第4話

「あ? なんか、視界が悪いな…」

 数分して煙が引いても、辺りがよく見えない。何かが瞼に被さっているような? そう思いながら姿見のほうを見て、


「うああああ!!?」

 思わず悲鳴を上げた。俺の眉毛が、10センチほど伸びている。

「なんじゃこりゃあああ!!!」

 絶叫する俺に、神様は満足げに微笑んで言った。


「基本的に、1日かけて12センチ伸びる。じゃが、初回は限定サービスで、すぐにも結果が得られるようになっているのじゃ」


 12センチ? つまり、今瞬時に、12センチ眉毛が伸びたってことか?? 

 いや待て、それより、今もっと聞き捨てならないことを聞いたような…。


「1日に12センチ伸びるって言ったか? つまり明日も、このくらい伸びる?」

「さよう。ただ、2日目からは一気にまとめてではなく、2時間に1センチの、均等なペースでゆっくりと伸びる」


 なぜかさらに得意げな神様。


 2時間に1センチ伸びるのであれば、学校にいる間、つまり、朝9時から夕方5時の間で4センチは伸びることになる。そんなん、周囲のやつらも絶対気づくだろう。


「アホか! 早く元に戻せ!」

「アホとはなんじゃ! お前が願ったんだろうが!」

「がちで眉毛を伸ばしたいと願うやつなんて、いるわけないだろ? たとえばの話をしただけなのに、先走りやがって!」

「わからんわ! 紛らわしい!」


 お互いけんか腰で言い合っていると、


「「見つけた!」」


 窓のほうから見事なユニゾンが響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る