第139話 【実地試験】その②

イチロイドが実際に指揮をとり、戦闘を行うために剛志が課した制限は、使用するゴーレムを剛志が初めてボス部屋に入った際のものと同じにするという内容だ。


剛志自身もそれで経験しているため、違いなどが分かりやすいというのもあるが、この時点での戦力では正直強すぎるくらいなので、最初ということもありイチロイドへのハンデは少なめにするという意味もある。


そのため、剛志が今回召喚したゴーレムたちは次のようになる。

サンドゴーレム×2

ミニサンドゴーレム×28

ミニウッドゴーレム×18


「じゃあ、イチロイド。これでやってみてくれ。」


「『かしこまりました。』」


そう言って、剛志に向かって頷きながら了承したイチロイドは、ずんずんとボス部屋の中にゴーレムたちを入れていってしまった。このまま外にいたらボスが出てこずに進まないため、剛志たちも一緒に中に入り、イチロイドたちから少し離れて観察する。


この地下9階層のボス部屋で出てくる魔物は、普通のゴブリン7体、ゴブリンリーダー2体、ゴブリンコマンダー1体の構成で全10体。それらが出てくるのを確認し、なんだか懐かしい気持ちになっていた剛志を置いていくかのように、ボスたちが出てきてすぐ、イチロイドの指揮するゴーレムたちは動き出した。


その動きは、イチロイドのベースになっている一郎の記憶からか、剛志が一郎たちと作り上げてきた動きにぴったり合っている。二体のサンドゴーレムがツートップで前進していき、それに追従する形でミニサンドゴーレムたちが全く同じ動きで並びながら前進していく。そしてその後ろにミニウッドゴーレムたちが並んで進んでいく。


今回は剛志の周りに護衛で残すことはなく、全員一斉に攻撃に回っている。


このデジャヴのような光景を確認した剛志は、懐かしく感じるとともに今回も負けることはないと確信した。


しばらくして、いつもの剛志の指揮のもとの動きのように、とにかく数の暴力で終始ゴブリンたちを圧倒したイチロイドは、そのままあっさりと勝利してしまった。


「剛志、さすがに今回のはオーバーキルすぎるぜ。こんな戦力差だったら馬鹿でも勝てると思うぞ」


剛志の作戦だと口をはさむのを控えていた臼杵だったが、さすがに何の経験にもならなそうな蹂躙をしたイチロイドを見て、思わず口を出す。


それに対して剛志も笑いながら返事を返す。


「確かにそうだね。今回は俺が実際に初めてここのボス部屋に挑んだ時の戦力を再現したんだけど、さすがに戦力過多すぎるか。次はもう少し減らすことにするよ。」


「はあ⁉ お前この階層の段階で、すでにこの戦力だったのか⁉ …マジかよ、そりゃあれだけ危機感薄いわけだ。これじゃ命の危険なんか、ほとんどないようなもんだしな…お前の抜けてる部分の理由が何だかわかった気がするぜ」


「ん?どういうこと?」


あまり理解していないような剛志に、ため息をつくだけで返事をするのもめんどくさくなった臼杵は、剛志の返しは無視させてもらうことにした。


剛志は、そんな臼杵の反応に一瞬不思議そうにしながらも、まあ別に良いかという感じでイチロイドに話しかける。


「イチロイド、今回は特に問題なかったな。次以降はもう少しこちら側の戦力を下げて戦ってもらおうと思う。どこまで戦力を落としても戦える?」


「『はい、そうですね。サンドゴーレム2体、ミニサンドゴーレム10体、ミニウッドゴーレム5体で問題ないです』」


と、自分で考えて結論を出してくれた。そのためそれから少し休憩などで時間をつぶし、今度はイチロイドが言った構成でボス部屋に再挑戦することにした。


敵は前回と同じ、違うのはこちらの戦力だけだ。前回に比べ、約半分程度の戦力になっている。もしもの時は剛志たちが入ることでどうとでもなるため、一旦今回はやらせてみる感じだ。


先ほどまでの圧倒的な戦力差ではなく、今回は少しイチロイド側が多いだけで、ミニサンドゴーレム単体とゴブリンで言うとゴブリンの方が若干強い力関係なので、単純に戦ったら負けてもおかしくない。


そんな中イチロイドの指揮で動き出したゴーレムたちは、まずミニサンドゴーレムが最前列に横一列で隙間なく並び、ゆっくり進んでいく。その後ろを歩くように進むサンドゴーレムとミニウッドゴーレム。そしてゆっくり近づきながら、向こうから来るゴブリンたちの攻撃に合わせるように迎え撃つゴーレムという構図が出来上がった。


ミニサンドゴーレムは防御に徹するようで、体をなるべく丸めて攻撃を受け切る。そのタイミングでミニサンドゴーレムに守られていたサンドゴーレムがミニサンドゴーレムの頭越しに敵のゴブリンに対しパンチを繰り出す。


サンドゴーレムの強烈なパンチを食らったゴブリンは吹っ飛び、そのまま動かなくなった。その一方、ミニサンドゴーレムに守られている形のミニウッドゴーレムは、足元から石を拾い上げ、全力でゴブリンめがけて投擲を始める。


石が顔などに当たったことでうろたえるゴブリン。その隙をつくようにミニサンドゴーレムが一歩前進することで、はねのけられて尻もちをつくゴブリン。ここまでは順調だ。


しかし、相手はゴブリンだけではない。その上位種のゴブリンリーダーとゴブリンコマンダーもいる。そいつら上位種は、ミニサンドゴーレムの全身を押し戻すことで逆にミニサンドゴーレム布陣に穴をあけることに成功する。


それを見ていた剛志たちは、「あっ」と皆一様に心配の声を漏らしたくらいだが、心配することはなかった。


敵の上位種の動きを予測していたイチロイドは、すでにミニサンドゴーレムへの前進指示のタイミングで、敵上位種の前にはサンドゴーレムたちを移動させ始めていたのだ。


そのためミニサンドゴーレムの壁を突破してきたゴブリンリーダーとゴブリンコマンダーに向かって、助走をつけて走っていたサンドゴーレムたちの強烈な体当たりが炸裂する。


サンドゴーレムは、巨大な砂の塊なので、かなりの質量がある。そんな物体の強烈な体当たりは、敵上位種3体に大ダメージを与え、戦闘継続を難しくさせた。


この一手が決め手となり、あとは弱ったゴブリンと上位種3体を冷静に攻撃していき、しばらく経ったところで問題なく勝利した。


「おお、思ったよりも危なげなく勝ったね。これだったら十分戦闘に使えるんじゃないか?」


剛志が、イチロイドに感心してそう言うと、同意するように臼杵、万葉が頷いた。


そしてこの一連の流れを確認していた東雲教授も同意してくれた。


「本来はこんなに簡単にことが進むわけではないのだが、今回のイチロイドの件は特殊だな。まだまだこれから学ぶべきことは多くあるが、実際に意思の疎通ができるという異例のゴーレムのため、すでに十分なレベルにはなっているとみて間違いないね。あとはここから成長させていくしかないかね」


そんな東雲教授の発言を聞いて、表情はないはずなのにどこか自慢げなイチロイドは両方の拳を体の前でたたき合わせ、そのあとガッツポーズのようなジェスチャーをして剛志たちをあおってきている。


このように少し調子に乗っているような動きをするのは、剛志のイメージなのかどうか。その謎は答えが出ない類なのかもしれない。


唯一つわかったことは、イチロイドは口調はおとなしいがジェスチャーは割とうるさいということだ。



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