第43話 デートの途中でワイバーン!(食べるだけ)

 三連続デート前半戦の最終日。今日の順番はホムラだ。


 ちなみにこの後のデートの順番だが、ハヤテが、


「それじゃ、残りの順番はクジで決めようよ!」


 なんて言い出し、クジ引きをした結果、ホムラ、レイ、ハヤテ、ヒカリの順番になった。


 待ち合わせをした教会前で待っていると、


「……よう、ハクト」


「おはよう、ホムラ。それで、今日はまず、この辺りを散策さんさくってことでいいんだよな?」


「ああ、そうなんだがな……」


 どうしたんだろう? なんだか今日のホムラは様子がちょっとおかしい気がする。

 様子をうかがっていると、ホムラは突然自分の頭をわしゃわしゃ、っとしたかと思うと


「あー! ちくしょう! うだうだ考えてても仕方がねぇ!」


 なんて叫んだ。

 突然の事にびっくりしていると、ホムラは俺の方を向き


「……なあハクト。まずはちょっと話がしたいんだが、いいか?」


 と聞いてきた。

 よくわからないけど、何か悩みでもあるのかな?


「いいけど、どこかに座って落ち着いて話した方がいいかな?」


「……そうだな。オレがたまに行く喫茶店きっさてんにでも行くか」


 ということで、ホムラの案内で喫茶店に行くことにした。



 お店に着き、お互い飲み物を注文した。

 ちなみに俺はアイスコーヒー、ホムラは追加で何か頼むかと思ったが、コーヒーのみ注文していた。

 ……やっぱり、いつものホムラらしくない気がするな。


「それで、話って?」


「ああ……。実はハクトに対して謝らなくちゃなことがあってな」


 なんだろう?

 いつも急に魔界に連れていくこととか?


 ……そんなわけないか。


「……最初にハクトに会った時なんだが、少し強引すぎたかなってな。特に、いきなり知らない奴の名前を考えろ、っていうのは迷惑だったかなって」


「うーん。確かに急に言われてびっくりはしたけど、嫌だと思ったら断ってたと思うよ」


 それに、その後で魔法を教えてくれたりご飯を奢ってくれたりと、きっちりお礼をしてくれたから、むしろ得したかも、なんてちょっと考えてたし。


「……それとな。ソフィアから異世界人って説明された時、異世界から来たならオレたち魔族と普通に話をしたり、仲良くできるんじゃないか、みたいに思っちまったんだ。だから無意識に、仲良くなろうと行動が少し強引になっちまったんじゃないか、ってな」


  うーん、何となくわかるような、わからないような……。


「これからもハクトと仲良くしていくって考えた時に、最初にハクト自身じゃなくて、異世界人だから仲良くなろうとしたんじゃないかって思うと、もやもやしちまってな。……これは、オレの勝手な謝罪だが、すまんかったな、ハクト」


「とりあえず謝罪は受けとるよ。でも、仲良くできそうな人がいたから積極的に話しかけた、ってだけな気もするけど」


「……まあ、もしかしたらオレの気持ちの問題かもしれんな。なんか、ハクトに嘘をつきながら仲良くしてるって感じがして、落ち着かないっていうか」


 ホムラは、はっきりしないことが嫌って感じなのかもな。

 うん、それもホムラっぽいのかもしれない。


「なるほどな。……そういえば、一昨日おとといアオイと話したんだ。ホムラのおかげで魔皇まこうたちと仲良くなる切っ掛けができたって。だから、むしろ感謝しないとかも。ホムラ、ありがとな」


 そうホムラに答えると、ホムラは照れくさそうにしながらも


「そう言ってもらえると助かるぜ」


 なんて言っていた。


「ということはもしかして、俺と模擬戦をしたいっていうのも、仲良くしたいと思ってとか?」


「いや、最初に近づいた目的はそれだったし、今でも模擬戦はしたいと思ってるぜ!」


「そうなのね……」


 まあ、今までの感じから本気だとは思っていたけどさ。

 ……というか、今でも諦めてないのね。


「ふう。すっきりしたら、なんだが少し腹が減ってきたな。ちょっと注文してくる」


 と、ホムラが何かを喫茶店のマスターに注文した。


 少し待つと、巨大なカツサンドが運ばれてきた。

 ……さっき、腹が減ったのは少しって言ったよね?



「さてと。んじゃ、この辺をぶらつくか。気になった店があれば入ってみようぜ!」


「そうだな」


 ということで、街を散策さんさくすることにした。


 前にホムラと街を歩いたときは、ソフィアも一緒だったな。

 あの時は散策っていうより、どこに何があるかっていう案内がメインだったけど。


 街では出店や飲食店の前を通ると、ホムラがどんな店か、何が美味しかったかなどを説明してくれた。

 本当に、あっちこっちのお店を食べ歩いているんだな。


 ただ、それだけでなく、何故か食料品を扱うお店や消耗品を扱うお店にも詳しかった。


 例えば、


「あの店は仕入れ日の前日に行くのをおすすめするぜ。結構色々なものが割引されるんだぜ。仕入れ日は毎月……」


 とか、


「雑貨を探すなら、まずはこの店をみるといいぜ。色んな種類があるし、値段も比較的安めだからな。それから別の店に行って比較してみるのもありだな。例えば……」


 等々、色んな情報を教えてくれた。

 なんでそんなに詳しいのか尋ねると、


「……皆で集まる時とかは、ヒカリのやつがオレにお使いを頼むんだ。この街には良く飯を食いにくるから、そのついでに買ってたら自然と詳しくなったぜ……」


 と若干遠い目をしながら答えていた。

 他の魔皇に頼むならハヤテも候補になりそうだけど……。

 うん、余計な物まで買ってきそうだな。


 そんなこんなで、楽しく街を歩いていたけど、ふと今何時くらいだろうと近くに会った時計を見てみた。

 そろそろお昼の時間か。あちこちで飲食店の話を聞いたからか、すごく空腹な気がする。


 ホムラも時計を見ると、


「そろそろ昼か。昼飯なんだが、ちょっと行きたい店があってな。ハクトは何か希望はあるか?」


 と聞いてきた。


「今日はホムラに合わせようかなと思ってたから、ホムラの行きたい店で大丈夫」


「そうか? んじゃ、さっそく行くか!」



 ということでお店にやってきた。

 この内装は……


「もしかして、お好み焼き屋?」


 各席に鉄板があるから、セルフでお好み焼きを焼くタイプの店かな? と思ったけど


「それもメニューにあるが、ここは鉄板焼きの店だな」


 なるほど。鉄板焼きって職人が焼いたものを提供する少し高めなお店、ってイメージがあったけど、自分で焼くお店もあるもんな。

 ……いや、内装で間違えそうだったけど、そもそもここは異世界だ。


「とはいえ、今日はお好み焼きが食べたくて来た、ってのはあるが。この前ハヤテが、自分で作って食べたって楽しそうに話していてな。オレもそれを聞いて食べたくなった、ってわけだ」


 この前皆で食事会をした時の事か。

 ……元々は、魔道具の動作を確認するためだったんだけどな。


「というわけで、オレはお好み焼きを中心に注文するつもりだけど、ハクトは好きに頼んぜいいぜ。食べきれなくてもオレが食べるしな!」


 おおう、なんだか頼もしい、気がする。


 メニューを見ると、見慣れたお好み焼きのメニューから、異世界っぽいメニュー、名前を見ても良く分からないメニューと色々あった。

 お、ワイバーンのステーキなんてのもあるのか。


 ……そこそこの大きさで一万円もして、高級肉って感じだな。


「なあホムラ。ここにワイバーンのステーキってあるけど、やっぱりうまいのか? 値段も結構するし」


「おう、かなりうまいぞ。魔界にもいるし、肉以外の素材もいい値段で売れるから、そこそこな頻度で狩ってるな」


 魔物を狩る、とか、素材がいくら、なんて話を聞くと、急に異世界って感じがしてくるな。

 ……もう少し、異世界的な体験ができる場所を探してみよう。


 というわけでそれぞれ食べたいものを注文した。

 

 それと、せっかくなのでワイバーンのステーキも頼んでみた。

 金ならあるんや! ……なぜかいっぱいな。


 注文したものを待つ間、ホムラにちょっとした疑問を聞いてみた。


「俺のいた世界だと、異世界で美味しい肉といえばドラゴン、みたいな物語が結構あるんだけど、この世界はそもそもドラゴンっているの?」


 メニューにはドラゴン肉ってなかったからな。

 ワイバーンでもあれだけするし、高いからお店で扱ってないかもだけど。


「ドラゴンなら魔界にいるぜ。魔物と魔族どっちもいるんだが、その違いは、……あー、そうだな。知性があるかどうかって思っておけば間違いないぜ」


 やっぱり異世界、ドラゴンはやっぱりいるんだな。

 それと、魔物と魔族、どっちもいるって感じなのか。

 ホムラが説明に困っていたし、見分けるのが難しかったりするのかな?


「それと、ドラゴンが進化して人型ひとがたにもなれるようになった魔族もいるぜ。そういったドラゴンは龍人族りゅうじんぞくって呼ぶこともあるな。オレがよく模擬戦をする奴にも龍人族がいるんだが、結構いい勝負ができるんだよな」


 ドラゴンから進化した龍人族なんて魔族もいるのか。

 そして、魔皇であるホムラといい勝負ができるって、かなり強い種族なんだろうな。


 なんて感じで話していたら、さっそ頼んだメニューが運ばれてきた。


 さて、それじゃ焼いていくとしますか!

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