第7話 翌朝(前編)
翌朝、アレクシスは目を覚まして早々に絶句した。
隣に裸のエリスが寝ていたからだ。
「――ッ!?」
彼は驚きのあまりベッドからずり落ちかけて、けれどなんとかバランスを持ち直し――ようやく昨日のことを思い出す。
そうだ。自分はこの女と結婚したのだった、と。
――それにしても、夕べ酒を煽りすぎたせいか、記憶が殆ど抜け落ちてしまっている。
エリスとの
(あいつ……薬の量を間違えたのか……?)
いや、あのセドリックのことだ。間違えなど万に一つも有り得ない。
とするなら、やはり記憶の喪失は酒のせい……ということになるが。
何にせよ、この状況から察するに初夜は無事に済んだのだろう。
記憶がほぼ飛んでしまっているので、実際のところはわからないが……。
アレクシスは大きく溜め息をついて、自分の着ていたバスローブはどこだろうかとあたりを見回した。
そうして、再び言葉を失った。
なぜなら、アレクシスの視線の先――シーツの上に、本来あるはずのない赤い染みができていたからだ。
処女でなければできるはずのない、くっきりとした血痕が。
考えるまでもなく、それはエリスの血に違いなかった。
「…………は?」
(待て。この女……純潔だったのか?)
瞬間、脳裏に蘇る昨夜の記憶。
エリスに向かって"脱げ"、"お前を愛する気はない"と言い放ったことや、その後の、手荒……などという軽い言葉で片づけられないほどの所業。
確かにそれらは全て本心から出た言葉だったが、その
それなのに、まさか乙女であったとは……。
「…………」
アレクシスはさぁっと顔を蒼くして、口元を手のひらで押さえる。
自分は取り返しのつかないことをしてしまったのでは――と。
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