第14話パーリ市まで1,000km(ヒロインR15イラスト有り)

 感動のサルチン出発から日が経つ。


 約一か月も経つ。


 だが俺たち一行は目的地のパース市には、まだ到着していなかった。


 そう…フランクス国土があまりにも広大すぎるのだ。


「フランクス王国、広いですね、カテリーナさん…」


「そうね。広いね、ジノくん…」


 馬車の後部座席で、俺はカテリーナさんは広大すぎる国土に呆れていた。


 https://kakuyomu.jp/users/haanadenka/news/16818093083636514912


「ジノ様、すごく広いでしょ? フランクス王国は世界一なんですよ!」


 そんな中で、この王国出身のレーナだけは、かなり誇らしげにしている。


 この時代は『豊かな国土の広さ=国力』。


 だから出身国が褒められていると勘違いしているのだ。


(一か月の旅か。蒸気機関車も魔法の無い世界だから、移動は大変だな…)


 サルチン領からパーリ市までは、900km以上も離れている。


 現代の高速鉄道なら10時間着く距離だが、馬車荷馬車はあまり速度を出せない。


 だから片道だけでも1ヶ月くらいかかってしまうのだ。


 そんな、ことを思いながら、俺は座席から動き出す。


「ちょっと外で、馬に乗ってきます」


 俺は静かに座っているのが苦手なタイプ。


 だから定期的に外で体を動かしていた。


 今日も同行しているサルチン領騎士の馬を借りて、二時間くらいの乗馬鍛錬タイムだ。


「ジノ君、私も歩くね」


「私もカテリーナと一緒に歩く!」


 同じく体を動かすのが好きなカテリーナとレーナも、馬車から降りて歩き出す。


 荷物を積んだ馬車と荷馬車の速度は、そこまで速くはない。


 運動が得意な二人なら、徒歩で追いつけるのだ。


 そんな乗馬&徒歩で運動している俺たち三人を、後方から見ている一団がいた。


「おい、見ろよ! イタリアナの奴ら、また馬車から降りたぞ」


「馬車から降りて移動とか、貴族のクセに、頭おかしいのか?」


「そうだな! はっはっはっ!」


 大きな声で俺たちを蔑んでくるのは、後方から着いてくるフランクス王国の騎士たち。


 https://kakuyomu.jp/users/haanadenka/news/16818093083636530388


 彼らは一応は俺たちの護衛隊だ。


 俺たち通り道の領主たちが交代で、断続的に護衛してくれていたのだ。


 だが名目上の護衛なので、彼らはこんな感じで後方でさぼっている。


「アイツら、またジノ様ことを! 許せん!」


 血気盛んなサルチン騎士が激高し、腰の剣に手をかけようとする。


「気にしないでください。文化も風習も違うから、言わせおきましょう」


「はっ! 失礼しました、ジノ様!」


 これまで何度も、こうやって自領の騎士たちを静止してきた。


(ふう…。あっちはヨーロッペ大陸有数の大国で、こっちは弱小伯国。この対応も仕方ないよな)


 普通は大国の王女に、伯爵家クラスの四男が婿入りするなど、あり得ない。


 だからプライドの高いフランクス王国騎士は、俺たちを舐めくさっているのだ。


(ここまでの町でも、色々とあったからな…)


 この一か月、宿泊の時間になると、俺たちは各地の町に立ち寄ってきた。


 そこの貴族や市民たちからも、俺たち一行は陰口を叩かれてきたのだ。


 …「見ろよ。あれが噂のイタリアナ半島の弱小国の婿一向だぞ…」


 …「誇りある我らフランクス王家に、どうして、あんな奴が?」


 …「モスクワフ帝国の血統だけで、どうせ、種馬なんでしょ?」


 …「らしいな。持参金を奪い取って、跡継ぎを種付けしたら、後は牢獄とかでいいじゃない?」


 そんな感じだった。


 俺たちの馬車を見に来た見物人、宿泊先の領主の館。


 陰口のような誹謗中傷を受けてきた。


 何故なら、この時代のフランクス国民は、とにかくゴシップと噂好きなのだ。


「まぁ。それは覚悟してきたことから、俺は気にしてないけど」


 先ほどの熱血騎士を除き、他の同行者は誹謗中傷には反応していない。


 何故ならフランクス王国内で酷い仕打ちを受けることは、出発前からみんな覚悟していたから。


 だから嫌な野次馬に対しても、俺たちは笑顔で手を振り、ここまで乗り切ってきたのだ。


「あと、姉さんの噂も聞こえてきたけど…」


 数か月後前、ボルドン公爵家に嫁入りした時の姉一行の噂は、ここまでで俺の耳にも聞こえてき。


 …「あの弟に比べて、姉のアンジェラ様は凄かったよな!」


 …「ああ…あんな天使のように手を振ってくる女性は、フランクス王宮でもいないんじゃないか?」


 …「あの人こそ、フランクス王家に相応しい方だよな⁉」


 …「持参金を乗せた荷馬車の数も、あんな沢山は、見たことがないよな!」


 …「ボルドン公爵家は大金星だよな!」


 各地の人たちは誰もが、姉のことを大絶賛していた。


 その噂を聞いただけで、今は彼女が幸せにしていると、俺は容易に想像できる。


「俺に比べて、アンジェ姉さん、やっぱり凄いんだな。才能だけじゃなく、努力の質と量が違うんだよな、あの人は」


 彼女はモノ心ついた時から、嫁入りの準備と努力を積んできていた。


 各国の語学、宮廷作法、ダンス、会話術…そして旦那を虜にする夜の技まで。


 その常に上を見ていた姉の姿に、俺は幼い時から関心してきたのだ。


「おっと。次の町が見えてきた、そろそろ馬車に戻るか」


 一応は王太子の身分だから町に入る時は、俺は馬車に乗っていないといけない。


「今宵の町は、どんな所かな?」


 こんな感じで長い日中の移動時間も終了。


 今宵の宿泊の地、ブルージュンの街に俺たち一行は到着する。


 ◇


 夕方前。


 ブルージュンの街の中央にある領主館。


「今宵はお世話になります」


 館の大広間で、領主から夕食を御馳走してもらう。


 俺が婿入りするのは数か月前から決定していた。


 だから、こうして食事や館の客室を、各地の領主は提供してくれるのだ。


 もちろん…俺に対する陰口も、絶賛付随してくるけど。


 ――ガチャ、ガチャ、バタバタ…


 そんな時、フランクス騎士たちが大広間から、出ていく音がする。


 日中に俺たちの一応の護衛と、陰口をしてきた連中だ。


 おそらく、夕食のために彼らも城下町に繰り出すのだろう。


「みなさん、お待ちください」


 だから俺は急いで声をかけて、フランクス騎士を呼び止める。


「なん…ですか?」


 いきなり呼び止められて騎士たちは、俺を警戒している。


 だから俺は笑顔で右手を差し出す


 ――ジャラッ


 大量の銀貨が入った袋を、騎士の代表に俺は渡す。


「こ、これは、どういうこと…ですか?」


 突然の銀貨に騎士たちは驚いている。


 何のための物なのか、意味が分からないのだろう。


 だから俺は説明をする。


「これで美味しい物でも食べてください。あと、女性も用意してもらったでの、必要なら、どうぞ」


 俺が渡したのは護衛騎士のための食事代金。


 あと、この街の娼婦も到着直後に、俺は予約してもらっていた。


 薄給の下級騎士たちが、一生で一度も抱けない高級娼婦だ。


「あ、あの、私たちは、受け取る資格は…」


「貴方の陰口を…」


 銀貨の意味を理解して、騎士たちは下を向いてしまう。


 今日の午前中、彼らは俺に初めて合流してきた。


 その時からこの騎士たちは、ずっと俺たち一行にバレるように、わざと大きな声で蔑んできた。


 だから騎士たちは申し訳ない気持ちで、動揺しているのだ。


 その申し訳なさそうな様子を見て、俺は更に満面の笑みで口を開く。


「俺は全フランクス国民と騎士に敬意を持っています! 明日から、また、よろしくお願いいたします!」


 そう言い残し、銀貨を強引に渡し、俺はその場を去っていく。


「ジノ…殿下。ありがとうございます…」


 そう、小さな声で呟きながら、騎士たちは深く頭を下げて、城下町へと向かっていった。


 そんな俺たちの光景を、こっそり見ていた侍女がいた。


「毎回、思うんですけど…ジノ様って、けっこう、策士ですよね?」


 レーナは感心した顔で、俺に近寄ってくる。


 彼女が『毎回』と口にするように、俺は護衛騎士が交代するたびに、同じことをしてきたから。


 各地の護衛騎士に、豪勢な食事と最高の女を、俺はご馳走してきたのだ。


「策士かな? これはアンジェ姉さんの教えなんだ」


 姉さんは『敵意を向けてくる者には、笑顔で飴を与えよ』と、人生の生き方を俺に教えてくれた。


 だから俺は持ってきた私的な銀貨を使い、各地で実践してきたのだ。


「そうだったんですね。でも、最高級娼婦は、いくらなんでも、お金、勿体なくないですか?」


「そうかもしれないね。でも、『取り入れたい奴には、その地で最高の女を抱かせろ!』。これはイヴァノフ伯父さんのアドバイスなんだ」


 伯父さんからの手紙で、婿入り用のアドバイスが沢山あった。


 だから皇帝からのお祝い金を、俺はケチらずに使っていたのだ。


「なるほどです。それじゃ、ジノ様。彼らも明日から態度が、また…」


「変わるはず。さっきの様子だ度、俺たちにある程度の敬意は持ってくれるかな」


 予定ではパーリ市までは、あと三日くらいのスケジュール。


 あと、二回くらい、道中の高級娼婦を彼らに抱かせたら、到着時には俺の忠実なしもべになっているだろう。


「そういうところは策士というより、腹黒ですね、ジノ様って」


「はっはっはっ、そうかもね。フランクス王国内では、俺は『手段を選ばない』って決めたからね」


 故郷サルチンを出発した後、俺は一つの覚悟を決めていた。


 ――『故郷と大事な人を守るためなら、手段は択ばない』という覚悟を


 何故なら、婿入り王太子としての俺の失敗の代償は、故郷に降りかかってしまうから。


 だから敵意あるフランクス騎士たちも懐柔して、道化と呼ばれても仲間を増やしていくつもりだ。


 暗殺などの手段は使わないけど、それ以外の卑怯な手は使っていく予定だった。


「だから安心して、俺に付いてきて、レーナも」


 俺の決意を聞いて、レーナは目を向ける輝かせている。


「ジノ様、やっぱり、カッコいい!」


 その言葉と共に、いきなり俺に抱き着いてくる。


「早く、抱いて欲しい…」


 上目遣いの彼女は、既に目がトロ~ンとしていた。


 性欲が強いレーナは、早くもヤる気マンマンなのだ。


「それじゃ、みんなで夕食を早く済ませて、カテリーナさんと部屋に行こうか」


 この一か月間、レーナとカテリーナを毎晩のように抱いてきた。


 道中は借りている部屋なので、さすがに3Pじゃなくて別々の部屋でマンツーマンだ。


 でも、一晩でレーナを二回抱く。


 すぐ後にカテリーナさんを二回抱く…こんな感じのローテーションだ。


 二人とも寂しがり屋なので、最後の寝る時、全裸の三人で、川の時になって寝てきた。



 ◇


 この日の夕食後。


 俺専用の寝室で、まずはレーナを二回抱いていく。


「ジノ様、ジノ様!…――っ――!」


「レーナ、レーナ…―っ―!」


 借りている部屋なので、俺たちは声を抑えながら、でも濃厚なエッチだ。


 https://kakuyomu.jp/users/haanadenka/news/16818093083636756210


 今宵はレーナを二回抱いたら、次はカテリーナさんが入ってきて交代だ。


 ◇


 その後は同じくらい濃厚に、カテリーナさんを二回抱く。


「ジノくん…ジノくん!――っ――」


「カテリーナ、カテリーナ!…――っ――」


 どちらも声を殺してのエッチなので、いつも以上に興奮してしまった。


 カテリーナさんもトロ~ンとした満足そうな表情をしている。


 ――バタン!


 二回目の後、ネグリジェ姿のレーナが部屋に飛び込んでくる。


 最後に寝るタイムが待ちきれなくなって、フライング気味でやってきたのだ。


「……レーナ。終わったばかりで、すぐ入ってくるのはマナー違反じゃなくて?」


 だからカテリーナさんはちょっとプンプンしている。


 エッチの時は甘えん坊な彼女なので、俺と二人きりで、もう少しだけ抱っこタイムが欲しかったのだろう。


 https://kakuyomu.jp/users/haanadenka/news/16818093083636743292


「カテリーナさん、大丈夫。三人で寝ながら、ゆっくりしましょう」


 だから頬を膨らませている彼女に、右腕で腕枕してあげる。


「それじゃ、私はジノ様の左腕!」


 ネグリジェ姿を脱いで、全裸レーナがベッドに入り込んでくる。


「あと、ジノ様の左足も、私のもの」


 レーナは足を乗せて、密着しながら抱き着いてくる。


 彼女は恥じらいがないので、三人でもこうして甘えてくるのだ。


「………ずるい。私も」


 カテリーナさんさんも、こっそり腕に抱っこしてくる。


 年上のお姉さんだけど、こういう時は甘えん坊になるの。


 そして『両手に花』とは、まさにこのことだろう。


 その後は三人で楽しくピロートークタイムをしていく。


「それじゃ、寝ようか」


 こんな感じで、この一ヶ月間の夜も、俺は心と体をリフレッシュしてきた。


 ◇


 ◇


 翌朝になる。


 移動用の馬車に向かうと、フランクス騎士たちが整列していた。


「ジノ殿下、馬車を用意しておきました!」


 予想通り彼らは、俺に敬意をもってくれた。


「パーリ市までの今後の道中は、我らが率先いたします、ジノ様!」


 彼らは部隊を全方位に展開して、俺を完璧に護衛してくれた。


 ……『ねっ。男って馬鹿で単純で、操りやすいでしょ?』


 アンジェ姉さんの顔と、そんな言葉が思い浮かぶ。


 そんな感じに態度が変わったフランクス騎士たちのお蔭で、その後の移動も順調に進んでいく。


 ◇


 ◇


 そして数日が経つ。


 日課の馬での移動をしている俺の目に、遠くに大都市の光景が見えてきた。


 https://kakuyomu.jp/users/haanadenka/news/16818093083636543927


「アレって、もしかして?」


「はい! あれが我らが誇る、パーリ市でございます、ジノ殿下!」


 こうして俺たちは目的地のパーリ市、


 ヨーロッペ大陸で最大級の大都市に到着するのであった。

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