クロユリ
@utagekotobuki
第1話
恋は呪いなんだよ。いくら経っても初恋を忘れられない。元カノ、元カレを忘れられない。好きだった思いを忘れられない。忘れられなくて縛られちゃうの。その恋に
今日は中間テスト返却日。
「ねぇねぇ蒼葉!今回の中間テスト、私の方が点数良かったら恋人になってよ!」
「貴方が私にテストの点数で勝てる確率は0に等しいです。なのでもういい加減諦めてください」
「ねぇ〜お願い!じゃあお願いひとつ聞いてくれるだけでいいから!」
「もううるさいですね。分かりましたよ。お願い1つですね?結婚、恋人になる以外ならなんでも引き受けますよ」
「今日も仲良いねぇ…」
「でしょ?」「やめてください仲良くないです」
「も〜蒼葉も素直じゃないなぁ…もうそろそろ結月の想いに答えてあげたらいいのに…」
「嫌です。ていうか、答えてるには答えてるんです。無理だと。天乃さんがいつまでも諦めてくれないだけです」
「あっ!ちょ!どこ行くの蒼葉!」
「まだ時間があるので図書室まで」
「ちょっと待ってよ〜!」
蒼葉と結月は図書室に向かって歩いていく
「相変わらず冷たいなぁ蒼葉は」
「でもそれに着いてく結月も大概だよね。Mなのかな?」
「いや、あれも愛情表現だと思ってるだけでしょ。よく飽きないよねぇ…」
その日の放課後…
「ねぇ!蒼葉!点数!どうだった?!」
「…5教科合わせて475です」
「やったぁぁ!!私、480!勝った!よし!結婚しよ!」
「だから、それ以外って言ったでしょう?!」
「2人とも普通に頭はいいんだよなぁ…」
「ねぇ…ほんと…」
「じゃあ、結婚とか恋人とか頼まないからこの後一緒に帰ろ!その時にお願い伝えるから!」
「…分かりました。いいですよ」
「ほんと?!やった!」
帰宅途中…
「ふんふふ〜ん」
私の隣で結月が楽しそうに鼻歌を歌っている。帰り道にお願いを伝えると言っておいてあともう少しで家に着いてしまうというのに一向に話し出す気配がない。仕方が無いのでこちらから聞いてあげよう。
「それで、お願いってなんですか?」
「んーとね…んー…じゃあ、私とキスしてよ」
「へ?」
思わず変な声が出てしまった。
キスってあの愛し合った異性の間でするあのキス…?
「いや、私たち女同士ですよ?」
「え?女同士でも普通にするでしょ」
「いや、確かにしますけどいや、でも…」
「なに?お願い聞いてくれるって言って聞いてくれないんだ?約束破るんだ〜あー、蒼葉ちゃん約束破っちゃうんだ〜」
私はつい挑発に乗ってしまった。そう別に意味があった訳じゃない。
私は結月に強引に口付けをした。黙らせる意味ともう私を諦めてもっと他のいい人を探して欲しいという意味を込めて
何分ほどそうしていたのか。結月は驚いたのか目を見開いたまま固まってしまった。当の私も自分の行動の意味がわからずそのまま固まってしまっていつ口を離せばいいのか分からなくなってしまった。
私の息が苦しくなってきたので口を離した。結月はと言うと慣れているのか息一つ乱れていない。
「結月…?」
「っ!…蒼葉、ちょっと今から私の家に来ない?」
「え、なんで…」
「いいから!」
強引に腕を掴まれ手を引かれる。怖い。結月が嬉しそうにそして狂気的に笑っているのを私は見逃さなかった。
結月の家…
「蒼葉。さっきのって…?」
少し興奮しつつも冷静を装っている振りをしながら結月は聞いてくる。
「さっきのって…あぁ、キスのこと?とっとと終わらせたかったから」
こちらも動揺していることを悟られないように淡々と言った。
「あ、…あはは。、そうだよね。 あー、ごめんね!こんな強引に家まで引っ張ってきちゃって!家まで送るね!」
「え、あ、いや別に…お気づかいなく…」
「いやいや!送らせて!バカみたいな勘違いして勝手に舞い上がっちゃってた私が悪いから!」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…」
「うん!そうしてくれると助かる!」
悪い事をしたな…と思いながらもこれでもしかしたら私のことを諦めてくれるかもしれないとも思った。そしたら私なんかよりももっといい人を見つけて結月は幸せになれる。でもなんでだろう。そう考えると少しだけ胸が痛かった。
後日…
結局あの後は結月に家まで送ってもらった。帰り道は少し気まずくて一言も話さずに帰った。正直今日顔を合わせるのも怖い。
「あ、蒼葉…」
聞き覚えがありすぎる声が後ろから聞こえてくる。いつも通り。そういつも通り接するんだ。昨日のことなんてなかったかのように…
「結月?おはよう」
「え…外で名前…」
「え?あ…」
「……おはよう!蒼葉!」
結月はクスッと少し悲しそうに笑ってこちらを見てからそう挨拶してきた。私は…
「…おはようございます。天乃さん」
その笑顔にまた甘えてしまった。
「うん!おはよ!」
こういう明るく慰めてくれるところが…
いや、もうダメなんだ。私が結月を縛り付けるのは。
あの日から決めたんだから。
学校はいつも通りだった。私にずっと愛を伝えてくる結月とそれを呆れながら見守る周りのクラスメイト達。
全てがいつも通りでまるで昨日のことなんてなかったかのように進んで行った。
なのに…
昼休み。私たちの学校はお昼休みになるとそれぞれお弁当を持って好きな場所に食べに行く。私はいつも通り1人で中庭で食べようと思っていたのだが…。
「ねぇねぇ!蒼葉!一緒に食べよー!」
なぜか結月に連れられて夏の暑い屋上にいる。
「暑いじゃないですか…」
「……今は2人だから敬語、外してくれない?」
「え、あ…分かった…」
「ふふwなんか昔に戻ったみたいだね」
昔…あまり思い出したくない。だから私は何も言えなかった
「それよりさ、蒼葉、昨日のことだけど…」
その瞬間体が強ばったのがわかった。
「なに…?」
「蒼葉は…私の事嫌い?」
「え…」
なんだろうこの質問。何かを試されてる?
「どちらでも、」
「だめ。答えて?」
「…嫌い」
少し迷って私はこう答えた。
「そっか。なんか少し安心したかも」
「なんで?」
「んー?言わな〜い」
この後は普通の話題に戻り、お弁当を食べ終わったので少し雑談したあと教室に戻って5限目の準備をした
放課後
今日は結月と…名前は覚えていないがいつも私たちと仲良くしてくれる2人と一緒に何駅か渡ったところにある新しくなったショッピングモールに行くことになった。
「ねぇねぇ!蒼葉!これめっちゃ蒼葉に似合いそうじゃない?!」
「え…いやフリフリなのはあんまり好きじゃなくて…」
「いいじゃん!似合うよ蒼葉!」
「蒼葉可愛いもんね〜」
「もう。2人まで…」
「え〜着て欲しいなぁ〜私に着て欲しいやつなんでも選んでいいからさ!お願い!」
「はぁ…もう分かりましたよ。仕方ないですね」
「やった!蒼葉大好き!」
「やっぱり甘いね蒼葉は」
「ね〜」
「じゃあ着てきます。あ、結月にはこれをオススメしますよ」
そう言って私はその辺にあったあまり結月が着たがらないロリータ系の服を進め、試着室に入った。
試着室の外から「なんでもいいって言ったけどさ…似合わないよ…私には…」という声が聞こえてきたのは聞かなかったことにしよう。
それにしてもこんなフリフリのミニスカート…私絶対、似合わないな…上の服もなんかジャラジャラしてるアクセサリーが着いてるし…まあ黒を基調としてるのは結構好きだけど。
そんなどうでもいいことを考えながら着替える。最近あまり眠れない。この前、結月とキスをした時から何かがおかしい。
ふと頭に浮かんできたあの時の風景を忘れるように首を振り素早く着替え試着室を出た
試着室を出ると友達Aと友達Bがニヤニヤしながら待っていた。あ、友達Aと友達Bって言うのは名前が覚えられない2人のこと。
「おー!蒼葉可愛いね!やっぱ!」
「可愛い〜!ね、半額出すから買わない?その服」
「いや、申し訳ないですし、あんまりこんな服着ないので買いません」
「じゃあ全額出すから〜!」
「いや、やめてください。申し訳ないです」
そんな会話をしていると斜め後ろの試着室からカーテンが少し開かれる音がした
「ねぇ…こんな服、似合わないよ…」
そう言いながら試着室からゆっくり出てきた結月。
可愛い
一言目にそう思った。全部私のモノにしたい。そうふと思ってしまった時に私の隣で固まっていた2人がゆっくりと口を開いた
「結月…めっちゃ可愛いね?!」
「もう2人共全額出すからその服着てくれない?!」
はぁはぁと息を漏らしながら近づいてくる2人に少々恐怖を覚えた。そして、なんでこんなに友達Bは払いたがるのだろうかと純粋な疑問が浮かんできた
「いや、だから払わなくていいですって…」と言いそうになった時に視界の端で結月が少し泣きそうな顔になっていることに気づいた。幼馴染の私じゃないと気づけないぐらい小さな顔の変化。眉間にシワが少しだけよって口元が少しだけ歪んでいる。本当にほんのわずかの変化。現に友達AB達は気づいてないみたいだ。…さて、どうするべきか…ここからトイレへ連れ出そうにも今は試着中。着替えてから行かないと警備員とかに捕まりそうだ。でもここで結月を放置しておけばいつか泣き出してしまうのは確実だ。ならば…
「ごめんなさい。2人とも。ちょっとこの服買ってくるので先に他のところ回っておいて貰えませんか?」
「え?!着てくれるの?!」
「はい。買った後私、お手洗いに行きたくて待たせておくのも申し訳ないので先に回っておいてください。後で合流しますので」
「分かった!じゃ行こう!つむぎ!」
「うん!」
あぁ、友達Bの名前、つむぎって言うんだ。まあすぐ忘れるだろうけど念の為頭の片隅に入れておこう。
「天乃さん」
「なに?」
「買いに行こっか」
「…うん」
私は結月の手を取りゆっくりとレジへ向かった。結月が財布を出そうとしてるのを止めて「私が出すからいいよ」なんて言ってしまったのは少しカッコつけすぎてしまっただろうか。
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