RAIN-ごくあの空に青は輝く

ソラねこ

第一章 今幕開けの光は陰を踏む

第1話 この最終試験は限界に咲く

異世界....


その世界は雨も雲も陽の光すらなく

あるとして自然の持つ魔力エネルギー

による光が大地から薄っすらと見える程度


とても生物が住める環境とは思えない


そんな闇に包まれた世界に、

多くの民から賞賛され脚光を浴びる

職業があった…


それは雨を降らせ大地を潤し…

太陽を作り生命を照らす…


その職業を人は[あまづくり]

と呼んだ……


これはある青年があまづくりを目指し

世界を知る修行旅で新たな仲間との

出会いや修羅場を受ける中で本当の

空の存在を知り青年達はそれを

取り戻し世界を救う為存在を隠した

ある組織の真実に立ち向かう

仲間の絆と愛が問われる物語…



ガロント地方に位置するマムト町………

そこのとある一軒家……


師匠「おーい、レイーン、飯はまだか〜」


レイン「すぐ出来ま〜す、あと少しだけ

なので待って下さ〜い」


僕と師匠とはスラムで倒れていたのを助けてもらって以来の付き合いでずっと共に生活をしてきた


師匠「もう待てんぞ〜」


師匠はフォークを握りしめてワクワクしながら朝食を待っている


レイン「ごめん師匠、今持ってきたから」


食べ物の皿を持ってきた瞬間、師匠は行儀悪く朝食のハムエッグに食らいついた


師匠「……レイン」


レイン「はい、師匠」


師匠「うまいのぉ!」


レイン「よ、良かったです」


と、師匠は毎日こんな感じで気が抜けてると

いうかせっかちというか、少し変わってる所

があるけどこう見えて元伝説のあまづくり…

名を バハドーラ ドックス といい魔法の腕前は

超一流何よりこんな僕を拾ってくれた優しい

師匠が僕は大好きだ…


レイン「美味しいですね!師匠!」


ガチャゴチャ(勢いよく食べる音)


師匠「うッ!ゴホッゴホッ、」


レイン「急いで食べ過ぎですよぉ…」


レインが急いで水を渡すと、


師匠はそれまた勢いよく飲み干した。


ゴキュゴキュゴキュ(水を飲む音)


師匠「これじゃ、これぇ!」


相変わらずのマイペースな師匠を見てレインは苦笑いを浮かべた。


そんなこんなで朝食を終えたレインはいつも

通り朝稽古を始める。バハドーラ流朝稽古は

まず精神統一から始まる。精神統一と言って

も魔力の流れを身体に馴染ませるために座禅

をした状態で自分の前に魔力の玉をつくり、

ぶれないよう維持するというものでこの世界

の魔法修行者の中では一般的な方法だ


これが終わると続いて魔法持久力の鍛錬が、

始まる。内容は身体全体に魔力による加速を

施し町を10周するもので先程の精神統一とは

難易度に、天地ほどの差がある。なんせ動き

ながら魔力をコントロールする、しかも身体

に纏うかたちになるので、一瞬の気の緩みが

事故に繋がりかねない。だけどここまでして

魔法持久力を鍛えるには理由がある。そして

この世界の魔法は、体力を媒体にしている為

体力づくりが魔力量に直接関係する


例えば1発火の玉を打ち出すこれに消費される

カロリーは10kcal程度とされている


しかし魔法持久力を鍛えると鍛えていない

のに比べて、圧倒的に魔力量消費コストが

変わってくるのだ。


レインは上手く身体全体に魔力を纏わせ

ながら呼吸を乱さぬよう走る事を心掛けた。


そして、あと町を1周すれば魔法持久力の稽古

は終わりというところに差し掛かった頃、

誰かが手を振って僕を呼んでいるが見えた。


紅髪の少女「レイーーン、ちょっとこっち

来てもらえるー?」


レインは纏っていた魔力を一度解くと

彼女のもとへ向かった


レイン「ルーチェ、どうしたの?いま朝稽古中

なんだけど」


彼女はルーチェ、そして幼なじみ、僕を孤児

だと知りながら仲良くしてくれている

とても面倒見のいいヤツだ



ルーチェ「ごめん ごめん、バハドーラさんに

渡してもらいたいものがあって」


そう言うとルーチェは僕に大きく細長い

歪な包みを渡した



ルーチェ「それじゃあ、お稽古頑張ってね」


レイン「おう!これ師匠に渡しとく、ありがとう」



包みを持ったまま魔力を纏いなおすと

町を1周して、師匠が待っているらしい

ラマドール乾地に向かった

乾いた大地に腰掛けている師匠が見えた



レイン「お待たせしました、師匠!」



師匠「来たかレイン……」



レインはいつもと雰囲気が違う師匠に

少し戸惑った


師匠「ちょうどお前と会ったのは

こんな乾ききった土地じゃったな…」


そういえば、僕と師匠が出会ったのは丁度

こんな感じに乾ききったスラムだったなぁ


僕の親は幼い頃に病気で死んでしまった

それでも僕らはスラムの孤児どうし協力して

何とか生きていた。そんなある日、スラムの仲間と食べ物を盗みに出かけた。いつも上手くいっていたからか、しくじるとは誰も考えなかった。仲間の1人が盗みに気付かれ僕たちはみんなで必死に逃げた…その時、逃れるのに必死だった仲間の1人が、僕を追っ手の方に 突き飛ばした、捕まった僕は滅多打ちにされ、身体中

アザだらけでフラフラになりながらそれでも

僕はスラムに帰ろうとした。

ようやくの思いでスラムの入り口まで戻った

頃そこには、自分を突き飛ばした仲間とそれ

を聞いて楽しそうに笑う仲間達の姿があった

所詮孤児の世界に、仲間だとか馴れ合い

などは存在しない。皆は助け合って生きてた

んじゃなくて利用し合っていただけという事

を僕は幼くして嫌という程に思い知った。

そして僕はスラムの辺りでそのまま倒れ込む

と生きる事を諦めようとしていた…だけど、

そんな僕に声を変えてくれた人がいた。

それこそが、僕の尊敬する師匠であり育ての

親のバハドーラ ドックスその人だった。


レイン「居場所を失い絶望していた僕に道を

示してくれた今でも師匠には感謝しきれません…」



そう言うとレインは師匠の隣についた。



師匠「……なあレインよ、お前は自然の


声を聞いているか?」


「自然の声を聞いているか」これは師匠の口癖でどういう意味なのかはまだ僕には分からない

けどきっと大切な意味があるのだと今まで深く

考えずにいた


レイン「自然の声ですか、海の音とか土の擦れる音…あれは何かは落ち着く心地がして好きですよ」


それを聞いた師匠は腰を上げてこう言った。


師匠「ならば、今からお前の最終試験を

始める!その中で答えを見付けてみせろ」


レインは答えとは何か頭を悩ませつつ

師匠最後の試験に少し寂しさを覚えた



レイン「始まるんですね僕のあまづくり

への第一歩が…」




師匠「まぁそう早まるなレインよ、お前の

道が始まるかはこの試験次第じゃ」


師匠は少し笑ってそう言った


今までに学んだ事を思い浮かべて頭の中で

何度も復習した。


レイン「師匠、覚悟は出来ました!」


師匠「ならば見せてもらうとしようか…」


師匠は杖を手に取る


師匠「心中に描く定めし領域を大地に示せ

スケール!」



そう唱えると魔法で乾いた大地に

範囲のわかる目印が浮かび上がった


レイン「師匠、これは?」


師匠「レイン…これからお前にはこの印で

示した広大な乾いた大地を緑豊かな草原に

変えてもらう」


レインはその言葉に驚愕した。それもそのはず

指定された範囲の乾いた大地を草原に変えるには圧倒的に魔力量が足りないからだ


レイン「嘘でしょ……あの師しょ……」


レインは師匠に問うのをやめた


これは僕の最終試験………



自分で乗り越えないとこれから

前に進めなくなる気がする


そうするとレインは今までも愛用していた

鍛錬用の杖を手に取った。



レイン(魔力を頭から胴に、胴から手を通して

杖に集中させるんだ!範囲を頭にインプット

しろ…まずは大地から水が湧き出すイメージ)


今だっ!



レイン「恵の水よ、その清き力でで大地を

潤せ!シープクアフィールドッ!」


シュワーーーポッポッ(水が湧き出る音)



すると先程まで乾ききっていた大地が

潤い始めた


レイン「やった!」



レイン (あとは魔光陽をつくりだして

植物生成魔法の条件を満たさないと…)



魔法によっては決まった条件下や順番でしか

発動出来ないものが存在する。例に、植物生成魔法の場合は陽光と湿った土が発動最低条件となるのだ


レイン「燦々と燃え滾る魔光陽その陽光で

大地を照らせ!エナジーサン!」



パァーー (光が指す様子)



レイン「あとはこれで……え?……」


クラッ


気が付くとレインは惚気けていた


レイン (ま…まずい、大地を潤して陽光の条件

を満たしたのはいいモノの今の魔法で魔力量の

大半を使い果たしてしまった)


〔体力と魔力の消費限界〕

説明した通り魔力量は体力に直結している

のだがその中で一般の魔法使いが使用出来る

魔力量は全体の25%に満たないのだ


そして今のレインは既に15%もの魔力を

消費していた。何より、大地に植物を生やし

成長させる魔法は先程使った大地を潤す魔法

よりも上位の魔法すなわち消費魔力量もより

必要とする



レイン「うッ……」



師匠「どうした、お前はもうその窮地を脱する答えを知っているはずじゃ…」



レイン(……答え?答えってなんだ?答え、こたえ…ダメだ体力的ダメージで頭が回らない)



レインの頭が真っ白になりかけたその時、

頭の中にある言葉が浮かんだ。その言葉は

日常的に師匠が言っていた口癖だった……


  (自然の声を聞いているか) 


レイン(自然の声を聞く……もしかして!師匠の言う自然が僕の予想通りなら…)


するとレインはその場に濡れた大地に杖を立て

胡座をかいた。



師匠 (ほぉ、わしが思ったよりも

早く気付けたみたいじゃの…)



レインは天に向いて伸びる草になりきり大地

と一体化するように魔力を大地に馴染ませた



レイン (人が人の声を聞けるようにまた…

自然の声を聞くには自分が自然である必要が

あって師匠はそこから教わる物が何かを

教えたいって事だよね………………)


レインの頭の中は真っ白に染っていった

そしていつの間にかレインは眠っていた


師匠「レ…ン、レイ…よ、レイーン!」


レイン「わっ!師匠!すみませんッ!」


レインは師匠に呼ばれ跳ね起きるとそこには

息を飲む程に緑豊かな草原が広がっていた


レイン「師…匠…これって…」



師匠は優しい笑顔を浮かべた。



師匠「レイン、卒業おめでとう…お前はわしの最高の息子じゃ…」


レインは子供に返ったかのように

嬉し泣きながら師匠を抱きしめていた。


レイン「ありがとう……師匠、僕…絶対に最高のあまづくりになるから!」


師匠「こら、泣き過ぎじゃ…」


そう言いつつ師匠は涙を浮かべていた。


師匠「ほら、その包み開けてみ」


レイン「でもこの包は師匠のものじゃ……」


師匠「いいから、ほら」


レインは泣きながらも師匠から

受け取った包みをゆっくりと開けた。


レイン「!……これって…」


そこには、最上位の魔法使いしか手が届かない、レイン憧れのアマツカミの杖があった



師匠「お前なら、それに見合う最高の あまづくりになれる」


レインは溢れ出る嬉し涙を拭うと言った


レイン「師匠!僕はこの世界を知る修行の旅に出ることにします。そして、いつかこの杖に見合うあまづくりになってみせます!」



師匠「そうか…お前も良い顔する様になったなよし、今日はひとまず帰って飯にするぞ!」



レインの師匠バハドーラは寂しい気持ちを

グッと堪えて明るく振る舞った



レイン「はい!師匠!」



レイン(出発は3日後の朝方!明日は何か旅立ちの前の思い出作りとか…やっぱりしばらく会えなくなる師匠との時間大切だからな…)


レインは別れの悲しさを感じつつ、

新たな冒険へのワクワクを募らせていた

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