ぶつかる

ガン!と側頭部を襲う痛みに目を覚ました。

混乱する。

真っ暗な息のし辛さが充満したような暗い空間にまだ居ることに心臓が早鐘を打つ。

耳の側でドクドクと煩い音がする。呼吸が早くなる。震える手で暗闇をまさぐると固いスマホに行き当たる。

光を灯すとそこは変わらないトランクの中で。

(……夢かよ……)

落胆と同時に現実のきつさが襲ってくる。

時間は23時過ぎ、トランクの中は快適さのない蒸し風呂であり、汗の匂い吐瀉物の匂い暴行を受けて流した血の匂いが漂っている。呼吸は浅くゆっくりと匂いを感じる暇もないはずなのに自分の匂いも車の匂いも気になって気になって気になって

(落ち着け。落ち着け落ち着け落ち着け深呼吸だ深呼吸をしろ)

何度自分に言い聞かせても耳に響くドクドクという血の流れる拍動と、早鐘を打つ心臓が止まらない。吐き気を堪えるために腹に力を入れてそれがまた気持ち悪さを呼ぶ。吐き気がする吐き気が

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