第11話 原子爆弾投下

沖縄戦は終わりを迎えたが、アダムスと彼の戦友たちは休む暇もなく、新たな任務に向かうことになった。彼らが直面する新たな任務、それはこれまでの戦いとはまったく異なる性質のものであった。


「アダムス、上層部からの緊急命令だ。重要な任務がある。」サイン大佐が部隊に戻ってくると、アダムスを呼び出した。


「任務ですか、大佐?」アダムスは疲労を隠しきれない表情で応じた。沖縄の激戦から解放されたばかりの彼らに、新たな命令が下されたのは予想外だった。


「そうだ。だが、これは極秘任務だ。」大佐は厳しい表情で続けた。「お前は特別に選ばれた。これから、極秘の作戦に参加することになる。」


アダムスは戸惑いを感じたが、サイン大佐の目が真剣であることから、任務の重要性を理解した。「その任務というのは、何なのですか?」


「原子爆弾を運ぶ特別部隊への編成だ。」サイン大佐は静かに言った。「この爆弾は、戦争を終わらせるための最後の手段として使用される。」


「原子爆弾…?」アダムスの心臓が凍りついた。彼はその言葉の意味をすぐには理解できなかったが、すぐにその威力と恐怖を想像した。「それを投下するための任務ですか?」


「そうだ。お前は、その爆弾を投下する飛行機に乗り込むことになる。」サイン大佐の声には、重い責任がのしかかっていた。「この任務は、我々が直面する中で最も重大なものだ。成功すれば、この戦争を終わらせることができる。しかし、その代償は計り知れない。」


アダムスはしばらく言葉を失った。彼はこれまで多くの命を奪い、多くの命を救うために戦ってきた。しかし、今度の任務は、彼がこれまでに経験した戦闘とはまったく異なる次元のものであった。彼の心には、任務の成功がもたらす結果に対する恐怖と、その背後に潜む罪悪感が渦巻いていた。


「分かりました、大佐。」アダムスはやがて静かに返事をした。「私はその任務を受け入れます。」


「そうか。君を信頼している。」サイン大佐はアダムスの肩に手を置き、彼に力強く頷いた。「我々は、君たちの成功を祈っている。」


その後、アダムスは選抜された他の兵士たちと共に、原子爆弾投下班としての訓練を開始した。彼らは新たな装備や技術を学び、厳しい訓練を受けた。彼らの任務は、歴史を変える瞬間を担うものであり、全てが完璧でなければならなかった。


そして、1945年8月6日がやってきた。任務当日、アダムスたちは緊張の中、飛行機に搭乗した。彼らが運ぶ「リトルボーイ」という名の原子爆弾は、全人類に計り知れない影響を与えるものであった。


「いよいよだな。」テリーが低い声で言った。「俺たちがこれを成功させれば、戦争が終わる。でも…その後のことを考えると、手が震える。」


「俺も同じだ。」アダムスは答えた。「だが、これが我々の任務だ。必ずやり遂げなければならない。」


飛行機が空を舞い、広島の上空に到達する。高度と距離を計算し、アダムスは最後の確認を行った。全ての準備が整い、彼の手が爆弾の投下装置に触れる。


「投下、準備完了。」アダムスが無機質な声で報告した。


「投下まで…3秒。」テリーがカウントダウンを開始した。


「3…2…1…投下!」


アダムスが装置を作動させると、巨大な爆弾が静かに機体から切り離され、ゆっくりと下へ向かって落ちていった。彼らはそれを見送ることしかできなかった。


数秒後、彼らは爆発の衝撃を感じた。振動が機体を揺さぶり、爆発の光が空を覆った。その瞬間、彼らはこの戦争が終わることを知ったが、同時にその代償がどれほどのものかも感じ取った。


「これで終わるのか…」テリーが呟いた。「俺たちは本当にこれで良かったのか…?」


アダムスは答えなかった。彼の心には、言葉にできないほどの重い感情が押し寄せていた。戦争は終わるだろうが、その代償として彼らが背負うことになる罪の意識は、永遠に彼らの心に錆として残り続けるだろう。


彼らが帰還した後、世界中から賛否両論の声が上がった。人々はこの行為を非難し、また称賛した。アダムスとテリーはその後、戦場での英雄として迎えられたが、彼らの心の中には、決して拭い去ることのできない影が落ちていた。


「戦争は終わったが、俺たちはどうなるんだろうな…」テリーが静かに言った。


アダムスはただ静かに頷き、沈黙を保った。彼の心には、戦場で見た無数の死と、広島での爆発が焼き付いていた。彼がこれからどのような人生を歩むにせよ、その錆は決して消えることはないのだと、彼は理解していた。

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