光のペンダント

@uchiyashuma

第1話

【民の心を善に導く力を与えよう】


 何者かの言葉がかすかに記憶に残る。




 ◇




 これはある王国の一人の王子の物語です。






「まあ本日も素敵なお衣装ですねポポロ王子」


 城内に仕える侍女マリアは王家が集う朝の食卓で


 男の子に言いました。




「今日は母君が選んだんだ」


 まだ小さく幼い男の子は答えました


 ポポロ・ルーステンはここロレンス王国の王子様です。






「ルビーがちりばめられた鮮やかなお衣装ですわ」


 マリアはそう続けました。




「へえーこの赤いのルビーっていうんだ、なんかチカチカして落ち着かないや」




「王子!落ち着かないとは何ですか!こんなにもきれいなお衣装に向かって!」


 そう口をはさむのはルーステン家の親戚ロビンソン家のクリム、ポポロ王子のお世話を任されています。




「日頃の感謝を忘れてはなりませんぞ、朝食を頂いたらすぐにお稽古ですぞ」




 お稽古とは武道全般のことであり、とくに剣術はポポロ王子にとって


 苦手な分野。技術が必要な剣術は練習嫌いの王子には億劫です。


 ポポロ王子はそう言われると不満げな顔で朝食を食べ始めました。




 今日の朝食は野菜のポトフです。


 王子は人参が大の苦手でいつも残すので、クリムにいつも怒られてしまうのは日常でした。




「それはそうとそのペンダントいつまで御付けに?」


 クリムは怪しげな表情で言います。






「これはお守りだよ」




 透き通ったイエローの宝石をはめこまれたペンダント。


 衣装のルビーより強く輝くペンダント。


 いつ、誰に貰ったのかも分からないペンダント。




 物心つく前から王子は肌身離さず身に着けていました。




 ◇




 王族の子供たちは将来に向けて幼いころから勉学、稽古を行います。


 毎日毎日稽古や勉学でポポロ王子は疲弊していました。


 そんな王子の拠り所。




 それはロレンス王国の国民でした。




 王子は稽古が終わるといつもお風呂に入らされます。




 しかし王子はいつもクリムの目を盗んで


 民に会うため、こっそり抜け出し城下町にでるのです。




「あ!ポポロ王子だ!」 




 女の子がポポロ王子に気づき叫ぶと、群衆が一挙に押し寄せます。


 王子の周りを取り囲むようにして皆話したがります。




 王子を見ると人々には笑顔が溢れます。


 王子と関わった全ての人間は王子が次代の国王になることを


 疑わないのです。




 お話を楽しんだポポロ王子が意気揚々と歩いていると


 ある暗い路地に人の気配がしました。


 ちらりとそこを見ると


 三人の男が小さい男の子を囲んでいます。


 小さい男の子は王子を震えた表情で見つめます。




 まだ幼い王子、城で悠々自適に生活する王子には


 何が行われているのかわかりませんでした。


 人が人の物を脅し奪う、そんな恐ろしい事など


 王子には想像がつくはずもありませんでした。






 ◇






 城に帰った王子は自分の部屋におりました。


 キラキラとたくさんの星の形をした装飾品で囲まれた部屋です。


 王子は中央に位置するベッドに飛び込みました。




「今日も楽しかったなー」


 王子にとって人と触れ合うのはこの上ない喜びでした。






 すると王子に昔の記憶が蘇ります。




 【民の心を善に導く力を与えよう】




 いつもふとした時に蘇るその言葉。


 まるで忘れるなと、王子に呪いをかけるように。




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