第42話 アンリからの呼び出し
テイラーギルド長とギール所長の訪問の翌日、傷が完治し動けるまでになっていた。
横で療養していたレイさんも少し動くだけなら大丈夫なようだ。
ある程度話をして俺はアンリさんが呼んでいるとの事で早速アンリさんの店に行く事にした。
◇◆◇◆◇◆
「あった」
俺は今アンリさんの店の前にいるが、ここの店に行くのも久々な気がする。
というか呼び出しってどんな用事なのだろう?
特に呼ばれる理由も分からず中に入る。
「アンリさーん?ギルド長が呼んでるって聞いて来たんですけど…」
「お~、来てくれたんだ~。ここで話すのもなんだから奥に来てよ~」
カウンターで店番をしていたアンリさんが立ち上がり、奥に俺を案内する。
奥には二部屋あり、片方のドアには《作業室》、もう片方には《待合室》と書いてあり、俺は《待合室》に入る事になった。
待合室は日本の応接室に似ていて2つのソファーで長テーブルを挟み、壁には何も張られていない殺風景な部屋だった。
「お茶持って来るから座って待ってて~」
「分かりました」
俺はアンリさんが部屋から出て行ったのを見て、ソファーに座る。
改めて気になるけど俺、呼ばれる事やったか?
うーん…と考えるが何も思い付かない。
そうこうしてる内にアンリさんが紅茶を持って入って来た。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
アンリさんが紅茶をテーブルに置き、アンリさん自身も座ると紅茶を飲んだ。
それを見計らい、自身も一口飲む。
カチャ…とお互いにティーカップを置く音だけが室内で聴こえる。
「さて、と、とりあえずスタンピードのモンスターの対応お疲れ様」
「はい、ありがとうございます。…それで今回はなんで呼ばれたんですか?」
あぁ、その事なんだけど…とフゥ…と一息付いて俺を真っ直ぐに見詰める。
「君は─────剣も使える魔術師を目指した方がいいかもしれない」
◇◆◇◆◇◆
「…俺は魔法使いには向いてない───そういう事ですか?」
「いや、魔法使いの素質はまずあるよ。現に竜魔水晶剣を使ってるんだから。だけど君の魔法を使う才能を活かすなら魔術師の方が君の才能を殺さずに済むって話なの」
「だから俺に魔術師になる事を勧めたんですね」
そういう事。と言われ少し安堵した。
ただ…とアンリさんは少し考え込む。
「君…ラテゼ魔工皇国出身じゃ無いよね?」
ラテゼ魔工皇国────以前、この世界の歴史書を見た時にその国名はあった。
確か技術発展の為にアイルミロクの国から多くの人が出てその国を建国した国だ。
そして技術発展を目的とした国だから自然と共に生きるアスマニア自然公国とは犬猿の仲とも書いてあった。
だが、なぜ俺をラテゼ魔工皇国出身と思ったのだろうか?
「まぁラテゼ魔工皇国出身でも無いしそもそも行った事も無いですね」
俺の問いに、だよね~…と天井を見上げる。
「あぁ、いや、実を言うとね…ジェイル君、あのスタンピードの時にあの剣使わずに魔法使ってたでしょ?」
アンリさんに言われて自分がやった事を思い出す。
確かに俺は進行経路に壁を作って立ち往生させていた。
それも魔法は素手で。
「素手で魔法を使う方法は確かにあるの。けどその技術を学べるのはラテゼ魔工皇国でしか学べないのよ」
そう言われて俺は内心焦っていた。
俺が素手で魔法を使えるのは間違い無く"理の解除"があったからだ。
それが無ければ俺は素手で魔法なんか使えない。
…使うべきでは無かったのかもな…
「そこで!君には2つの選択肢があるの!」
ビシッと俺を指差す。
アンリさんも中々魔法に関しては真剣なのか、いつもの「○○よ~」という口調は消えている。
「1つはそのまま魔法も使える剣士を目指す」
その後にアンリさんは中指を伸ばし、ピースの指をした。
「もう1つはラテゼ魔工皇国に行って更に高度な魔術を習う」
君はこの2つの選択肢があるよ。とアンリさんは言った。
そのまま魔法も使える剣士と魔術を使える剣士…
俺は深く考えた。
確かにこのまま魔法も使える剣士…言わば魔法剣士の道を歩むのも悪くない。
が、個人的にそのラテゼ魔工皇国に行って魔術を習い、高度な魔術を使える剣士を目指すのもいい…
………
……
…
よし。
俺は紅茶を一気に飲んだ。
…あっつ。
「アンリさん、決めました。俺は────」
◇◆◇◆◇◆
カチャ…と入口のドアを開き、俺は店を出た。
「私もその選択肢は中々ありだと思うよ」
「そうですかね…とりあえず、アドバイスの方、ありがとうございました」
「うん、君の行先が希望に満ちてる事を願うよ」
アンリさんは手を振って店のドアを閉めた。
俺はもう進む道は決めた。
なら先にやるべき事はあれだ。
俺は店に一礼して俺が泊まってる宿に帰った。
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