第44話 復帰祝い
テイラーギルド長から報酬を受け取り、ギルドのロビーに戻るとアテナさんと目が合った。
「お二人さん、お待たせしました」
「あ、ジェイル君終わったんだね。それじゃあ行こっか」
アテナさんとレイさんは立ち上がり、俺はその後ろを着いていく。
ギルドを出た所でアテナさんが伸びをした。
「さーて、折角の復帰祝いなんだし美味しいの食べに行こっか!」
「そうだな。ジェイル君は何かリクエストはあるかい?」
…リクエストどころかこの国の見取り図が無いから飲食店なんてほぼ決まった所しか行ってない…
「んー、あまり俺自身そこまでこの国に詳しく無いのでお二人が見知った所であれば全然構いませんけど…」
となるとあそこか…とレイさんが呟く。
何かいい店でも知ってるのだろうか?
アテナさんもアテナさんでそこにしよう♪と盛り上がっている。
とりあえず着いていけば間違い無いだろうと、俺は2人に着いて行く事にした。
◇◆◇◆◇◆
「ここですか?」
「そ、私達御用達の店だ」
その店は俺が泊まってる宿とは真反対の方向にあった店でザ・異世界と思える店構えだ。
こんな店があったとは…
アテナさんとレイさんが入ろうとするがアテナさんが看板の前で立ち止まる。
「?アテナさん?」
アテナさんがその看板の前でワナワナと震えていた。
「…こ…これは…!!!!!!!!」
「?」
アテナさんが見ている看板の文字を見てみた。
【本日限定!ミロクウシのステーキ販売中!!!!(数量限定)】
…ミロクウシのステーキって事は大層大きいステーキ肉なのだろう。
アテナさんを見ると目付きが変わっていてまるで好物の獲物を見て絶対に逃しはしないという意思がある目だった。
すると突然俺の腕を掴み、店内に入っていく。
「ちょっ!?アテナさん!?」
「ジェイル君急ごう!このステーキ肉は絶対食べさせたいの!」
アテナさんは意気込んでレイさんと共に店に入る。
店員が俺達を見て何名ですか?と聞こうとするがアテナさんはそれより先に「3名!ミロクウシのステーキ3つ!!!!」と言って、空いてるテーブル席に俺の腕を掴みながら座る。
さすがにアテナさんとレイさんは隣同士にした方がいいと思い、一度座った席から真向かいの椅子に移動して2人を隣同士で座らせた。
暫くしてそのミロクウシのステーキが来た…が…
「でっか…」
目の前にはジュゥゥウウ…とまだ焼けた音が鳴る巨大肉が鉄板の上に置かれていた。
日本にいた時にテレビでよく見た大食い選手権で出そうなステーキ肉で恐らく1キロはある。
そして飲み物も木のジョッキで全員分揃い、アテナさんが立ち上がる。
「では、スタンピードの作戦成功とお二人の復帰を祝って────カンパーイ!!!!」
ガコン!と木がぶつかり合う音が響き、復帰祝いは始まった。
◇◆◇◆◇◆
「そしたらその時にレイがさー!」
「ちょっ!アテナ!?それは言わない約束だろう!?」
少ししてアテナさんにもレイさんにも酔いが回ってきたのか、アテナさんがレイさんの恥ずかしいエピソードを語り始めた。
レイさんは言わないでほしかったのか、顔を赤くして両手で隠している。
木のジョッキに入ったお酒は日本で言うチューハイのようなもので、日本酒やワインといった度数の高いお酒を普段から飲んでいた俺からしたらほぼ炭酸飲料と変わらなかった。
肉も美味く、某狩りゲーさながらの丸かじりを楽しんでいる。
◇◆◇◆◇◆
もう暫くしてレイさんが俺に話題を振ってきた。
「そういえばジェイル君、聞きたい事があったんだ」
「?なんです?」
レイさんが姿勢を正しくするので自然と俺も正しくなる。
「君は今後どうするつもりなのかな?」
「…というと?」
「実は君がギルド長と話していた時にアテナと話していてね。少しの間だったが色々と楽しめたよ────だから、もしもこの国で依頼を受け続けるのなら私達と組まないかい?」
突然の勧誘だった。
個人的にはありがたい話だ。
ソロでやっていくより安全性は高まるし、何よりこの世界の住人である人達に評価されたも過言では無い。
だが俺は…この世界でやりたい事を見付けたのだ。
故に─────
「勧誘は大変ありがたいのですが今回は辞退します」
勧誘を断った。
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