第23話 大きくてもショートケーキ?
とりあえず、ショートケーキのイメージと調理過程の様子をイメージして伝えることにした。
昨日、ソフィアの手伝いで予習済みなのできちんと伝えられたと思う。
それと、俺の元居た世界では泡だて器やそれを魔道具のようにしたものが存在し、それを使用して作っていることを説明した。
しかし、パティオさんは完全にショートケーキのことで頭がいっぱいなのか、ほとんど聞いている感じはしなかった。
それどころか、その様子を見たメイドさんからウォーターボールをぶつけられても、
「すぐに作ってくる! 昼食後を楽しみにしてくれたまえよ!」
なんて言って、びしょ濡れのまま去っていった。
今頃、お城の厨房の人が驚いてるんだろうな。
……いや、もしかしたらそれが日常茶飯事で、スルーされてる可能性もあるか。
「というか、パティオさんが作りに行っちゃったけど、どうしよう?」
「
元々スイーツが出てくる前提で来ていたし、問題ないな。
ちらりとソフィアの方を見ると、何となく楽しみにしていそうな雰囲気だった。
「俺はそれで大丈夫。多分、食事の後にショートケーキも出てくるだろうしな。ソフィアもいいよな?」
ソフィアはこくん、とうなずいた。
「よかったのですわ!」
ちなみに、隣の部屋は賓客が来た際に食事を提供する場所になっており、そこで食事会をするみたいだ。
その後はお昼になるまで、ソフィアも交えてスイーツの話や(主にソフィアが食べたそうなもの)、それにまつわる異世界の話をしていた。
◇
前回来た時もそうだったが、やはり王城、今回の食事もとってもおいしかった!
そして肝心のショートケーキだが……
「厨房で手の空いているものを総動員して、何とか完成できた……」
と、パティオさんがショートケーキが載ったワゴンとともに現れ、それを切り分け配膳してくれた。
……何だかとても疲れていそうだ。
「私のことは気にせず、どうぞお召し上がりください……」
と言っていたが、クレアもソフィアも完全にケーキのほうに意識が行っていて、気にしていないようだった。
それじゃ、俺も遠慮なく食べるとしよう。
パクリ。
……うん、流石はプロ。
初めて作ったはずなのに、とってもおいしく仕上がっている。
周りを見ると、クレアは目を輝かせており、ソフィアは目を閉じて味を噛みしめているようだった。
俺が作ったわけじゃないけど、なんだか嬉しい気持ちになってくるな。
実際に作ったパティオさんを見ると、その様子を見て満足そうな顔で頷いていた。
「とってもおいしいですわ! パティオも一緒に食べて味を確かめてみるのですわ! メアリ、あなたも食べてみて欲しいのですわ!」
と、クレアがパティオさんと、そばで控えていたメイドさんに声をかけていた。
そしてメイドさんの名前はメアリというのか。ハクト、覚えた。……いや、単純に名前は覚えておこうってだけだけど。
メイドさん、いやメアリさんとパティオさんも席に着き、ショートケーキを食べることになった。
二人とも、王女様や客人と同席するのに
……パティオさんは、完全にショートケーキに意識が持っていかれてるな。
メアリさんは、まあパティオさんに容赦なくウォーターボールをぶつけるメイドさんだし、そういうものだろう。
二人ともケーキを食べ、パティオさんは満足そうにうなずいていた。
メアリさんは一瞬顔が
ちなみにケーキは8つに切り分けられており、3つ残った形だったが、おかわりを
◇
食事も終わり、まずはパティオさんに作ってみた感想を聞くことにした。
「ごちそうさまでした。パティオさんたちで作ったショートケーキ、俺の元居た世界でもおいしいショートケーキとして通用すると思う。とはいえ、いろんなショートケーキを食べたことがあるわけじゃなんいけど」
「そうか! まずは、その味を知っている人にとっておいしく作れてよかったよ。変な物を王女様にお出しするわけにはいかないから、途中で味見して大体の味は掴んでいたけれど、完成したものを食べて、自分でもいい出来だ! と思えたし、今回は成功だね。ただ、いちごはもう少し酸味があるものにした方が、全体のバランスがよさそうだったかな?」
さっそく味の改善点を考えているところは、流石プロだな。
「それで、あのケーキを持ってきたときにすごく疲れていそうだったけど、やっぱり生地とかホイップクリームを混ぜるのが大変だった?」
「そうだね。作っている時に、さっきハクト君が言っていたことを思い出したよ。次に作るときはきちんと道具を用意してからにしたいね。うーん、ハクト君にどんな形かを詳しく教えてもらえば、王都の鍛冶屋とかで作ってもらえるかな?」
鍛冶屋か。
うーん、もしかしたらパーティとかで大人数相手に作ることもありそうだし、できれば魔道具化したものがあったほうが良さそうな気がするな。
……アオイに連絡してみるのも手かな?
「普通の道具でも何個もケーキを作るとなると大変だし、魔道具化したものがあった方が便利だと思う。俺の知り合いに魔道具を作っている人がいるから、とりあえず連絡してみる。すぐに返信がくるかはわかならいけどね」
「ハクト君は一週間くらい前に異世界から来たって聞いてたけど、もうそんな知り合いができたのか! すごいな」
「そうですわ! やっぱり、ハクトさんはこの国の大事なお客様になると思うのですわ!」
なんて反応をされたけど、ただ偶然が重なっただけだと思う。
とりあえず、クレアたちに通信用の魔道具を使う、と断ってからアオイに連絡をいれた。
『今王城にいて、新しい調理用の魔道具の話になったんだ。もし興味があったら、今度時間がある時に詳しい話をできないかな?』
こんな感じで大丈夫かな?
調理用の魔道具には興味がないかもだし、いきなり作ってほしい魔道具がある! って連絡するのもあれだしな。
ちなみに、高級な魔道具を使っていることにもソフィア以外から驚かれ、魔道具を作っている人とはまた違う人の仕事を手伝って購入してもらった、と言ったら更に驚かれた。
うん、俺が第三者の立場で聞いても絶対驚くし、そうなった理由を説明するにも運が良かったとしか言いようがないな。
「そうですわ! ハクトさん、
「こちらに用意してあります」
流石メイドさん。
こんなこともあろうかと! と言わんばかりに用意がいいな。
……まあ日常で使う者だし、普段から持ち歩いてるかもしれないけど。
それと、流石王女様ということで、メイドさんが取り出したのはリンフォンだった。
というわけで、この国の王女様と連絡が取れるようになった!
……というか俺のリンフォンで連絡できる相手がすごい人ばっかり増えていくな。
まあ、スマホと違って俺の魔力とイメージが必要だから、落としても悪用はされなさそうだし、そこは安心だな。
とはいえ高価なものだし、どっちにしろ落としたくはないけど。
それと、パティオさんは連絡用の魔道具を持っていないようだった。
基本的には家族としか連絡を取る必要がないし、妻は同じ王城で働いて必要性があまりなく、娘からは頻繁に連絡してきそうだから拒否されたようだ。
パティオさん、奥さんと娘がいるのか。
ただ、家だと肩身が狭そうな気がしてしまう。
……後で、奥さんや娘さんの好きそうなスイーツのレシピを教えてあげようかな。
そんな感じで会話をしていたら、メアリとは違うメイドさんがやってきて、クレアに来客が来たことを告げていた。
「本日はハクトさんたちの会う予定で、他の誰かと会う予定はなかったはずですわ?」
と言っていたが、どうやらその来客は俺に用があるらしい。
え? 俺?
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