あなたと見る景色
有茶川みるく
第1話 自殺からの立ち直り
ある夜、西宮桃香は崖の上に立っていた。
「もうこんな人生やだな…」
桃香が飛び降りようとした時、走馬灯のように幼い記憶が蘇った。
9年前
桃香は今では名前も顔も忘れている男の子といた。
「ももちゃん!大人になっても僕達仲良しでいようね!」
「うん!…………」
あれからの記憶はもう無い。
あの後自分が何を言ったのかも覚えていない。
でも、何故か自殺をするのを止める力があった。
「今はどこにいるのかな…」
そう呟きながら自宅へ戻る。
あれから何時間経ったかは分からない。
でも暗かった空は今では明るい。
疲れている中よろめく足で自宅に到着した。
「桃香!!あんたどこ行ってたのよ!!」
私はその声に答えることも無く真っ直ぐ姉のいる所へと向かった。
「お姉ちゃん…」
「桃、おかえり。疲れたでしょ、一緒に休憩しよ、話聞いたげる。」
気が付いたら姉の懐で泣いていた。
そして姉はそんな私を優しい眼差しで見守っていた。
姉の名前は西宮菜祇咲(なぎさ)。独特な漢字だが、親戚一人一人が漢字を選び、その中からルーレットで決めたらしい。それもそれでどうかと思うが。でもおかげで祇園祭の小テストの時は得をしていると言う。それもなかなか無いが。
私とは2つ差が空いている高校一年生。
私の自殺を止めた男の子の事も知っている。一度私達の隣に引っ越してきたので兄と妹と5人でよく休日に遊んでいた。その中でも私はその男の子と同じ歳で気が合い学校終わりに遊んでいた。
しかし今思えばほんの少しの時間だったので幼かった私達は肝心な名前などを忘れてしまった。声も薄らとしか覚えていない。約10年が経ったからしょうがないと兄は言っていた。
兄は西宮碧綺(あおき)と言い近所ではイケメンや優しい等色々な意味で有名だ。西宮家の中では1番大きく私より3つ上。部活はめんどくさいからと帰宅部のまま。
妹は西宮澪奈(みおな)。私や姉、兄が溺愛しておりいつも誰が一緒にいるのか喧嘩になる。私より4つ下だ。今は4年生。
西宮家は全員顔面偏差値が高い。私含まないで。(みんな桃香もというが)
私が泣き止むまでお姉ちゃんはずっと待って優しく撫でてくれていた。
落ち着き2人で母や父のいる所へと行くと母の大説教が待っていた。本来なら私だけのはずがお姉ちゃんも一緒に説教を受けていた。時々2人で視線を交わしながら何とか乗り越えた。
「桃香ねーちゃん、お疲れ様。かーちゃんの説教疲れたでしょ。」
「うん。ちょー疲れた」
「でも家出した桃香が悪いんだし。しっかり反省しないと。」
「お兄ちゃんに言われなくても分かってるし」
「まあ、後は女同士恋バナでもしとけ、俺はゲームしてくるわ。せっかくの休みだしー」
「女同士?恋バナ?あんた言ってる事矛盾しとるっつーの」
「お前に言われたかねーな、姉なら姉らしく悩みを聞いとけよー菜祇」
「だーかーら!分かってるって!」
そんな感じで午前が終わった。
午後は普通にテレビを見たりお姉ちゃんと会話したり、特別に澪奈と一緒にいれたり。(一生いさせろっての)
そしてやはりお兄ちゃんの言った通り恋バナが開始した。そして会話が弾む事なく静かに終了した。両親以外好きな人とは何かすら分からないぐらい恋愛に興味が無いので学校の宿泊行事の夜になると1番早くに寝る。
翌日学校へ行くとお兄ちゃんのせいか私が家出をした事が学校全体に広まっていた。
友達には心配されたし親友の瓜田咲那恵(さなえ)には心配のあまり泣かれてしまった。
でもさすがの噂好きのお兄ちゃんも自殺をしようとした事は言わないでいてくれたようだ。
「桃香ー?悩みとかがあればいつでもぶつけていいからね?」
「うん。咲那いつもありがとー!でも私ほんとにその時の感情で動くから悩みとか無いのよねー、」
「なら良かったー」
桃香は普通の生活、友達と話す等がよく分からない。友達がいるから何?家族がいるからいいじゃん、そう考えている。
だからお悩み相談等よく理解できない。友達って信用するものなの?信頼してる人にだからこそ悩みを打ち明けれるんじゃ無いの?とも思っている。
家族には迷惑をかけるかもしれないが、桃香は普通他の人が友達とする事を菜祇咲や澪奈、碧綺としている。例えばタピオカを買って飲んだりといういわゆる買い食い。寄り道。
とにかく変わった子なのだ。
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