第11話 始めてのロシア軍人のおつかい

 クリスが、おつかいに行くことになった。

 俺達家族にとって、これは決して大袈裟なことではなく下手をしたら、買い物し忘れた程度で済めばいいが、色んな騒動をやらかして事件を起こし警察沙汰になりかねないと。



 俺は、クリスがトラブルを持ってくるのだと思い不安でしょうがなかった。

 クリスと言う女は、度々そういう厄介事を呼び込むような星の元に生まれたような奴だ。

 俺は、クリスに一切そういうことを今までやらせたことはない。



 クリスが、傷付くからとか女の子の独り歩きが危ないとか、そんな最もらしい平凡でありふれた理由じゃなくて。

 クリスの、敵だと感じた連中はスカートに隠されている、太ももに装着しているホルスターにしまってある、銃を取り出してぶっぱなすからだ。

 近所の人に、通報されて良からぬ噂でも広まったら本当に大惨事になりかねない、下手をしたらニュースの記事にでっかく載せられ、俺ら家族はこの町に居られなくなる。



 俺は、クリスの突発的な言動と行動をする前に止めるしか他ない。

 とりあえず、電柱の後ろに身を隠して気付かれないように、跡を付けて見守ることしか出来ない。



 クリスが一旦止まり、なぜ歩くやめたのかと考えたがクリスの目の前に、二人の男が通れないように道を通せんぼして塞ぎ邪魔をして通れなくしていたようだ。

 どうせ、ナンパなんかだと思っていたら案の定その通りで、何もクリスの危険性のことを知らない男達は無謀にも、遊びに誘うがクリスは邪魔をするなと言って、先に進もうと無理矢理力付くで通りするも目の前に現れて通してくれなかったようだ。


「ねぇちゃ~ん、いいじゃねぇか~」


「俺達と、夜まで楽しく遊ぼうぜ~」


「ジャマ! ドケ!!」


「そんなこと言わずによ~、俺らと一緒に気持ち良くなろぜ~」


 男の一人が、クリスの肩を掴みながらそういうと、クリスは腕を手で弾き払いのけてそのまま、ホルスターから銃を取り出してこめかみに銃口を当てて、小声で何かを呟く。


「……あの世に送るぞ」


 クリスの言っていた内容は、全く聞こえなかったが日本語をいつもと違って流暢りゅうちょうに話したことは分かった。

 男の一人は、クリスの脅しが怖かったのか一目散に逃げ出す。


「おい!! 何処へ行くんだよ!」


「あいつ、やべえんだよ!! 逃げるぞ!」


「やべえって、何がだ!!」


「多分、裏の人間ってことだよ!!」


 男二人は、もう一人のモヒカン頭の奴の話を聞いて、察したのか跡を追うかのようにその場から消えていった。



 クリスの跡をその後もつけたが、今度は犬が現れて対峙する。


「ううう!! ワンワン!!」


 犬は、明らかに雑種で歯を剥き出してにしてクリスに威嚇をする。

 クリスは、横に移動してる犬と共に背中の方へと歩き回る。


「ヤルカ! コノクソイヌ!!」


 クリスが、大声を上げながら銃を取り出して手に持つと、犬はクリスの方へと一直線に突撃していく。


「ワンワン!! ううう!! ワンワン!!」


「コノヤロウ! イヌノクセ二、ニンゲンサマ二サカラウトハイイドキョウダ!!」


 犬は、クリスに噛みつこうと突進していきそれを交わすクリス。

 クリスは、その隙を見て銃を撃ち犬は横にジャンプしてそれを交わす。

 お互い、一歩も譲らない一匹の犬と人間の戦いは、見ていて何となく熱かった気がするが。

 俺は、冷静になりクリスにこんな下らない喧嘩をするなよ、しかも犬とと思ってしまった。



 クリスと犬は、昼から夕方までにらみ合いを続けて、漸く分かり会い犬は小屋に戻り。

 クリスは、買い物へ向かう。

 クリスが、度々家から居なくなって帰ってきて服が破けていたことがあったのは、こんな変なことをしていたからだと思うと、ため息が出て憂鬱になりそうなる。



 クリスは、今度はちゃんとメモしてあったサバを買いに、近所の商店街にある魚屋のカウンターの前に立っていた。


「へい!! お嬢ちゃん!! 何を買いにきたんだ?」


「オッチャン!! サバイッチョウ!!」


 魚のオッチャンは、店の中には入っていき袋を持っていきて、それをクリスに渡す。


「サバこれね! お金は200円で!」


「ニヒャクエンダナ!」


 クリスは、ポケットから小銭入れの中の二百円取り出してオッチャンに渡して帰っていく。

 俺は、心の重荷が無くなったみたいに安心した。

 クリスに、一つの買い物を頼むのも一苦労するからだ、本当はこんな尾行する真似はしたくないが仕方ないこと。



 翌日の朝、クリスは学校が休みと言うのに家から早く出て、血相を変えて何処かに走り去っていく。

 俺もその場所へと、着いていくが明らかにヤクザ事務所みたいなところのビルの部屋のドアを開けて入っていった。



 俺は、とりあえず外からドアのガラスごしに見てみたが、クリスは大人数のヤクザのスーツを着た男に囲まれて睨まれていた。


「おい!! ねぇちゃん!! 何処か、ここを知っとんのか!!」

 

「ソンナコトヨリ、ショウテンガイノオッチャンタチカラ。カネヲトルノヲヤメロ!!」


「ああああん!? 何を言ってるのか、分かっとんのか!! この! ガキが!!」


 俺は、久しぶりに怖すぎて全身が震えてきた、まさかクリスがこんなとんでもないことを起こすなんて。


「オッチャンハ、ワタシノタイセツナヒトダ! ソレヲ、キズツケルヤツラハゼッタイ二ユルサナイ!!」


「やろうってのか! なら、容赦しねぇぞ!! やっちまえ!! お前ら!!」


「「へい!!」」


 クリスは、大人数のヤクザ達から一斉に襲いかかられて、ビビるかと思ったがガトリングガンを取り出して、そのまま発泡して周りを破壊する。



 ヤクザは、本物の銃であったことに怖くなり腰が抜けてしまい、動けなくなる。

 クリスは、満足げに片方の口角を上げてどや顔を炸裂する。


「ドウダ!! オマエラ! ニドト、ショウテンガイノヒトタチ二テヲダスナヨ!!」


 俺は、クリスをこれ以上暴れさせないためクリスの真ん前に、手を広げて止める。


「ストップ!! お前いい加減にしろよ!! やりすぎだろ!!」


 俺は、携帯を取り出して警察へと連絡したらすぐにパトカーが、到着してヤクザどもはお縄になる。

 クリスが、持ってきたガトリングガンは何故かヤクザが所持していたことにされ、罪を逃れたがそれで良かったのかと思うと疑問に残る。



 次の日、俺は家で母親にその後どうなったのか尋ねた。


「母さん……クリスが、起こした事件どうなったの?」


「あ~あ! あれは、私のつてを使って潰しておいたから安心しなさい!」


 母親は、クリスが見せたようなどや顔をしていたが、明らかにレディースの時の知り合いで潰したと感じた。

 俺は、こんなとんでもないイカれた連中といるのだと、考えると不安の二文字しか浮かばなかった。

 

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