第15話 出られない?
「…………な…………?!」
予期せぬ抵抗を受けた案理の身体はいとも容易く押し返されたが、彼女の背後に控えていたマリカがしっかりと受け止めてくれた。
「あ……ありがとう」
「いえいえ~♪」
案理が身体をどけると、マリカが一歩進み出て人差し指でツンツンと見えない膜をつついた。
「ね、ねえ。マリカさん……。この膜、ものすごく分厚くない? 家の周りにあったのと全然違う。私の手なんて簡単に押し返されてしまうわ…………」
マリカの隣に並んだ案理も先ほどより慎重に膜の強度を測ろうとしたが、家の周りを囲っている膜の何倍も厚そうだということ以上の推測は不可能だった。
「うんうん。あたしも最初ぶつかったときはびっくりしたよ〜」
「『
「うん。ここに来た日かその次の日だったかな。とりあえず町内回ってみたんだけど、家しかないし飽きるじゃん? ……
膜の強度と違い、当時のマリカの様子は容易に想像がついた。スキップをするように軽い足取りで四尾都町の外れまで来た彼女が、わけもわからずに見えないくせして分厚い壁に跳ね返されているシーン――。
「散歩をしていたわけね?」
「うん! ルンルンで歩いてて――まさかあんなものに邪魔されるとは思わないじゃん? すぐそこに可愛い雑貨屋さん見えてるのに行けないとかさあ…………」
マリカの目線の先には確かにメルヘンな印象の雑貨店があった。――どことなく四尾都町に立つ住宅のひとつひとつと調和するようなデザインだと案理は思った。
「まあ、触ったら電流流れるとか切れちゃうとかじゃなくてよかったけど! 酸素もちゃんと通してるみたいだし!」
「…………そうね。その通りだと思うけれど、わからないことが多すぎるのではなくて?」
「ひとつだけはっきりしてるのは――――」
「「(私/あたし)たちはここから出られない」」
声を揃えて言った二人だが、事の重大さを弁えているためか両者ともににこりともしない。
「……ってこと。でもさ、自力で出る方法はなくても、合法的(?)に
「…………まさか!
「そうそう。どこに飛ばされるかはわかんないけど、とりあえず膜の外には行けるわけじゃん? だからねえ、もしアンリちゃんが外出たいなら、投票で一位を狙えばいいと思うよ。なかなか険しい道だけどね!」
マリカは先ほどから同じ場所を何度も拳で叩いていたが、諦めたように手を下ろした。
(マリカさんは気付いていないのかしら。飛ばされた先がここ以上に閉鎖的な場所だという可能性もあるということに……)
「まあ大バクチだけどね!
「マリカさんはそのために…………?」
「う~ん? あたしは住む場所にはこだわらないかな。前いた家に比べたらどこだって天国だよ~♪ 今なんて特にダンナくんも一緒だしね! だから、四尾都町を出るためじゃなくて永遠の愛を誓う儀式に興味あって頑張ってる感じ! 動機が何でも先越されまくってモチベだだ下がり中だけどね~」
話の端々から伝わってくるのは、マリカが過去に相当苦労してきたらしいということだけだった。
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