第16話 完治!?名付け!?デストロイ!

「……治して頂けるんですか?もう何年も前の傷もあって傷を治すのは無理だと思っていたんですけど…できるなら是非お願いしたいです!」


「“パーフェクトヒール”」


 傷跡の治療の許可を貰えたので、欠損すら治すことができるパーフェクトヒールを掛ける。すると、ドラゴンが淡い緑色の光に包まれ傷が一切ない状態まで完治した。


「…………………………(キョロキョロ)」


「これで大丈夫だと思うけど、まだ痛みがあるみたいなのはある?」


 体が癒されていく感覚に自分の体を確かめながら、傷があった場所などを色々見ているドラゴンに尋ねてみる。この数年間で色々実験をしてみた感じ大丈夫だとは思うが、念のため確認しておいた。ドラゴンには魔法が効きにくく、パーフェクトヒールも効果が薄れるとかあったら嫌だからね。


「すごいです!すごいです!体の傷も今まであった痛みも全部無くなりました!ありがとうございます!ありがとうございます!!」


「よかった。ちゃんと効いたみたいだね。それにしても体の痛みも常に感じていたの?」


「はい…翼や翼の付け根、手足に背中など至る所がずっと痛かったです。でも!でもっ!!今ヒールを掛けて頂いて、痛いのが全部無くなりました!本当に全部痛いのが無くなりました!ありがとうございます!!!」


 体中に傷跡が沢山あったが、傷の後遺症にも悩まされ続けていたのなら食事の前に治療してあげた方が良かったかな?と言葉には出さないが思ってしまった。


「これからは、怪我をしたり何処かが痛くなったりしたら直ぐに言ってね。それと話は変わるけど、君の名前を決めたいんだ。名前は無いって言っていたでしょ?僕達も君を呼ぶときに『君』とか『ドラゴン』とかじゃ言いにくいからね。」


「名前を頂けるのなら是非お願いします!名前はわたしの夢だったんです!ただ…魔物に名前を付ける時に、その魔物の力に応じて相応の魔力を消費すると聞きますけど大丈夫ですか?」


「えっ⁉そうなの?そんな事初めて聞いた…」


「はい。わたしの居た所でも、子供が小さいうちに親が名前を付けるのですが、その時に魔力を消費するって聞いたことがあります。消費魔力によっては死ぬこともあるらしく、だからこそ小さく力も成熟しきっていないうちに名前を付けるのだと…わたしはドラゴンとしては弱すぎたので、恥だと言われて名前を貰えませんでしたけど…」


「へ~~~~今まで名前を付けた事なんてなかったから知らなかった。」


「私もそんな話聞いたことが無かったわ。でも、魔力量の事ならアインなら全く問題ないはずよ!」


 名付けに関する面白い話も聞けたが、お母さんも僕の魔力量を知っているため特に心配はしていなかった。しかし、このドラゴンが寝ている間に、お母さんが名づけを行ってしまったら危なかったかもしれないのか。


 良かった…これは万が一が起こりえた…あぶねぇ…


「じゃあ、お母さんが名付けてしまうと危ないから僕が名付けるね。君が寝ている間に幾つか案を出しておいたんだ。君が、これだって思える名前があったらそれにしよう。まずは『アルエ』。これh…」


「それがいいです!アルエ!アルエです!わたしの名前は『アルエ』です!」


 この名前にどういう由来があるのかとか説明しようとしたら、相当食い気味にそれがいいと言ってきた。そして、この子がアルエという名前を受け入れたとたんに魔力がアルエの方に流れていくのが分かった。ステータスを確認してみると、7×10^12程の魔力がアルエの方に流れたことが分かった。僕の魔力の100分の1の量が流れたみたいだ。アルエの方のステータスも確認してみると、魔力が7×10^12程となっており僕から流れた魔力がそのままアルエの力になったみたいだ。


「わっ?わっ!?わっ!!すごいです!力があふれてきます!」


 アルエは、自身がとてつもなく強化されていく感覚に目を白黒させながら歓喜の声を上げていた。


 でも、こんなにもパワーアップするのか…アルエが言っていた名付けに関する話からすると、名前を貰う側がベースとなった魔力消費だと思っていた。しかし、今回は明らかに僕の魔力がベースとなった消費になっている。


 アルエの知っている名付けと、今回の魔力の消費が違う理由はテイムにあるのかなと思ったが、気楽に実験・検証ができる訳ではないので「こういう事もあるか」と納得しておいた。


「アルエ?なんかとんでもないパワーアップしちゃったね?僕の魔力が100分の1も持っていかれちゃったよ。」


「…ん???あれっ???えっ………わたしの魔力7兆⁉⁉⁉何ですかこれ⁉⁉⁉」


 自分でステータスを確認したらしいアルエが、可笑しなことになってしまった自分の魔力値を何度も見返して愕然としてしまった。


「そうなんだよね…なぜか僕の魔力がアルエに大量に流れちゃって…とんでもない強化になったよね…」


「いやいやいやいやいやいや!とんでもないどころじゃないですよ⁉わたしを虐めていた奴らの魔力は数百万!今までの最高ですら千数百万って言われているんですよ⁉どういう事なんですか⁉」


 なんかいきなりご主人様呼びになっていた。流石にご主人様は気恥ずかしいので名前で呼ぶようにお願いする。


「ご主人様って…僕の名前はアイン。僕の事はアインって呼んでね。お兄ちゃんでもいいよ?それと、魔力の事はよく分からないから気にしないで。」


「アルエ?私はエルザよ。私の事はママって呼んでね?」


 お兄ちゃんは無い?うるさい黙れ。に憧れて何が悪い!それに、お母さんもしれっと自分をママ呼びしてとお願いしている。僕にママって呼んで欲しかったのかな?恥ずかしいからしないけど…


「気にしないで⁉気にしないなんて無理ですよ!」


「でも、実際にどういう事かは分からないからね。どうしようもないから、気にしないでいるしかないんだよ。それよりも、お・に・い・ちゃ・ん。」


「だから気にしないなんて無理ですよ~おにいちゃん...」


 ………良い...おにいちゃんの響きは実に良い...いっその事アルエに人化の魔法を掛けて…


 そんな思考が頭を巡っていると、


「アルエ?私はママよ?ママ、ママって呼んでね?」


 という感じで、お母さんもアルエに自分の呼び方はママだとアピールしていた。


 ………

 ……

 …


 お母さんが、アルエにママと呼んでもらえ「この子可愛いわ~」と一通り愛で終わったので護衛について話してみる。


「アルエ?もう一つだけ先に話しておきたいことがあるんだよね。」


「はい。何ですか?」


「アルエには、これから僕たちの家族として暮らしてもらいつつお母さんの護衛をお願いしたいと思っている。今後、僕とお母さんが一緒に居られない時は、アルエにお母さんと一緒に居てもらってお母さんを害する奴から守って欲しいんだ。」


「つまり!ママを虐めるやつをぶっ飛ばせばいいんですね!任せてください!消し炭にしてやりますよ!シュッシュッシュッシュ」


 お母さんが、アルエの事を心配して危ないことをあまりさせたくないと言っていたので強制をするつもりは無かったが、本人は滅茶苦茶ヤル気になっていた。お母さんを守ってとお願いしたら、シュッシュッシュッシュと言いながらドラゴンの短い手でシャドーボクシングを始めだした。


 しかも消し炭って…それブレスじゃない?そのパンチはどうしたの?


「うん。ありがとう。でも、アルエにお願いしたいのは、お母さんではどうしようもなくなった時の最終手段だから。魔法のスクロールもお母さんに沢山預けるし、基本的には出番はないと思っていいよ。アルエは、スクロールでも対処が出来なくなった時のための保険だね。」


「そうなんでね(ショボーン)...」


 なんで、そこでショボーンとするのだろう?今まで暴力を振るわれ続けてきたのに、荒事は問題ないのだろうか?


「ねえ、アルエ?本当に大丈夫?争いごとになるかもしれないけど怖くない?もし無理をしているならやらなくても大丈夫よ?」


 僕も疑問に思った事を、お母さんが聞いてくれた。


「えっと…?なんで怖いんですか?と言うか、ママに手を出そうとしたらわたしが先にキレてドラゴンブレスをぶっぱなしそうなんですけど?」


「「……………………………」」


 これは、護衛を頼むのは間違えだったか?今のステータスでドラゴンブレスなんて放ったら、街なんて一瞬で消えるんだが…


 これは、アルエがお母さんに懐き過ぎていて逆に凶暴になってしまったか?さっき会ったばかりなのに…


 一瞬でここまで手懐けてしまったお母さんに驚嘆すればいいのか、一瞬で懐いてしまったアルエにチョロいと思えばいいのか、どっちなんだろう?


「よしっ!お母さん?アルエに直ぐドラゴンブレスを撃たないように自重を教えてあげてね?お願いね?」


 こういう時は、お母さんに丸投げしようと思う。まあブッパしちゃったら、その時はその時で考えればいいよね?


「はぁ...分かったわ。アルエの教育は私に任せてね。人間社会での一般常識も教え込んでおくわ。でも、力及ばずになったらごめんなさい。」


「一般常識もお母さんが教えてくれるの?そういうのも本当は、テイムをしたいと言った僕がやらなければいけない事なんだけどね。お母さんに懐いちゃったから、僕よりお母さんの言葉の方が聞いてくれるかな?」


 それに僕だと、お母さんをナンパする奴がいたらブレスの超弱い版なら直ぐに撃たせちゃいそうだし…

『お母さんをナンパする奴⇒デストロイ』は当然だよね?

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