第10話 江ノ島

 マサの一連の体験から数日後、彼は友人と共に江ノ島へと出かけることにした。江ノ島は美しい海と夜景で知られる観光地で、日常のストレスから解放されるには最適な場所だった。彼は寿司屋で新鮮な海の幸を堪能し、その後、江ノ島の灯台からの夜景を楽しむ予定を立てた。


 夜になり、マサと友人たちは寿司屋で豪華なディナーを楽しんだ。寿司を食べながら、江ノ島の夜景が海から浮かび上がる様子を眺め、心からリラックスしていた。だが、その穏やかなひとときも、次第に奇妙な展開へと変わっていった。


 ディナーの後、友人の一人が「ビニールハウスを見に行こう」と提案した。ビニールハウスは江ノ島の近くにある農園で、夜でもライトアップされており、幻想的な雰囲気が漂っていた。興味津々でビニールハウスに向かった一行は、入り口で不気味な雰囲気を感じ取った。


 中に入ると、ビニールハウスの内部には、普段の農作物の代わりに奇妙な装飾が施されていた。そこに突然、ゾンビのような存在が現れた。最初は単なる装飾と思っていたが、これらの「ゾンビ」が実際に動き出し、一行は驚きと恐怖で冷や汗をかいた。どうやら、ビニールハウスは何らかのホラーイベントの会場にされていたようだ。


 さらに状況が悪化すると、見覚えのある顔が現れた。それは板尾で、昔からの友人であり、今はホラーイベントのプロデューサーとして活動していた。板尾は冗談交じりに「ようこそ、我がゾンビの楽園へ」と声をかけてきたが、マサとその友人たちは驚きと困惑を隠せなかった。


 イベントが進むにつれて、マゾのような性癖を持つ板尾が仕掛けた難解な謎や試練が次々と現れた。参加者はその謎を解きながら、ゾンビたちとの恐怖の対決に挑むことになり、マサと友人たちは必死にクリアを目指した。


 最終的には、すべての試練を乗り越えたマサたちは、板尾と共にビニールハウスの出口に辿り着いた。彼らは、ゾンビの恐怖から解放され、平穏無事に江ノ島を後にした。


 この奇妙で刺激的な夜の経験は、マサにとって忘れられない冒険となり、友人たちとともに語り草になる出来事となった。そして、彼の心には、江ノ島の美しい夜景と共に、ゾンビの恐怖が深く刻まれることとなった。


 マサがビニールハウスの出口に辿り着き、ホラーイベントの最中の緊張から解放されると、彼はふと疑問を抱いた。板尾に向かって歩み寄り、深呼吸してから尋ねた。


「板尾さん、あのゾンビ、ほんとうに本物だったのか?」


 マサはカフェでのゾンビ遭遇を思い出し怖くなった。


 板尾はにこやかに笑いながら、マサの質問に答えた。「安心してくれ。あれは演出の一部で、ゾンビたちは特殊なコスチュームとメイクで装飾されたスタッフたちさ。実際に危険はないんだ」


 マサは少し安心したものの、まだ心臓がバクバクしていた。「なるほど…それなら良かったけど、かなりリアルだったから驚いたよ」


 板尾は笑いながら、「そのために、できるだけリアルに演出してるんだ。怖がらせるために、いろんな工夫をしてるんだよ。でも、君たちが無事にクリアしてくれて嬉しいよ」


 マサとその友人たちは、ゾンビが本物でないと聞いて少しほっとしながらも、イベントのスリルと興奮を振り返りながら帰路に着いた。

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