11日目 テーマ:錬金術

深夜にラジオを聴きながらぽちぽちと文章を書いていると、数年前に恋人に言われたことを思い出す。君がやっていることは錬金術と相違ないね。この言葉がずっと耳にこびりついている。はじめは、悪口だと思った。あとから聞きなおしたら、ありふれたものから貴いものを生み出す行為がまるで錬金ということらしい。たしかに、言葉は多くの人が持っているありふれたものだけれど、扱う人によって形を変えて何か別の意味を持っていく。それは恋人が言うように、錬金術なのかもしれない。ぼんやり光る画面に文字が連なっていく。ただの文字の連なりだったものは誰かの居場所を作る言葉になり、誰かの人生を支える文章になる。貴いものかはわからないけれど、今日もぽちぽちと文字を練っていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る