第19話 最近に触れる
「ぶいちゅーばー?新しいビジュアルバンド?」
「ヤタラス……あなた本気で言っているのですか?」
リブランが珍しく真顔でいるから何かと思いきや、急に冷めた目を向けられた。
「え、はい………知らないからしょうがないと思いますが、一体それは何ですか?」
「まぁー、いわゆる二次元のキャラクターを演じる人が配信をする動画を見る娯楽です。」
「なるほど、今時はそんなものが………」
「ASが現れる前からありましたよ?」
その言葉に場には沈黙が流れた。
「そうか……………それでそれがどうしたんだい?」
「それに新しくデビューした人がすごいって話題なんですー。」
「へぇ。」
「興味なさすぎですよー。とりあえず、これを見てくださいー。」
リブランがスマホを操作してこちらに見えるように置いた。
「どれどれ。」
そこには、ピンクを基調にしたフリル付きの服と腰巻きマントをつけたメガネの女性が動いてる動画だった。
「どうですか?」
「どうですか?って言われても、これは何をしてるんだい?」
僅か数分の動画だが、いまいちピンと来ない。
「これは、ヒーローそれぞれにぴったりの変身ポーズを考案してこうやって公開してるんです。
そして、これを見たヒーローの子達が本人verとして投稿してかなりバズってるんです!」
「はぁーバズる…………」
「ヒットしたってことですー。」
「あぁ、なるほど。」
難しいな………
「にしても、この……CGかな?」
「違いますー3Dモデルですー。」
すぐさま否定された。結構食い気味で。
「えっと、それを使ってこの人が身バレ防止してるってことかな?」
「基本はそうですがーこの人は中の人が複数いるって明言してるので、それを個人に統一するためではないでしょうか?」
「う?ん……なるほど。」
「中の人は演じてる人のことです。こちらは個人勢なので、その中の人達が協力して作ったんだと思います。」
「複数なのに個人………?」
「……もういいですーとりあえずヤタラスの変身ポーズも投稿されてるのでそれを見て出来るようになったら教えてくださいー私が撮影しますのでぇーー。」
呆れられてしまった。
それに、俺のことが相当信用できないのか、俺のスマホを取り上げ、その例の動画の画面にされてしまった。
「動画の見かたは分かりますよね?」
「それはさすがにね。しかし、こんなことして良いのかい?釜森長官に怒られるんじゃ………」
業務中に遊ぶんじゃないと苦言を申し上げられてしまう。
「いえー?これは釜森長官のご指示ですぅー。」
「え?そうなのかい?」
あの釜森長官が?こんな金にならないようなことを!?
「ありえぬ………」
「ヤタラスー?おかしくなっちゃいましたかぁー?」
「いや、すまん。取り乱した。」
しかしあの釜森長官がかぁ。子どもに夢を与えるとかそんな夢見がちな性格ではないし、これをして戦士をさらに人気者にしてグッズ売り上げを上げるとかそんなところだろうか?
俺がうんうんと唸っていると、リブランが近くに寄ってきた。
「実はこれは内緒なんですがぁー」
リブランが口を近付けてきたので、こちらも耳を寄せた。
「ヒーローが再現した動画、本部の公式チャンネルってことになってますが、再生回数の収入は釜森長官に入ってるらしいです。」
「………はぁ?それって……」
「はぁーい、お静かに、ですー。」
良いのだろうか………それって…………
まぁ、良いか………給料は十分貰ってる?し………
一先ず隊員装備を着用し、動画通りに身体を動かす。鏡じゃないから後ろを振り向きながらポーズを確認するのはかなり大変だったが、なかなか貴重な体験が出来たと言える。
しかし、俺のポーズはあまり動かなかったからこそすぐに出来たが、ロウマのポーズはアクロバティックすぎてちょっと引いた。
分かりみ深子さん生身の俺より身体能力高いて………
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