第37話 比較!?寝癖!?ビーフシチュー(後)!
3時のおやつは、アップルパイにした。ビーフシチューを作っていたので洋菓子が食べたくなり、一番初めに頭に思い浮かんだのがこれだった。
「外がサクサクしていると思ったら、中に甘く煮詰めた果物が入っているのね。この果も煮詰めすぎていなくて、シャリッとした歯ごたえがしてとてもいいわね。」
「はい!それにこの果物にある酸味が甘さを更に引き出してます!ビーフシチューを作っているのを見ていたらお腹が空いていたんですが、食べ応えも凄いです!」
皆ずっといい匂いを嗅いでいたからだろう、いつもよりも少し多めの3時のおやつになってしまった…
大丈夫?ちゃんと、夕食入るよね?
………
……
…
3時の休憩も終わり、料理の再開をする。
「休憩もしたし、ビーフシチュー作りを再開するね。ガルニチュールの1つとして揚げライスボールを作っていくよ。」
炊いたご飯を小さく丸めて衣をつけて揚げたものを作るのだが、中に具を入れるか入れないかが問題だ。さらに、ごはんに味を付けるか付けないかと言うのもある。ビーフシチューにはシンプルな方が良いと思っているが、思わずといった組み合わせがヒットすることもある。なので、チーズをカマンベールとモッツアレラの2種類包んだものも作ってみることにする。ケチャプライスなども作りたかったが、あまり種類を多くし過ぎてもアルエ以外食べきれないので、ノーマル以外はチーズ入りのみだ。
チーズをそれぞれ包んだものとシンプルに塩で味付けしたものを丸め小麦粉、溶き卵、粉々に砕いたパン粉の順に付ける。中に火を入れる必要はないので衣をカリッとさせるだけだ。170度の油でじっくりと全体がきつね色になるまで揚げる。揚げたライスボールを網付きバットに移し油を十分切ったら、他の物と一緒に時間経過の遅い箱に入れて保存しておく。
まだ、ビーフシチューを濾すまでには時間がありそうなのでブロッコリーとインゲンも茹でてしまう。
ブロッコリーは、切る前に酢水の中に逆さに入れてじゃぶじゃぶと軽く振りながら洗う「酢水洗い」を行う。ブロッコリーの表面には油の膜があり水を弾いてしまうため、流水で洗ったとしても汚れはほとんど取れないから注意だ。また、切り分けてから洗うとビタミンC等の栄養が流れ出てしまうため切る前に洗う方が良い。洗ったら、 小房毎に切り落とし一番上の大きな房は6等分にしておく。ブロッコリーは、緑のつぼみまで包丁を入れてしまうとつぼみがバラバラになってしまう。そのため、茎に切り込みを入れて手で裂くのがポイントだ。大きな茎が残るが、ここは周りの硬い皮を剥いて白い芯の部分だけにする。これを5㎜幅位で斜め切りにする。ブロッコリーは、扱いが本当に面倒くさいよね…
インゲンは、塩を振り板摺をする。その後、ヘタを折り縦にある筋を取る。
インゲンは2分茹でた後、氷水に軽くさらしてからキッチンペーパーで水気を取る。その後、ブロッコリーを3分塩茹でにする。ブロッコリーは、茹でた後に水にさらすと水っぽくなってしまうので水気を切るだけだ。
ガルニチュールとして考えていたものは全て作って保存箱に入れてしまったので、後はビーフシチューを仕上げるだけだ。
しかし、これでもまだ煮込む時間があるので、揚げライスボールに使わずに余ったごはんでおにぎりを握る練習を2人にしてもらった。塩水で手を濡らしてから更に塩を手に付けておにぎりを三角の形にしてもらう。夏場などで塩水ではなく水を使って手を濡らすとおにぎりが駄目になりやすいので、常に塩水を使うことを心掛けた方が良いと僕は思っている。ガチガチに握るのではなく形を保つギリギリ位でフワッと握るのが美味しくなるコツだ。固いおにぎりは本当に美味しくないからね。
「2人が作ってくれたおにぎりは、明日の朝食にしよう。3合分近くあるからおかずを多くすれば、アルエが沢山食べてもお腹いっぱいになるだろうからね。」
「明日の朝ですね!楽しみです!それと、いつも食事が美味しいのでたくさん食べちゃうのは仕方ないと思います!」
「ははは。アルエが美味しそうに食べているところを見ると僕も嬉しくなっちゃうんだよね。だから、これからも沢山食べてくれると嬉しいな。」
おにぎりを作り終わったあたりで、ビーフシチューの煮込み時間もいい具合になって来たので仕上げに入る。
「これから、最後の仕上げに入るよ。丁寧にソースを濾していく作業だね。ここをどれだけ丁寧に行うかでソースの滑らかさが変わってくるから、一番大変で一番手抜きができないところだね。」
お肉とガルニチュールを取り出し濾し器でソースを濾していく。濾し器に残った野菜には、まとめてハンドブレンダーを使う。それを再度濾し器に掛け野菜の旨味を余すところなく使っていく。これを何度か繰り返しサラッとしてツヤあるソースに仕上げる。濾している間に冷めたソースを再び温めてから火から下ろす。一応ここで味見をして塩、黒胡椒で調整しておく。一口大に切ったお肉をソースの中に戻し1時間以上寝かせて味を落ち着かせれば完成だ。
「後は、1時間以上寝かせて味を落ち着かせるよ。食べる時に温め直せば良いよ。それと、ソースを一口食べて時間を置く前と後で比べて確かめてみてね。」
「分かったわ。その時間を置く工程にどの位の違いが出るか楽しみね。」
「はい!確かめます!料理って奥が深いですね!」
「本当そうよね。お肉に味が浸み込むのはソースが冷える段階だと言うのは本に書いてあったのだけれど、ソース自体にも違いが出るのだとしたら奥が深すぎるわね。と言うか、今のままでも美味しすぎるのだけれど…」
「ママの言う通りです!一口食べましたが、このままでもとんでもなくおいしいですよ~!これが、後でどうなるのか本当に楽しみです!」
「それじゃあ、今日の夕食兼試作1号作りは終わりだね。お風呂にゆっくり入ってきてから食事にしよう。」
………
……
…
お風呂から上がり夕食の準備をする。
皆でのんびりと入ってしまい、脱衣所に入ってから出るまでに2時間近く掛かってしまった。今日は、外湯の硫黄泉(緑)と内湯の塩化物泉に入った。塩化物泉は、保湿効果があり湯冷めしにくいのが特徴の温泉だ。そして、意外と知らない人が多いが温泉成分のコーティング効果もある。硫黄泉や炭酸水素塩泉、硫酸塩泉などに入ってから塩化物泉に入ると、肌の乾燥を防いだうえで美肌の仕上がりにしてくれるのだ。そのことを「実は、…」と、お母さんに話すと「これからはどの温泉に入っても、最後はこの温泉に入らなきゃだめね。」と、塩化物泉に入りながら言っていた。
ビーフシチューも2時間以上置いた為か、良い感じに熱も取れている。これを、再度火にかけ底が焦げない様に注意しながらパンを焼いていく。今回は、太く短いタイプのフランスパンであるクッペにした。これを、表面だけカリッとさせるようにする。ビーフシチューのソースを付けて食べるには、外がカリッと中がフワッとしているパンの方が僕は好きなんだよね。
テーブルの用意は2人にもお願いして、ガルニチュール各種の盛り付け運搬や、食器、飲み物などを準備してもらった。ちなみに、今回の飲み物はぶどうジュースだ。
何故ぶどうジュースかって?分かるだろ?ワインの替わりだよ!白いブドウジュースではなく、ちゃんと赤いぶどうジュースにしてあるからね!
焼き終わったパンもバスケットに入れテーブルに持って行ったところでビーフシチューも温め終わったので、これもテーブルへ運んでいく。
ビーフシチューを皿に盛りつけ、ガルニチュールを添えて完成だ。
「ガルニチュールはとりあえず少しずつ添えたから、後は好きなのを各自取って好きな様に食べてね。それと、時間を置く前との味の違いも確かめながら食べて欲しいかな。」
「お肉とソースだけだと真っ黒な料理だけど、野菜とかを添えると凄く綺麗な見た目になるわね。今回は、ガルニチュールが多いから華やかだわ。味も気になるし、早く食べましょう。」
「はい!おにいちゃん!いただきます!」
こちらの世界では、僕が知っている限り食事の前にいただきますという習慣は無い。今のアルエのいただきますは、僕が知っていて心の中でいつも言っているいただきますとは違い僕に対してのみ言ったことは分かっている。しかし、少し懐かしい気分にさせられた。
「なるほど…なんて言えばいいのかしら?スープの角が取れて丸くなった味と言えばいいのか…スープに一体感が出たような味になっているわね。確かにさっきのも凄く美味しかったけど、食べ比べるとこっちの方が美味しいって分かるわね。時間を置くだけでこんな違いがあるなんて、実際に食べないと信じられないわね。」
「はい!さっきとは違って刺々しい美味しさが無くなっています!朝起きてボサボサだった髪が、整えられた感じになっています!お肉も味が浸み込んでいてとても美味しいです!」
アルエが、面白い例え方をする。寝癖が時間が経つことで落ち着くみたいか…言い得て妙だね。確かに、ビーフシチューが時間を置くと味が落ち着くことは寝癖に似ているよ。
「ビーフシチューにガルニチュールは絶対に必要ね。お肉だけだと味が単調になるけれど、これがあることで美味しく食べ続けられるわ。もちろんお肉だけでもとても美味しいのに間違いはないけれど、これが無いと1口目の衝撃を2口目以降で超えることができないわね。味の濃いものだとビーフシチューのソースと喧嘩しそうだから、味の薄い系が良いかしらね?」
「はい!ガルニチュールは、美味しいビーフシチューを更に美味しく食べるためには必須ですね!ブロッコリーやインゲンみたいな味のあまり付いていないものとか、揚げライスボールがわたしは好きです!それと、おにいちゃんが言っていたのはこれの事だったんだって言うのが分かりました!卵です!固くなった黄身にソースを絡ませるととても美味しいです!今回半熟は無いですけど、半熟玉子よりも黄身まで確り火を入れた方が好きだと思います!」
「確かにアルエの言う通りよね。茹で卵の黄身が半熟だとソースと混ざってしまうわ。それはそれで美味しいのかもしれないけれど、卵の味を楽しむためにはこういうソースには黄身は固め一択の様な気がするわ。」
2人の言う通り、こういった洋食は1口目に衝撃を与えられるように作られているので付け合わせは必須だ。食べ終わってからその辺の意見を聞こうと思ったが、お母さんもアルエも食べながらどんどん感想を出してくれる。
食べ終わったら試作1号の感想を出し合って、どんどんブラッシュアップしていこう。
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