第28話 前世で深夜美少女百合アニメを見ていた経験が、ゲーム世界転生で役立ちます。深夜美少女百合アニメはちゃんと見ましょう



   街を逃げ出す前に、囲まれてしまう。

 突破は、出来そうにない。


 「人違いなら説明してよ」

 「そうよ、何も私達はまだ貴女が本当に上林月恵だって知りもしないし」


 上林月恵?それが、私の前世での名前なのかしら。

 そう言われてみると、そうなのかしらとも思う。


 「私が上林月恵だと言われたら」

 「そんな気もしてきたわ」


 「何よそれ!」

 

 「こいつ、本当に上林月恵なんじゃないの!」


 次々と、私を囲んだ群衆が騒いでいる。


 「だとしてもダメージは与えるなよ」


 ?私を殺すんじゃないのかしら。

 

 「そうだよ」


 「ゲームの中で殺したって、転送されるだけだよ」


 あー、そういう事ね。

 この場にいる人達は、私が生きていて、現実世界からログインしてるだけだと思っているんだわ。


 「そうだそうだ」

 「そうよ、皆落ち着いてね」


 私を囲む群衆が、私に攻撃をしないように、宥めるように変わっていく。

 

 「お前ら、誰も手ぇ出すなよ」

 「殺しちまったら逃げられるってことだ」

 

 けれど、私はこのゲームに転生したわけで、もしこのゲームで殺されたらどうなるんでしょうか。

 まだこのゲームのルールもシステムもよくわかっていないけれど。

 この場の群衆がいうように、普通MMORPGでは、死んだプレイヤーはその場から別の場所に転送され復活される。

 普通にMMORPGを遊んでいるならばの話しだけれどね。

 深夜美少女百合アニメで、MMORPGの世界に転生・ログアウトできなくなったなんて類の場合、ゲームの中で死んだら、

転生者もログアウトできないプレイヤーも死んでしまうっていうのが、定番よね。

 前世で、そんな深夜アニメをみていた気がするわ。

 前世の私が、深夜の美少女百合アニメを好きで良かったわ。

 この場で死んで転送逃げ、なんて手段が通用しそうにない事が、前世での私の経験が今も記憶として残って私を助けてくれる。

 やっぱり、授業中眠ってでも、深夜の美少女百合アニメは見ておくべきなのよ。

 録画ではなく、リアルタイムで見ていた気がするわ。

 

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