第33話 非常事態
1階層で人目のないことを確認してからスルメイラをカードに戻し、俺は森雪さんをおんぶしたままダンジョンの入口近くまで歩いた。ミノタウロスとの戦いの時にカードに戻したのは森雪さんにやり方を教えてもらったからだ。
戻れxxxと、戻れ+ファミリアの名前を告げるだけであり、どうやら聞こえなくてもできるらしい。検証しないとだけど、見えないところからでもいけるのか分からない。
まだ昼過ぎだったし、彼女が歩ける状態じゃなさそうなのでバス停までそのままおんぶすることにした。
「ごめんね、銀治君・・・本当に申し訳ないわ・・・」
森雪さんが申し訳なさそうに背負われたままつぶやく。
「いや、全然気にしなくてよいよ。これくらい平気だから。それにイレギュラーが起こったんだから仕方がないし、何より軽いって!」
俺は笑って答えたが、背中と言うか、首周りに感じるぬくもりがまた気になり始める。でも、スルメイラがいないから少し安心だ。
バス停に着いてバスを待つ。10分ほど待つようだ。
バスに乗ってから3つ先の停留所で降りる予定だ。普段なら俺は自転車か歩くのだが、森雪さんがいるからバス一択だ。
おんぶは流石に目立つから、肩を貸してバスに乗り込むと森雪さんを座席に座らせた。まだダンジョン探索をする装備のままの俺たちを、またまた乗り合わせた同じ学校の生徒にちらっと見られたけど、今は気にしていられない。
バスを降りた後、近くのファミレスで昼食をとることにした。3つ先で降りたのはこのためだったりする。まだ緊張感が残っているけど、森雪さんも少し元気を取り戻してきた様子だし俺もようやく一息つける。
家に帰る時には普通に歩けるようになっていた方が良い。
既に回復魔法を使っており、後2、3時間程で回復するから、時間調整も兼ねている。
「銀治君、今日は本当にありがとう・・・。もし銀治君がいなかったら私・・・」
森雪さんが感謝の言葉を口にするが、俺は照れくさくて適当に話題をそらそうとした。
「いやいや、俺も驚いたよ。あのミノタウロスが1階層に現れるなんて、普通じゃないよね。」
・
・
・
気の利いた話ができず、主に先ほどのダンジョンでの話を振り返りながら食事をした。
ファミレスで昼食を終えた後、2人でギルドに向かう。
その頃には何とか1人で歩けるようになっており、再びバスに乗った。
ギルドに着くと担当の水木さんのところに顔を出す。ミノタウロスの魔石とビキニアーマーを持って鑑定を依頼するが、俺たちがギルドに着くと水木さんは少し驚いた顔をして出迎えてくれた。
「市河さん、今日はどうなさったんですか?他の人と一緒って森雪さんね。それはまた、珍しいものをお持ちですね」
彼女が目を丸くする。
「いや、実はちょっと大変なことがあって・・・この魔石とビキニアーマーを鑑定してもらえますか?」
そう言うと俺は魔石とビキニアーマーを渡した。
水木さんが魔石を見た瞬間、その顔色が変わった。
「こ、これは・・・ミノタウロスの魔石ですか?7階層のボスをまさか2人で倒したの?」
「いえ、それが1階層を探索していたら、2階層の階段を上がってきたんです。それを倒したらビキニアーマーをドロップしたんです」
「ちょっ、ちょっと待ってください。私、聞き間違えたかしら?今1階層で手に入れたと聞こえたのですが?」
「水木さん、確かに1階層に現れ、銀じゃなく市河さんがあっという間に倒したんです」
「はい、階段を上がってきたのを見ました。ですが既に弱っていたと思います。そうじゃなければあんなに簡単に倒せなかったと思います」
「なんてこと・・・ちょっと待ってください、すぐにギルドマスターに報告してきますから!」
俺は確かにミノタウロスは怪我をしていて弱っていると、戦い始めた時になんとなく分かっていたが、倒せたのは装備のおかげであることを知るのは後のことだ。
水木さんは珍しく机の角に体を打ちイタタタとうめき、さらに床に置いてあった物に躓いたりと、慌てており、珍しい姿を見た。
俺たちはその後水木さんに案内されギルドマスターの部屋。
そこで事情を説明することに。ギルドマスターはミノタウロスが1階層に現れたことに驚き、さらに魔石が赤黒い『黒魔石』だとわかると急に立ち上がった。
「緊急事態だ!Aランクのハンターを今すぐ呼べ!この魔石は・・・危険だ・・・」
緊急事態だと叫んだが、ギルドマスターが怒鳴るように水木さんに他の指示を出していた。
少し待った後ビキニアーマーについても鑑定が行われた。スルメイラが言っていたことに少し誤りがあった。どうやらこのアーマーは意思の強い者が着ると意思が弱くなる性質を持ち、逆に意思の弱い者が着ると意思が強くなるという特殊な効果があるらしい。
また、防具としてのレア度は10段階中6だそうだ。武器や防具のレア度は1から10に分類され、10が高く、億超えの値段がつく。6だと百から数百万円ほどになるらしい。
また、ビキニアーマーのビキニ部分以外にも鎧を着ているような効果がある。一般人が鉄製のロングソードで全力で打ち付けても余裕で跳ね返すらしい。
「森雪さん、これ・・・君にぴったりかもしれないよ」
俺は少し照れくさそうに言った。
「そ、そんな・・・私にこんなものが・・・」
森雪さんは少し顔を赤らめながら答えたが、鑑定結果には納得していた様子だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます