第8話 今、ふたたびのソフィア
「とうちゃく~!」
ハヤテの転移魔法で人間界に戻ってきた。周りを見渡してみると、午前中に来たことのある広場だった。
「さて、それじゃボクのおすすめするお店にいこ~!」
ハヤテの案内でおすすめのお店に向かうと、そこには
「ハクトさん、また新しい女性の方とお知り合いになったのですね。順調に異世界ハーレムを構築しているようで、何よりです」
店に入ろうとしているソフィアとばったり会った。
とりあえずいつものように訂正しつつお店に入ると、さっそくハヤテが
「ボクのおすすめはハンバーグだよ! でもカレーとか唐揚げとかもおいしいよ!」
なんて言っていた。というかお昼に食べた町中華風の料理といい、この世界に来た日本人(たち、かも?)、ちょっと文化侵略しすぎじゃないだろうか?
いや、おすすめされた先がそういうお店ばかりだった可能性もあるが。
うん、次に行くお店はこっちの名物料理が食べられるところを探そう。
俺とソフィア、ハヤテはハンバーグを、ホムラは大盛りのカレーライスに唐揚げやらハンバーグやらカツやらをトッピングしたものを頼んでいた。おいしそうだけど俺には絶対食べきれないな。
そういやソフィア、朝教会を出るときにハンバーグが食べたくなったとか言ってたが、さっそく食べに来たってことか。
3人は元々知り合いだったため、和気あいあいとした食事となった。ちなみに、ハヤテもやっぱりソフィアにつっこみを入れていた。
◇
食事を終え店を出ると、二人はそのまま魔界に帰るようだった。去り際に、
「また魔法を教えに来るからな!」
「また遊ぼうね~!」
なんて言いながら帰っていた。
「あれ? ソフィアも転移で天界に帰らないの?」
「少し教会でやることもありますし、腹ごなしとして教会まで歩こうと思います」
ということで、一緒に教会まで歩いて帰ることになった。
「ハクトさんは明日、何か予定はありますか? 後日に回した、残りの説明をしようと思うのですが」
「うーん、午前中は食材とか日用品を買いに行きたいから、午後お願いしたいかな。いろいろ珍しいものがあって、つい買うのを忘れちゃったし。ついでに屋台とかで朝食も済ませたいかな」
労働者向けなのか、朝からやってる屋台があちこちにあったし、明日の朝食はそれで済ませば大丈夫だろう。と、そういえば気になったことを聞いてみるか。
「なあ、ソフィア。今日の昼と夜に行ったお店、どっちも俺が元いた世界の味だったりメニューだったりしたんだが、やっぱり俺と同じ日本人がいろいろ広めたのか?」
「一部の料理やリバーシなどの娯楽用品はそうですね。ただ、料理のほとんどは私が漫画から得た知識を元に広めています。ハンバーグなど自分で作るのが大変なものも多いので」
お ま え か !
「すでに異世界の文化が色々持ち込まれてそうだし、今さらかもだけど、元々の文化とかを大事にしなくていいのか?」
「そうですね……。この世界には多種多様な種族がいるため、様々な文化があります。そして500年前に起きた出来事で、魔族との交流も行うことになりました。この世界ではそれぞれの文化が互いに影響し合い、また新しい文化を作ってきました。そのような中に異世界の文化が混ざることで、また新たな文化ができ、創造神様はそれを許容している、という形です」
なるほどな。初日の説明で、禁止したのは兵器の作成などの危険な事のみで、他には触れていなかったが、そう言った理由があったからか。
ん? そういえばホムラが人間界と魔界とが繋がったみたいなことを言っていたが、もしかしてそれのことか?
「そうだ、ソフィアに聞きたいことがあったんだ」
「ああ、やっぱりそうでしたか」
ソフィアは何かを確信したような表情で、
「”
あ、確かに! ここは異世界だ。発音が違ったりするからこの手の話は通じないのか!
「って違う! そうじゃなくて、ホムラから人間界と魔界が繋がったみたいな話を少し聞いてな。それを詳しく聞こうと思ってたんだ」
「そうでしたか。簡単に説明しますと、元々この世界は人間界と魔界でそれぞれ独立していたのです。それが、外部からの干渉の余波により魔力の道、というものが繋がってしまい、魔法で自由に往来ができるようになってしまいました」
実際に転移魔法で魔界に連れて行かれた時は、この魔力の道ってやつを通っていたのか。まあ一瞬だったし全然わからなかったな。
「元々、天界からは魔界、人間界それぞれに、私たち天使が往来するための魔力の道はありました。ただ、こちらは創造神様の許可がない限り通れないようになっています」
自由に神様のいる場所に往来できてしまうのは問題だもんな。原理とかは聞いても難しくてわからないだろうし、そういうものだと思っておこう。
「そして、繋がってしまった人間界と魔界なのですが、その道を初めに見つけたのは、魔力の扱いに長けている魔族でした。その魔族はすぐに仲間を連れ人間界に乗り込むと、人間界を力で支配しようとしました。創造神様はその時は外部からの干渉に力を注いでおり、気づくのが遅くなったと仰っていました」
「気づくのが遅くなったのは分かるが、その迷い込んだ魔族を排除して魔力の道を消す、といったことはしなかったんだな」
「創造神様は、世界が滅びるような現象が起きなければ、人間界や魔界への直接の干渉はしないという制約を決められました。災害など大きな出来事が発生する時には神託という形で伝え、対処自体はそこに住む者たちが行っています」
異世界ファンタジーとかでは、過干渉にならないように神様がわざと制限をかけるってのもあるし、そういった理由かもしれないな。
「その当時、偶然にもハクトさんのように異世界から迷い込んだ人間がいました。その方に、願いを叶えることを条件に魔族たちの対処をお願いし、無事撃退していただけました。もちろん、ハクトさんのようにチートと表現できる力を持っていました。ちなみに、この話は勇者と魔王の話として本になっています」
魔界から魔族が進行してきて、それを異世界の勇者が撃退か。異世界ファンタジーの王道って感じの話がでてきたな。
「その後も色々ありましたが、最終的に魔族の実質的頂点の方々と各国の代表者同士が話し合い、友好関係を結ぶことになりました」
「なるほどなぁ。当たり前だけど、こっちの世界にもいろんな歴史がありそうだ。と、もう教会についちゃったか」
「そうですね。簡単な説明でしたが、詳しく知りたい場合は書庫に様々な本がありますので、そちらを参考にしていただけたらと思います」
「わかった。教えてくれてありがとな。それじゃ俺は宿泊所に行くよ。おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」
◇
~ハヤテ SIDE~
「ね~ね~ホムラ。ハクトに僕たちが魔族ってこと以外何も伝えてないの?」
「そういやそうだな。今度会った時にでも教えておくか。というかそっちの呼び名気に入ったのな」
ハクトからもらった名前は元の名前より短いし、呼びやすいんだよね。
というか、ハクトがボクたちのことを全然知らないんだったら、あえて黙っておいた方が楽しそう!
「うん! 前より呼びやすいからね! それよりも、すぐにハクトに教えるのは気を使わせちゃうかもよ? もう少し仲良くなってからでもいいんじゃない?」
「ん? んー、まあ、そうだな。そうするか」
ふふふ。さてどうしよっかな~!
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