたからちょっと気に入らないって思ってたけど、もしかしてより戻す気になった系?」

「栗城って一年女子と付き合ってんじゃなかった? それが何でわたしらに話しかけてくるわけ?」


 秋稲の作戦通り、俺は青夏との偽の関係を発覚させて以降ずっと関わらないようにしてきた二人の女子に話しかけた。


 この女子二人は、村尾と何らかの形で協力関係にあると踏んだからだ。何の証拠も無いが、笹倉会の時に何となく感じたというだけだが。


「よりを戻す……えっと、この場合の戻しって普通に話せる仲って意味だよね?」


 積極的に話しかけてきたのは花本の方だけどな。


「クリキチがあたしらに話しかけてくるってことは、そういう意味じゃん? そうとしか思えないけど」


 この際花本にどう取られてもいいが、何かしら聞き出さないとこの作戦がとんでもない方向にいきそうで怖い。


「……まぁ」

「あ、そういう意味? やっぱり届かない笹倉よりもあたしらの方がいいわけだ?」


 花本だけならまだ何とかなりそうだが、野上も巻き込まないと多分解決しない話だろうな。


「それは想像に任せるけど、俺と放課後に話せる時間はあるってことでいい?」

「いいよ」

「……途中で一年女子出すの禁止。それがないなら時間は作ってもいいけど?」

「もちろんあの子は来ないから安心していい」


 花本たちの中では青夏の登場は仕込みだったという認識ってことか。


「じゃ、HR終わったら文世ロードの招かれ猫集合でよろ!」

「え? そこって……」


 カラオケ店の名前だったような?


「笹倉会の会場だったとこ。別に、笹倉に関係無くあの店しょっちゅう使ってるから。とにかく、栗城はそこに来なよ」


 やはりそうか。あの店での村尾の態度は褒められるものじゃなかったが、この二人と村尾の関係性が何となく変わった気がしたんだった。 


 ――そして放課後。


 放課後になるまでに秋稲はもちろん、村尾とは一切話をすることなく終わった。


 秋稲には秋稲の作戦があるらしいので、俺はしばらく話しかけないことにしていた。そのせいなのか、村尾の奴はやたらと秋稲の近くにいて声をかけたそうだった。


 ただ、村尾の奴も俺のせいにしたくせに自分がしたことを周りにバレるわけにいかない警戒感があるせいか、近づくそぶりは見せるものの直接話しかけることはなかったようだ。


「栗城っち~待ってたよん! あたしの隣に座ってよ」

「あんたのことは別に好きじゃないけど、隣に座る。いいよね?」

「……あ、うん」


 一見すると女子二人に挟まれてハーレム状態なのだが、このカラオケ店にいたのは花本と野上の二人だけじゃなかった。


 彼女ら以外に店で待っていたのは――


「――いやぁ、栗城君も来てくれて助かるっす!」

「お前もしょっちゅう来てるのか? 月田……」

「そんなことないっす。時々呼ばれたりするだけっすよ! そうっすよね?」


 ……などと、月田は向かい合っている花本と野上に同意を求めているが、二人は月田のことなどお構いなしに俺しか見てこない。


「相変わらずモテモテっすね……あれ、でも栗城君って確か……後輩女子の子と付き合ってるんじゃ?」


 意外に鋭い指摘だ。


「付き合ってない。月田の勘違いだよ」


 俺が勝手に勘違いしてただけだからな。


「そ、そうなんすね……だから二人が嬉しそうにしてるんすね~」

「……は?」

「あ?」


 月田の言葉に反応して、花本と野上はすぐさま月田を睨みつけている。睨みに耐えきれなくなったのか、月田はすぐに視線を下に落とし黙ってしまった。


「で、栗城っち。話したいことって?」

「そう、それが本題。わたしらを誘っといてつまらない話とかするわけないよな?」


 直接村尾の話をするのは危険なうえ、この場に月田がいるのはかなり問題だ。月田は村尾の味方というか、ほぼ手下のような扱いっぽいからな。

 

「あっ、そういえば村尾君も呼ぶべきっすかね?」


 やはりそう言うよな。多分いつもは村尾と二人で行動してるはずだし、花本と野上とも一緒に遊んだりしてるはずだ。


「え、いらないけど?」

「来なくても問題無いんだけど、何で村尾?」


 そう思っていたが、二人は村尾は関係無いと言わんばかりに拒否反応を見せた。いつも一緒に遊んでるんじゃなかったのか?


 いや、何より俺の噂を広めたのは村尾との関係が深いこの二人じゃないのか?


「そ、そっすよね……最近はそれどころじゃ――いや、何でもないっす」


 その言いかけはほぼクロだと明かしてると思うが。


「ていうか、これから栗城っちと大事な話があるんだけど~?」

「月田だっけ? 月田はもう帰っていいし」

「へっ? えぇ!? う、歌わせてくれないんすか? だって前はもっと……」

「栗城っちとあたしらだけの空間が必要だし、今日はもう大丈夫だから月田おつ~」


 花本と野上の睨みが相当に堪えるのか、月田の顔がみるみるうちに青ざめていくのが見てとれる。


「そ、そうっすか……じゃ、じゃあ栗城君に後は任せるっす」


 そう言うと月田は寂しそうに部屋から出て行った。


 村尾にこの話が伝わる恐れもあるし、月田には悪いが帰ってもらった方が俺には都合がいい。


 しかし問題は――


「――邪魔者がいなくなったし、栗城っち。そろそろ始める?」

「……何を?」


 とてつもなく嫌な予感しかしない。何せ両隣に女子が密着しているわけで。


「栗城はしばらく動くの禁止だから。ねえ、芽衣?」

「そそ。栗城っちは何も動かなくていいし」

「……わ、分かったよ」


 秋稲の作戦とはいえ、この状況は非常によろしくないことが起きるのでは?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る