第8話 安心!?苦手!?サッパリ素麺!
結局お母さんは12時になっても起きてこなかったので、昼食の準備を始めることにした。肉体的な疲労よりも精神的な疲労の方が大きいと思ったので、スタミナを付けるためのがっつりしたものではなく、あっさり食べられる素麺にしようと思う。
鍋に昆布と水を入れ弱火で火にかける。本来なら30~60分昆布を水に付けて60℃で1時間位煮出したいが、今回は省略して10分程60℃で煮出すだけにする。小葱、ミョウガを小口切り、長芋を擦り下ろしとろろにして冷蔵庫で冷やしておく。オクラと薄切り豚ロースを茹でる用の水を沸かす。オクラは、下処理として板摺をしてヘタの先端を落とし、ガクの縁をぐるりと剥き、爪楊枝で数か所穴を開ける。この穴開けは、茹でる時はほぼ大丈夫だが、揚げる時やレンジを使う時は破裂する可能性があるから気を付けて欲しい。豚ロースに砂糖をまぶし揉みこんでおく。鍋の水が沸騰したら塩を入れ、オクラを1~2分茹でて氷水に落とす。オクラを茹でた鍋の火を止め、そこに豚肉を入れて火を通す。こうすると、お肉が固くなりにくいのでおすすめだ。豚肉を氷水に落としこれ以上火が入らないようにして、熱が取れたらすぐにざるにあげ、水気をしっかり切る。オクラの水気を取り5㎜幅くらいの間隔で切って冷蔵庫で冷やす。豚ロースには下味を少し付けたいので軽く塩を振り、ポン酢をサッとかけて、これも冷蔵庫へ入れておく。煮出した昆布を引き上げ、火を強くし鍋底から気泡が出てくるまで待つ。鍋底から気泡が出てきたら、火を止め鰹節を入れ2分程おく。その後ざるにキッチンペーパー敷いて濾す。取れた出汁に醤油、味醂を入れて一度アルコールを飛ばし麺つゆを作る。麺つゆが完成したら鍋ごと氷を張ったボールへ入れて粗熱を取り冷やしておく。素麺を茹でるための水を沸かし、沸騰したところで一度火を止めてお母さんの所へ行く。
「お母さん、もうお昼だよ。昼食食べる?それとも、もう少し寝てる?」
お母さんの肩を軽く揺さぶりながら声を掛けると、寝ぼけ眼を擦りながら起き出す。
「お昼食べる?」
まだ寝ぼけているお母さんにもう一度聞くと、最初は理解できていなかった様子だが、ハッとしたようにいきなり目を開け広げ僕に謝ってきた。
「ごめんなさい!今何時!?って、もう12時半!?寝すぎちゃった…アイン、本当にごめんなさい!」
「あはははは。気にしなくて大丈夫だよ。そもそも急ぐ旅じゃないんだし。それにあの屋敷に居たときは、あまり眠れていなかったって知っているから。それだけ僕と一緒にいる時は、安心して眠れていられるってことでしょ?それで、お昼どうする?起きたばかりだし30分位後にする?」
僕は気にしていない事を告げ改めて昼食について尋ねると、起きて直ぐは辛いので30分位後にしたいとお願いされた。朝食、10時のおやつと食べて、移動時間はあまり動かず、転寝したばかりだと流石に直ぐは食べられないようだ。
お母さんは、あの屋敷に居た時自力ではほとんど眠れていなかった。ヘケトに襲われたトラウマから深い眠りに付けなくなり、眠れても直ぐに起きてしまうといった事を繰り返していた。なので、しっかり眠れるように僕がこっそりと弱めの“睡眠魔法”を掛けてあげる必要があった。そんなお母さんが、魔法の力を借りず昨日の夜は9時間近く眠り、今も2時間位ぐっすり眠れていたのを見れて本当に嬉しかった。それだけ僕と一緒にいる事に安心感を持って、リラックスしてくれているということだからだ。
少し昼食を待って欲しいとのことなので、氷に当てて冷やしている麺つゆを冷蔵庫に入れ、盛り付けるお皿は冷凍庫の方で冷やしておく。
昼食までの時間は、お母さんと一緒に料理の本を読み、どういう料理があるか知ってもらい、どれを食べてみたいか等を聞いていた。まずは、専門的な料理ではなく日本の家庭料理が幅広く載っている本を見てもらった。日本の家庭料理は、生、焼く、炒める、揚げる、茹でる、煮る、蒸す等バリエーションがかなり豊富なので、料理を勉強する足掛かりとしては一番いいと思ったからだ。まあ、僕がごはんに合う食べ物が好きだというのもあるが…
お母さんと料理本を見ていたら、あっという間に30分以上たってしまっていたので素麺を茹で始めた。茹で上がった素麺を、キンキンに冷やした氷水でぬめりを取るようにしっかりと洗う。氷水を大量に使うため、日本の家庭では冷水でぬめりを取るようにしっかり洗った後、氷水で締める方がいいと思う。しかし、ここは異世界で氷も水も使い放題なので、最初から氷水を使った形だ。冷凍庫で冷やしておいた底が浅いお皿に薬味なども全て盛り、麺つゆを回しかけ、最後に刻みのりを振り掛けて、薬味いっぱいぶっかけ素麺の完成だ。
「昼食できたよ~。かなり冷たくて食べなれてないと思うから、体が冷えたらこのお茶で体を温めてね。」
素麺がキンキンに冷えているため温かいほうじ茶も一緒に出し、体が冷えすぎてしまわないようにした。この世界の住人は、冷たい食べ物なんてほぼ食べる機会は無いだろうからね。体がびっくりしてしまわないか少しだけ心配だ。
「やっぱり、アインの料理は美味しいわね。それに、この麺料理はツルツルとして食べやすいわ!本当においs…」
お母さんは、一口食べるやとてもおいしいと言ってくれる。そしてそのままパクパクと食べ進めるが、ミョウガを食べた瞬間言葉を詰まらせ、顔を歪めてしまった。どうやら、ミョウガの独特な風味は口に合わなかったらしい。
「ミョウガは口に合わなかったみたいだね。かなり独特な風味があるから、大丈夫かな?って試しに出してみたんだよね。無理しなくていいから、僕の方によけていいよ。」
「(コクコクコクコク!)」
僕が、無理しないで大丈夫だよと言ってお皿を差し出すと、涙目で無言で頷いてから、いそいそとミョウガをよけてくる。ミョウガを全部自分の皿から移し終わったのをしっかりと確認してから、また美味しそうに食べ始めた。今後も風味が独特なものを出す時があるから、駄目だったらその都度言ってと伝えておく。
昼食を食べ終わり食器などを片付け一息ついたので、移動を再開した。お母さんは口には出さなかったが、2時間飛び続けるのは大変そうだった(乗り物酔いの様な状態にならなかったのは幸いだったが…)。なので今日の午後は、1時間移動して3時の休憩、休憩終わりから1時間程度移動して、移動先付近で家を出せる場所を探してそこで泊まろうと決めた。明日からは、10時の休憩前後で1時間、昼食をはさんで3時の休憩前後で1時間程度の移動になると思う。
3時の休憩は、昼食を食べて1時間半も経っていない事もあり、飲み物だけにした。お母さんも、お腹と相談して無理だと諦めたらしい。
その後も移動し、開けて人気のない場所を探してそこに家を出す事にした。3時の休憩後、1時間位移動したので家を出せる場所を探していたが、結局30分近く見つけるのに時間がかかってしまった。
家に入り、まずはサッパリしたかったので、そのままお風呂に向かう。お母さんもお風呂に入りたいらしく、今日も昨日と同様一緒に入ることになった。僕は硫黄泉大好きなので3つのうちのどれかに入りたいが、お母さんも僕と同じものに入りたがる。僕と同じだとほぼ硫黄泉になってしまうが、お母さんにはいろいろな泉質を試してもらいたいので、今日は一緒に炭酸泉に入ることにした。ここは長方形の湯船で底が浅く、今ある中では唯一寝湯(体が全て浸かるタイプ)を楽しめるものになっている。二人で隣同士になり仰向けになって寝そべり、お湯に身を任せる。40度と高くはない温度に設定しているのでゆっくり入ることができ、長距離移動で疲れた体と心をリフレッシュさせてくれる。この解放感を得たいがために、今日は自身に“ヒール”も“リフレッシュ”も使わなかった。仕事から帰ってお風呂上りに飲むビールを楽しむために飲み物を我慢する方なんかには、この気持ちがすごくよく分かると思う。
温泉に入ってリラックスした後は、休憩室にあるマッサージチェアでとどめだ。マッサージチェアの長時間の使用は逆効果になるため自動で15分で切れるように設定してある。
「寝ちゃっても大丈夫だからね。夕食の時間になったら起こしに来るから。逆に僕が寝ちゃったら食事の時間が遅くなるかもしれないから、そうなったらごめんね。」
「うん。わかったぁ…」
昨日は使っていなかったマッサージチェアを体験し、温泉効果と相まって寝落ちする寸前のお母さんに伝え、僕も完全に身をゆだねる。
少しウトウトしていたが、午後6時30時を過ぎてしまったので体を起こし夕食を作りに厨房へ向かう。ちなみにお母さんは、完全に寝ちしていたので、体が冷えないように毛布を掛けておいた。
今日の夕食は、ガーリックバタートーストとチキンポトフにしようと決めた。ポトフは簡単かつ比較的短時間で作れ、野菜もお肉もバランスよく食べれる美味しい料理の筆頭候補の一つだと思っている。お米に関しては、お母さんにお箸を使う練習をしてもらいつつ少しづつ出す頻度を上げていく予定だ。
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