第2話
2話
「おい、マップが更新されたぞ!確認しとけよな」
エンジンを動かしてから12日
積まれていた食料と水で何とか空腹と喉の乾きを凌ぎなんとか進めている
「はーい」
マップホログラムを起動する
「さっきと変わらない……」
真っ白で平坦なマップが映し出される
「岩とかが沢山あるよりはマシだけどこれじゃあ何処に行けば良いのか……」
「雪も振り始めたからね……そう言えばセレナ、寒くない?」
「んー?今は大丈夫かな!暖房が効いてて寒い事はないよ」
「良かった……にしてもお腹空いたね……」
「あぁ……確かにね」
「人前でイチャ付くなよ、目を背ける事も出来ないうちの気持ち考えたことあるか?ないだろ!」
「あぁ、ごめん忘れてた」
「泣いていいか?」
「良いんじゃない?」
「うーん、あっクソ!言いたい事忘れちまったじゃねぇか」
「AIなのに忘れる事あるんだねぇ?」
「おい!それはどう言う意味だよ」
「別にぃ?」
「なんかすっげぇ煽られてる気がする、」
「うちはそれでも元々人だったからな」
「へ?」
「ど、どういう事?」
「そのまんま、うちの原型は普通の魔界人やったんやで、」
「ごめんやっぱりわたしわからないよ……」
「説明が難しいけどなぁ……」
「まぁ言ってしまえばうちの意識、知能、演算能力は元となった奴を元にしてるって訳や、そいつの脳の構造とかをシステムに移したんやで」
「普通に通常通りのAI開発して使えばいい気がするけど……」
「おいおい、セレナよこれはロマンだぜ?」
「ロマンねぇ……良いよねーロマン」
「ユキは分かるか!まぁそもそもうちの設計図は古いからな、軍隊なんて持つ気も無かったやろうし、一応の装甲車のアシストシステムに多額の資金なんてつぎ込めないんだろう」
「実際この装甲車が作られた時のアヴァンギャルド社はまだ零細と言って良いからな」
「そんな昔の事も分かるのね……」
「うち自体古い存在だしその時代の情報は入ってるで」
ソレイユは自身を旧式と称しているが……
確かにそれの根本の技術は古い
しかしこう言った形の成功例は魔界の都市部でも珍しく先進的な物だ
実際昔似たような技術はあった
ネクロマンサーが遺体だけでなく
知識を活用しようと開発した物だ
しかし魔界人の意識を持ってくるのには
魔界の下層、冥府と敵対し、神魔殿の規範にも違反する事になる……
そもそも彼らの操る魂の残滓だけならともかく冥府から魂本体の様な大きく不安定な物を持ってくるのは難しい
魔界人ではなく
魂が明確に存在している人間のほぼ確実に場合は成功したらしいが……
「魔界人の魂をAIに……」
「技術の生成自体は中々苦労したみたいやけどな?まぁうちらの持つ魂は元々破片みたいなモノやからな、元となる意識を死を繰り返す内に小さくして増え続ける器に分配する」
「その循環を妨害する訳だからね……」
「でもそれならやっぱり普通にAI作った方が……」
「実はな、うちを生み出したネクロマンサーの団体が無償でやったんや」
「えぇ?」
やっぱりネクロマンサーか
原型は遊牧民のコミュニティだとされている
技術の探求者達……
今でも企業の科学者を勧誘し活動する組織が複数あるとされているが
その殆どが人間や動物に関する研究であり
魔界人に関する研究が成功したとは聞いた事がなかった
「そもそもどうしてそんな話知ってるの?」
「うちの目の前で技術提供に関する合意がされたから」
「えぇ……本人の前で……」
「色んな意味で鬼畜ね……」
ソレイユの色な意味で悲惨な過去に面食らう
「おい!マップを見ろ」
「ん?、どうしたの?」
ソレイユに言われマップを起動する
「この緑の点は一体……」
マップを見ると私達の周りに緑の点が徐々に現れ始め
気付けば包囲されている
「分からん!味方指定も敵指定もされてない新たな生命だ、猛獣かなんかじゃないのか?」
「ふむ……」
私は腕を組み一瞬考える
しかし……
グリュリュリュリュ
「今日はまだご飯食べなかったね……」
「もうレーションも少しだったからね……」
「ならこいつら殺して食料にでもしたらどうだ?」
「ゆ、雪も止み始めてるし良いかもね」
ソレイユの提案はとても良い……
しかし相手が何か分からない内は外に出る訳には……
「グルアァハァァハァァ」
外から猛獣の声が響き渡る
「セレナ……口からヨダレが……」
ユキの声で我を取り戻す
「と、取り敢えず外見てくるね!」
「おっけー、」
私は座席を押し倒し
後ろのトランクへと移動する
「よっこらしょ」
天井の蓋を開け
私は身を乗り出す
「グァァァアハッァァァァァ」
白くて大きなクマの様な生物がこちらを見て
立ち上がり咆哮をあげている
「何か居たー?」
「クマが居たよー」
「息の根さえ止めてくれれば私が捌くよー」
「はいはーい」
ユキの了承を得た私は杖をクマへと向ける
ごめん……
私は心の中で謝罪をし
次の瞬間私の杖から放たれた魔力はクマの頭をキレイに吹き飛ばし
頭を失ったクマはバタン!と倒れる
それを見た他のクマらは「キュゥン」と言う声を上げ逃げてゆく
「ふぅ……やったよ!」
「了解!」
車が止まるとユキが降りてくる
「それじゃあ雪止んでる間に捌いちゃおうか」
「そうだね!」
この後
クマが想像以上に大きく
処理した物だけでもトランクを6割占領したのは別のお話
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