第2話

「なんじゃ、驚かすな、ばか者が」

 情けない悲鳴を上げたのがよっぽど業腹だったのか、ぷりぷりと頬を膨らませ怒る幼児。苦情は聞き流し、

「何だお前、どこの子だ? 迷子か?」

 と訊いてやると、膨れた頬がハコフグのようにますます膨れ上がった。

「迷子ではない」

「じゃあ、何だよ? 勝手に人んちに上がり込んで」

「うむ、聞いて驚くな」

「何を?」

 子どもは勿体ぶった態度で重々しく言った。

「我、神ぞ」

「は?」

「我、のびるのびるの神ぞ」

「え?」

 理解が追い付かない。なんかこいつ、危ない奴か? 改めて子どもを見ると、服装もなんだか変だ。まるでお父さんのワイシャツを着こんだような。でもって、某人気娯楽施設で売っている魔法の杖のようなものを持っている。

「あ~、もしかして、買ってもらって嬉しすぎて浮かれてる? それとも、学芸会の練習か? 悪いけど、今勉強が忙しくて、相手している暇がないんだ。

 さ、おうちに帰りなさい」

 軽くいなすと、

「だから! 神だって!」

 床を踏み鳴らして叫ぶその姿は、思い通りにならなくて地団太を踏む、子どもそのもの。どこが神? 思った途端に、

「無礼者! どこが神とはなんだ!」

 と言われた。え、心を読んだ? なんだ、本物か? いやそんなバカな。だけど、今確かに…。

「やっとわかったか、我が人間の子どもではないことが」

「うーん」

 確かに不思議な力があるのかもだけど、でも、俺は今、こんなことしてる場合じゃないんだ。とっととお引き取り願わねば。

「で、その神様が何の用?」

「おお!」

 ぱあっと顔を明るくして、“神様”は満面の笑みを見せた。

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