俺は、魔力0の最弱魔族!
@SiZuMa0852
一年生編 第一章 入学! オルエイ高等学園!
1.Fクラススタート
「名前はエスタさんであってますね。試験は合格、学年順位は最下位で、配属先はFクラスです。」
「はっ?」
試験官にそういわれた時、頭が真っ白になった。
その一言は余りにも衝撃が大きく、何も考えられなくなった。
「俺が…最下位?」
それまで確かにバクバクと動いていた心音は、全く聞こえなくなり、時が止まったかのように周囲の音がパタリと聞こえなくなった。
なんで
そんな言葉が頭の中に思い浮かんだ。
今日は高等学校入試試験の結果発表だった。
入試を受けた学校の名は、オルエイ高等学校。
この国で最も優れているといわれている教育機関だ。
持っている敷地は直径十キロもあり、卒業しただけで将来は超安泰。
所属している生徒は皆、騎士団に所属すれば、団長以上の実力を持っているという噂までたっている。
それ故に、倍率は百倍近くまで行く事もある名門中の名門。
俺の長年の目標だった。
だからこそ、この結果に俺は絶望する。
まさか、自分の成績が、合格者の中で最下位だなんて…
先に言っておくが、最下位だろうがここに入学できる時点でとんでもなく凄い。
国中でたった百二十人しか入学が許されないのだ。
合格するなんて至難の業。
例えば、自分の住む国で最も難関と言われる学校を想像して欲しい。
その学校が倍率百倍もあり、一学年で百人近くしか入れないとする。
普通、大半の人は自分には無理だと諦めるだろう。
ここはそういう場所だ。
だから多くの人は、例え最下位だとしても合格出来た俺に対して、贅沢言うなと不満をぶつけるだろう。
だが聞いてほしい。
俺はオルエイの模試で、上位一桁以外とったことが無い。
この国の学力レベルが低いのもあるが、それでも俺は頭が滅茶苦茶いい。
そして、戦闘レベルも非常に高い。
十歳という若さで、ハイオークと言われる、討伐に一般男性数十人が必要な魔物を単独で仕留めた事がある。
当時はまだ子供だったのに、これはものすごい快挙である。
周囲の人達からは、百年に一度の天才だの、神童だの色々言われた。
そう、俺は天才なのだ。
この学校でだって、余裕で一位をとれるはずなのだ。
だからこそ、俺は動揺で固まった口を無理矢理動かして質問する。
「え? 何かの間違いではないんですか?」
「いえ、間違いはありません。正しくあなたを評価した結果です。」
目の前のスーツ姿を着た女性は淡々とそう述べる。
俺は全くもって納得出来なかった。
成績が下の方ならばともかく、最下位なんて…
「なん…で…」
俺の口からは自然とそんな言葉が漏れた。
納得できなくて、俺はただがむしゃらに彼女に食いつく。
「納得できません、せめて全ての科目の成績を見せてください!」
「はい、元々そのつもりです。」
そう言って、試験官である彼女は、手元に用意していた資料を開く。
俺はその光景をただ呆然と眺めていた。
「ではまず、学力から。百点満点中、九十五点。学年二位です。凄いですね。」
「だろ! 流石に一位はとれなかったが、充分な成績だろ? 小さい頃から頭は滅茶苦茶良かったんだ!」
「そうですね。これは優秀であると言わざるを得ません。歴代の成績を見てもかなり上位に食い込みます。」
「そうだ! だからこれで学年最下位なんて有り得ない!」
「では次、剣術。百点満点中、九十八点。学年一位ですね。おめでとうございます。」
「当たり前だ! 昔から神童と恐れられてきたんだ!」
「歴代の成績を見ても、上位五名に入ります。とてつもないですね。」
「だから言ったろ!」
「次は身体能力。百点満点中、九十六点。こちらも学年一位です。」
「ハッ! ハイオークと対等に渡り合った俺の力なめんな!」
「こちらも歴代上位五名に入ります。」
「そうだろ、そうだろ。俺は戦闘最強なんだから!」
「次は体力。百点満点中、百点。化け物ですね。」
「一日中魔物と戦える俺の体力舐めんな!」
「学年どころか歴代一位です。」
「満点なんだから、当たり前だろう。」
「次は拳法。百点満点中、九十四点。学年三位。」
「得意科目だしな。」
「次は戦闘センス。百点満点中、九十六点。伸び代たっぷりです。」
「そりゃ、いずれは魔王になる男だからな。」
「そして次は…」
ダン、と耐えきれなくなって思いっきり机を叩く。
「今までの結果見たらわかるだろ! 超有望格じゃん!」
「ええ、ここまでの結果を見れば、下手をすれば将来の魔王クラスですね。」
「じゃあ、なんで一番下のクラス!? 国イチの才能を潰す気!?」
「なんででしょうね。心当たりはあるでしょう…」
「無い…!」
きっぱりと言い切る。
これだけの点数を取っておいて、心当たりなどあるはずがない。
充分だろ。もうしっかり自分の実力は見せている。
しかし試験管は俺を見て、大きくため息をついた。
「はぁ。自分が国イチの才能を持っているなんて豪語する人、久しぶりにみましたよ。聞きます? 残り三教科の点数…」
「………」
「まず魔力。百点満点中0点。合格者どころか、全受験者の中でもぶっちぎり最下位。」
「………」
「次に魔力操作。百点満点中0点。」
「………」
「最後に魔法。百点満点中0点。」
「………」
「ちなみにこちらの二つも、最下位です。何か言いたい事はありますか?」
「………」
俺が何も言わないのを見ると、彼女は再び大きくため息をついた。
そして、手元の資料をじっと見つめる。
「こんな滅茶苦茶な点数の取り方をする人、初めてです。確かに凄い優秀ではありますが、合計点では最下位。諦めなさい。」
「………だって無理じゃん。」
「………は?」
「無理じゃん、こんなんッ! 不平等にも程があるだろッ! 魔力ないんだから、魔法系統の科目なんて全滅に決まってんだろッ!」
「なんで切れてるんですか! 私に言わないでくださいよそんな事! そもそも魔力ないってなんなんですか!? これでもたくさんの受験生を見てきましたが、魔力の項目で0点取る人なんて、初めて見ましたよ!?」
「知らねえよ! 無ぇもんは無ぇんだもん! 仕方ないだろ!」
「というか、よくこの結果で心当たりが無いとか言いきれましたね! 九科目中三科目が0点なのに、合格出来てることさえ奇跡ですよ!」
「知るか! 他の教科が全部九十点台なんだからAクラスに入ってもおかしくねえだろ! ってか入るべきだ!」
「なんですか、そのポジティブ思考は! 現実見ろこのクソガキ!」
「クソッ…!?」
俺はやるせない気持ちを抑えて、拳を握りしめる。
本当は思いっきり壁を殴りつけたいが、そんなことをすれば、ヒビが入るどころか粉砕しかねないので我慢するしかなかった。
八歳の頃、この学校に入ると決めてから、死ぬ気で努力してきた。
七年間もだ。
七年間もの間、修行に修行を重ねて、人体の限界を超えた。
自らを死ぬほど追い込み、時には自分が壊れてしまいそうな事もあった。
もうやめたい。
諦めてしまいたい。
そう思う事もたくさんあった。
それでも、俺はやり遂げた。
十五歳という若さで途轍もない力を手に入れた。
だからこそ、この結果に満足出来なかった。
魔力という、生まれつきのハンデによって、トップを逃してしまった。
「理不尽だッ!」
俺がそう叫ぶと、試験官も同じように叫び返す。
「仕方ないだろ! ガキじゃねぇんだから喚くな!」
最初は敬語で喋っていた彼女も、いつの間にか口調が荒くなっていた。
納得しろと言わんばかりに俺を睨みつける。
だが、納得なんて出来るわけがない。
この理不尽に屈するのを認められない。
結果を受け入れられない俺は、この後十分間抗議し続ける。
しかし、まだ後ろに結果発表を待つ受験生が大量に控えており、抵抗虚しく追い出されてしまった。
最終的に、結局俺は学年最下位で、Fクラスという、一番下のクラスからのスタートとなった。
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