第40話 地魔皇と街行こう

 ベイラとアキナを送り出し、アオイと二人になった。


「このまま解散、ってことでもいいけれど、行ってみたいお店があるんだ。ハクト君さえよければ、一緒に行かないかい?」


「帰ってもやることがないし、それもいいな。それで、どこに行きたいんだ?」


 今日は一応デートって名目だったし、それっぽいことをするのもいいかも。


「ベイラに聞いたけれど、この街にも魔道具の専門店があるみたいだね。一応場所は聞いてはいるんだけど、もしハクト君が場所を知っていれば、案内をお願いしたいかな」


 アキナやイズレと一緒に行ったお店か。

 そこでリンフォンを買ってもらったんだよな。


「前に行ったことがあるし、道は覚えているから大丈夫。それじゃ、さっそく行こうか」


 ということで、魔道具の専門店に向かうことにした。

 お店に向かう途中、


「ところで、何か買いたいものとかあるのか?」


 なんて質問してみたところ、


「いいや。新商品とか、変わった商品がないかを見たくてね。人間界に来た時に、時間があればよく行っているんだ。ベイラからこの街にもある、って聞けてよかったよ。初めて行くお店だし、まだ出会ったことのない魔道具があるといいね」


 と、楽しそうにしていた。

 本当に魔道具が好きなんだと改めて思うな。



 ということで、魔道具の専門店に無事到着した。


「さてと、まずは一通り見て回りたいな。ハクト君は、何か見たいものとかはあるかい?」


「うーん。今は特にないし、アオイと一緒に見て回るだけでいいかな。魔道具について、色々聞いてみたいしな」


「それはまかせたまえ、なんてね」


 と、アオイが少しおどけながら答えた。

 アオイのこういう感じは、ちょっと新鮮かも。



 店内に入り、壁側から順番に魔道具を見て回った。


「ハクト君は知っているかな? この魔道具は本来の目的以外にも使い道があるんだ。例えばね、……」


 なんて、アオイがちょっとした豆知識を教えてくれたり、


「この魔道具は魔界でも生産しているんだ。魔界は場所によって特殊な環境だったりするから、調整機能がついていたり、そもそもその場所に特化して作ったりもするんだ」


 のように、魔道具について色々と教えてもらえた。


 途中、俺のいた世界にあったあの家電は魔道具にはないのかな? なんてうっかり口を滑らせたら、案の定アオイが食いついてきた。

 流石に説明が大変なので、例の魔道具を使ってまた今度教える、ってことにしておいた。


 教えることは別に問題ないんだけど、また前回みたいに大きな利益になりそうだとお金の扱いに困りそうなのがなぁ。


 ……うん、お金が多すぎて困るなんて、元の世界では考えられないな。

 うーむ。何か、慈善事業じぜんじぎょうとかをした方がいいのだろうか?


 そんなこんなで色々な魔道具を見て回っていたら、店を出る頃には夕日が沈みかけていた。

 魔道具について色々教えてもらっていたら、楽しくて時間を忘れていたな。

 

「おや? 結構長居してしまったみたいだね。……うん。もしハクト君さえよければ、ディナーでも一緒にどうかな?」


「せっかくだし、そうしようか。何か食べたいものとかあるか? まあ、そんなにお店を知ってるわけじゃないから、案内できるかはわからないけど」


「少し街を散策しながら、良さそうなお店があれば入ってみる、というのはどうだい?」 


「そうだな。それじゃ、お店がありそうな場所を歩いてみるか」


 と、二人で歩き出した。


「こうして一緒に歩いているのは、デートみたいな感じなのかな? ハヤテからすれば、今日は最初からデート、という認識みたいだけど」


 アオイはこういう認識だし、やっぱりハヤテの考えの方が特殊なだけのようだ。


「そうだったな。俺としては、魔道具のお店を色々見て回るってのも、デートっぽいとは思うけど」

 

「そうなのかな? ……そもそも、デートをする機会がなかったし、しようと考えたこともなかったから、よくは知らないのだけれど」


「……まあ、俺もそういうの全然わからないけどな」


「ん? 私たち魔族はあまりそういうのにこだわりはないけど、人間族は……、ああいや、なんでもないよ」


 べ、別に、好きでデートしなかったわけじゃないんだからね!

 

 ……アオイが話を止めてくれたし、この話はここで終わりだ。うん。


「そ、そういえば最初にアオイに会った時、俺のいた世界にある家電のイメージを共有したと思うけど、何か進展はあった?」


 話を逸らすついでに、テレビやプリンターのイメージを魔道具で共有した後の進捗を聞いてみた。

 少し気になっていたしな。


「うーん。今の進捗は30%、といったところかな? ……そうだね、完成までは、魔道具の詳細は秘密にさせてもらおうかな? その方がびっくりしてもらえそうだし」 


「思っていたよりかなり進んでいて驚いたよ。うん、楽しみにさせてもらうよ」


 魔道具についてはそんなにわからないけど、ミキサーと違ってかなり難しいと思うんだよな。

 流石はアオイ、ってとこか。


「ご期待に応えられるよう頑張るとするよ。……それにしても、ハクト君には色々とお世話になってばかりだね」


「俺としては、元いた世界のイメージを伝えただけだし、そんなに気にしなくてもいいんだけど」


 前も思ったけれど、あんまり自分の成果みたいにするのもなぁ、って感じではあるし。


「それもだけれど、この国の王城でクレアたちと会った時のこと、アキナやイズレ、ベイラと引き合わせてくれたこと、だね」


「それこそ偶然だよ。それに、俺が何かしなかったとしても、アキナとはきっと仲良くなっていたと思うし、それをきっかけに他の人とも仲良くなれたと思うよ?」


「そうかもしれないね。……でも、実際にそれをしてくれたのはハクト君だからね。感謝しているよ」

 

「……うん、そうだな。どういたしまして」


 そういえば、俺がこの世界に来たのは偶然だし、その後色々な人に出会えたのも結局は偶然が重なったものだけど、その切っ掛けになった人には感謝したいもんな。

 

「そういうことなら、アオイたちに会う切っ掛けは、ホムラと出会ったことが始まりだったな。そういう意味ではホムラに感謝だな」


「確かに、そうだね」


 と二人して笑い合った。

 

 そんな感じで会話をしながら街を散策していると、


「ん? ここは前にアキナに連れてきてもらった海鮮のお店だな。転移門の近くにあるから、新鮮な魚を生で提供できる、とか言っていたな」


「魚を生で食べるのかい? 魔界では、一部の種族が生で食べるくらいで、基本的には加熱して食べているんだ。……うーん、これは気になるね。ハクト君さえよければここで食べて行かないかい?」


「ああ、いいぜ! 前に来た時に、気になっていたけど食べなかったメニューもあるしな」


「決まりだね」


 ということで、異世界風? な海鮮料理が食べられるお店に入ることにした。


 前回もそうだったが、食べたことのない海鮮料理が色々あり、今回も大満足だった。

 それに、俺のいた世界にあった料理と似た料理もあり、それをアオイに紹介することもできた。


 食事中、


「それにしても、またハクト君のおかげでいい体験ができたよ。ありがとう」


 と、また感謝されてしまった。


「どういたしまして、だな。喜んでもらえて良かったよ」


 素直に感謝を受け取っておいた。

 教えてくれたアキナには心の中で感謝しておこう。



 会計を済ませようという、という時にひと悶着もんちゃくあった。

 まあ、どっちがおごるるかってだけの話なんだけどな。


 今日は楽しかったから、とアオイが支払いを済ませようとしたけど、デートは男が奢るもの、とゴリ押しして、なんとか俺が会計を済ませた。

 ……ついに、俺が支払いで奢る側に回れたな。


 ということで、本日は解散となった。

 うん、今日も楽しかったな。


 それにしても、今日のデートでアオイとはより仲良くなれた気がする。

 ……明日以降のデートでも、魔皇まこうの皆とも仲良くなれると嬉しいな。

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