矢野遥人氏の向かったマンションが判明

当編集部宛てに送られた、行方不明者矢野遥人氏に関する目撃情報。しかし結局それ以降再び矢野遥人氏が目撃されることはなく、今に至るまでその行方を解明するには至っていない。

しかし当編集部は情報提供者と連絡を取り合うことが叶い、矢野氏が目撃されたというマンションを特定することに成功した。当編集部はその旨を即座に管理人様に連絡し、今後について詳しい協議に移ることとした。以下、オンライン会議にて行われた会話を文字に起こしたものを転記する。


――――――――――


編集部「矢野氏が目撃されたというマンションの詳しい所在地が判明しました。○○県○○市西区にある、ごくごく一般的なマンションですね。外見的に特に何か変ったようなところがあるわけでもなく、今も普通に入居者が募集されているようですが…」

管理人「どうします?行ってみます?」

編集部「我々としましては真実解明のため、ぜひとも取材に行ってみたいと思っているのですが、管理人様はどう思われますか?」

管理人「おっと、真実解明というのは建前で、実際の所は取れ高が欲しいというのが本音ではありませんか?(笑)」

編集部「否定はしません…」

管理人「やっぱり。いえいえ、そう落胆されなくても大丈夫ですよ。私も同じ思いですし」

編集部「では、行かれてみますか?しかしここがいわくつきの建物だということであれば、もしかしたら管理人様が何らかの被害を被ってしまう可能性もありますので、編集部としましては無理に向かわれなくても構いませんが…」

管理人「まぁ大丈夫だとは思います。私は事件に直接かかわっているわけでもありませんし、誰かに恨まれるようなこともしていないですし。というかそもそも、私も呪われる対象であるならもうすでに死んでいることと思いますし(笑)」

編集部「承知しました。詳しいことはこれからこちらの方で調べてみますので、続報をお待ちいただければと思います」

管理人「了解です」


――それから数日後、情報をそろえた後に再びオンライン会議を開催――


編集部「お待たせしました。管理人さん、あれから詳しいことが分かりましたよ」

管理人「お疲れ様です。ぜひお聞かせいただきたいです」

編集部「それでは早速。あの例のマンションですが、やはりいろいろといわくつきな様子です」

管理人「と、言いますと?」

編集部「そのマンションに詳しい不動産関係の方からの情報なのですが、なんでもそのマンションではかなりの頻度で飛び降り自殺が起こっているらしいのです」

管理人「なんと……。い、一応確認ですが、それは幽霊かなにかが何度も飛び降りをしているように見えるという話ではなくってですか?」

編集部「違うのです。毎回毎回異なる方がはっきりと飛び降り自殺を決行されているのです」

管理人「そうですか…。ではやはり、あのマンションにはなにかあるのかもしれませんね…」

編集部「いかがいたしますか?もしもご気分を害されそうだということでしたら、取材には我々だけで向かおうと思いますが…」

管理人「いえ、私も行きます。なおさら興味がわいてきましたから」

編集部「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」

管理人「しかし、うーん…。もしかしてそこは自殺スポットか何かなんですかね?そのマンションから飛び降りたら自殺を既遂できる可能性が高いから、自殺志願者たちがそのマンションのもとに集まり、何度も何度も繰り返し自殺が起こっている、とか…?矢野さんがそのマンションで目撃されたのもそれ関係…?」

編集部「それが、情報元の方からの話によればそのマンションで飛び降りをしたのは全員、れっきとしたそのマンションの住人であるとのことです。外部からの自殺は今の所確認されていないと…」

管理人「そうですか…。矢野さんの目撃情報と併せて考えたら、そうではないかと思ったんですが…」

編集部「さらに不気味なのが、自殺方法はすべて飛び降りである上に、自殺者の部屋番号やフロアは完全にバラバラだそうです。いわくつきの部屋に住んでしまった人が連続的に自殺をしてしまう、と言うのは聞かないでもない話ですが、今回は違うようです」

管理人「それを聞くとなんだか、どこの部屋がいわくつきと言うよりも、まるでマンションそのものが呪われているような印象を受けますね…。個人でなく、なにか周りを巻き込むほどの出来事でもあったのか…」

編集部「マンション全体を巻き込んでの事態であろうことは、我々も同じ考えを持っています。やはりこのマンションにはなにかありそうです」

管理人「分かりました。では、早速そのマンションに取材を行う準備に取り掛かりましょう」

編集部「承知しました」

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