第14話 いせかいせん

 というわけで、魔道具の専門店にやってきた。


 店に向かっている道中では


「ハクトは魔道具の専門店に行くのは初めて?」


「ああ。実は結構楽しみにしてるんだ。向こうの世界にはなかった物とかもありそうだし」


「それじゃ、分からないことがあれば色々教えてあげるね!」


 なんて会話をしながら向かった。



 中に入ると、魔道具版の家電量販店とも言えるような様子だった。

 壁にはエアコンのような魔道具、棚には調理用の様々な種類の魔道具、奥の方には照明の魔道具などなど、あちこち目移りしてしまうほどの魔道具が陳列されていた。


「ふむ。確か通信用の魔道具はこっちだったか。まずは目的を果たすとしよう」


 と、すぐに歩き出したイズレの案内で売り場まで来た。


 さてと、まずは第一希望のリンフォンがどこにあるかな、と探していたら先にアンドーフォンを見つけた。

 というか種類がいっぱいあるな!

 値段は5万円くらいから、って感じか。


「アンド―フォンって、一種類の魔道具だと思ったけど、色々あるんだな……」


「そうね。考案した本人は色々提案するのが好きだったけれど、元の世界に帰ると決めていたのもあって、その権利に関してはこだわってなかったみたい。だから、無償で理論を公開したそうよ。そして各商会がこぞって開発に乗り出し、今では様々な種類のものができたみたいね」


 なるほどな。もしかしたら安藤さんは技術者的な人だったのかもしれない。

 他にも彼が残した理論を元にした魔道具も色々あるのかな?


 ちなみに、従来品は安いのもで1万円くらいからあったが、アキナがこそっと


「あまり安いのはおすすめしないわね。声が上手く聞き取れなかったりすぐ壊れたりと、粗悪品が多いの」


 と教えてくれた。やっぱりどこでも安いのには理由があるってことか。


 さて、第一希望のリンフォンはどこかな、って


「に、20万円……」

 

 ソフィアは確か10万円はする、みたいなことを言っていたけどその倍だった。神様と連絡を取るために支給されたとかで、正確な値段は知らなかったのかな?

 しかし、思ったより高かったな……。本当に買ってもらっていいのだろうか? 


「どうしたハクト? 別の種類と迷っているのか?」


「いや、リンフォンが一番良いとは思うけど……。でも、今更だけどこんなに高いものを購入してもらっていいのか?」


「ああ。むしろ、商品の整理に加え、得られた異世界の知識のことを考えれば、もっと多くの報酬を与えるべきではないかと思う」 


「いや、正直これでも貰いすぎだ、と思ってる。それに、俺は誰かが作ったものをそのまま伝えているだけだしな」


 今日伝えたものは、俺ではない誰かが作り出したものだ。その存在を伝えただけで多くの報酬を貰うというのは、かなり気が引ける。


「ふむ、そうか。では、とりあえず先に会計をするか。使い方も先にそこで教わるといい」


 リンフォンはもちろんそうだが、魔道具は使い方が難しいものがいろいろある。そのため、会計後に簡単にではあるが実際に使用しながら使い方を教えてくれるサービスがあるようだ。

 

 ……なるほど、目を開けながら操作した場合、ARメガネみたいに空間に文字が浮かんでくる感じなのか。確かにこれは特別な技術が使われていそうで、高いのにも納得だ。


 連絡先、というかお互いの魔道具を登録するには、それぞれの魔道具を近づけて魔力を流せば登録されるようだ。


 ちなみに安いものは、横についたつまみを回して登録する機器を切替える方式で、登録できる数も少ないみたいだ。

 一方で高級なものは、魔力を流すときに登録相手をイメージすることで登録できるようで便利だ。流す魔力が違うと使えないようで、セキュリティも結構しっかりしてそうだな。


「ふむ。では魔力を交換しておくか」


「あ、わたしも!」


 と二人とも魔道具を取り出した。というか二人ともリンフォンだった! イズレは結構稼いでいるみたいだったが、アキナも商人の娘さんで仕事も手伝っているっぽいし、結構お金持ちなのかな?



 改めてアキナに色々な魔道具を案内してもらいながら店内を巡った。

 たまにイズレからも、本人が商売道具で使っている物の補足が入った。本来の使用目的とは少し違う使い方をしているものもあり、色々な話が聞けて面白かった。


 一通り回ったところで外に出てみると、既に日が暮れていた。


「あら? 思っていたより時間が経っていたみたいね。そういえばお腹が空いてる気がしてきたわね」


「ふむ。意外と長い時間店にいたのだな」


 俺も時間をすっかり忘れて楽しんでしまった。色々な魔道具を見れてかなり異世界を感じることができたしな。


「こんな時間だし、皆の予定がなければ夕食を食べに行かない?」


「ふむ。私は問題ない」


「俺も大丈夫!」

 

「それじゃ、お昼はイズレの行きつけのお店だったし、夜はわたしがお店を紹介していいかな? 希望があれば教えて!」


「そうだな。やっぱり異世界から来たし、この国の料理を食べてみたいかな」


 何だかんだで、元の日本でも食べられそうなものばっかり食べてたからな……。どうしてこうなった。


「わかったわ! それじゃ、わたしのおすすめのお店に案内するね! もちろんこの国の名物料理を出すお店よ!」


 イズレも問題ないようで、さっそくアキナを先頭にお店に向かった。



 アキナの案内でそのお店に向かうと、


「ここよ! 転移門の近くに店を構えていて、わたしの故郷で捕れた新鮮なお魚を提供できるの!」


 海鮮のお店だった! アキナの故郷は日本っぽいところだったのに、その可能性を忘れていた。

 アキナの、ここすっごいおすすめ! な表情を見るに、多分向こうの世界の日本の情報までは知らないのだろう。

 

「ん? どうしたのハクト? あ、もしかして生魚が苦手だったかしら? でも大丈夫よ! 焼いた魚の料理もいっぱいあるから!」


「あ、ああ。 いや、そんなに好き嫌いはないから大丈夫だと思う」


 というわけで店内に入った。

 メニューはアキナのおまかせ! ということで色々頼んでもらったのだが、魚をユッケのようにした物が出てきた。

 味は若干赤身魚っぽさはあるが、肉っぽい感じで、始めた食べた味だったがとてもおいしかった。


 他にも、変わった香辛料の味がするカルパッチョのようなもの、焼くとサクサクとした食感のする魚を味付けした物、伊勢海老みたいな海老を半分にし、チーズやトマトソースなどがかかったもの等々、味わったことのないような料理ばかりで、初めて異世界の料理を食べた気分になった。


 すまんアキナ、勝手に心の中でがっかりして。めっちゃ大満足だった! ごちそうさまでした。


 ここはわたしのおごりよ! とアキナが会計を済ませ外に出た。というか異世界に来ておごってもらってばっかりだ。ありがたいけど。


「ふー。おいしかった! それじゃ、駒の件で何か進展があったら連絡するね!」


「私も、スケッチの検証が落ち付いたら連絡させてもらおう」


 ということで解散となった。

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