第6話
あ、土足ですんません、そう言いながら慌てて靴を脱いでいるのは中学生くらいの少年で、でも足が異様に長い。靴を脱いで立ち上がると、頭がプレハブの天井にぶつかった。上半身は普通なのに、足だけが長い。
「痛って!」
「気を付けろ、ここ、天井が2メートルちょっとだから。てか、その天井に届くとか、君、背が高いな。何センチあるん?」
「朝、起きた時は、2メートル20くらい。でもあれから16時間は経ってるから、さらに4センチは伸びているかも…」
明日には2メートル30に近づく、とブツブツ呟く少年の目には涙が溜まっている。
「もしかして、君、足を伸ばしてって、願ったのか?」
もしかしなくてもそうだろうなとは思いつつ、聞いてみる。と、がばっと顔を上げて叫び出した。
「そう! そうなんです! 俺、身長159で、でもカナちゃんは165あって、どうしてもカナちゃんより背が高くなりたくて、で、どうせなら、足伸びたらかっこいいなって思って。でも、ここまで伸びるなんて!」
最初の2日3日はよかったけど、その先は何かバランス悪くて、うまく歩けないし、みんなからは気味悪がられるし、なのに、あれから10日経つのに伸びるの止まらないし、俺、どうしたら…。
最後はぐしぐし泣きながら訴える少年に、俺はやっぱり妙に冷静な頭で、10日前に願いが聞き入れられたとするなら、もっと伸びているはずだよな、と考えていた。すると、
「毛髪の類は比較的簡単に伸ばせるが、身長は、骨や皮膚を伸ばすことになるから、そう簡単にはいかん。1日6センチがせいぜいじゃ」
と、神様が解説した。なるほど、それなら計算が合う。俺の眉毛が12センチ伸びたのも毛髪の類ということか。納得だ、いや、納得してないけど。毛髪、毛髪…?
ハッとして、もう1人の闖入者を振り返る。長い髪を持て余し気味の小柄な少女が、神様をねめつけながら仁王立ちしていた。
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